366:死体の意味
近況とか銃器資料アップしたりとか
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死体が埋まってる、か。それはまあ、ゲンは悪いかもな。でも逆にいえば現物があるわけじゃなし、実害はないのだ。屋敷が物件として叩き売られる理由にはならないと思うんだが。
「ミード亡き後、ウォーレが何をしたかは知らんが、なんやかんやで最近ハイベルン商会が再興された。会頭はウォーレの娘カイア」
ややこしい。そして、なかなか話がこの屋敷に繋がらない。
「商会のことは、まあ措いといて。その死体って、どこにあるか見当くらいはついてんの?」
「ついてたら処分してるさ」
「そらそうか」
実は吶喊の内部でも建物を潰して建て直そうという意見も出たのだそうな。予想通り、エイノさんとマケインの常識人組だ。ルイとティグの脳筋組が気にしない姿勢。
「コロンは?」
「気にならないわけじゃないけど、それよりも気になるのが、そんな噂が出た……というか、放置されている理由の方だな」
「ほう?」
コロンの話に、ミルリルさんが興味を持ったようだ。目が輝いている。
「ここは、立地も開墾も建物の配置も、どこか不自然な印象があるんだよね。商売を畳んで隠居するっていうのも、そこだけ見れば気にならないけど、ここまで大きな屋敷を構えて二十五年ほどで手放してるのは変だ。注ぎ込んだ金額を考えると、いささか不自然だ」
「意図があった、というのじゃな?」
「冒険者ならともかく、ミードは商人だ。成功したんなら、馬鹿でも無計画でもないはずだよ」
「ああ、それで」
エイノさんの言葉に、コロンが頷く。他の三人は首を傾げている。
「それとは、なんじゃ?」
「コロンから頼まれたんです。監視用の魔法陣を」
「監視?」
「うん。屋敷と敷地に出入りする者があれば、記録してもらえるようにね」
「結果は?」
俺が尋ねると、ハーフドワーフのイケメンは苦笑しながら肩を竦めた。
「ハズレだね。ぼくら以外の出入りはない」
「ふむ……話としては面白くなりそうだったんじゃがのう」
「そこでお前らにお出ましいただいたわけだ」
ティグがドヤ顔で胸を張る。
「俺たち?」
「……ティグ、おぬしギルドで噂でも流したか」
「おう。その分クラーケン討伐の報酬には色を付けてもらった」
ゴソリと、金貨か銀貨の入った袋が置かれる。
「噂って、お前」
「魔王が幽霊退治に来たってな」
ちょっと、ティグ⁉︎
「……それは、順序がおかしくないかのう?」
「あ、いや。あの、後でちゃんと説明しようかと思ったんだけどな、クラーケンの騒ぎで順番が前後してな、うん。……すまん」
ミルリルさんにひと睨みされただけで、屈強な虎獣人が震え上がる。
「まあまあ、ミルリル。ちょっと俺も興味は出てきたからさ」
「……面白そうなのは、わらわも否定せんがの」
ティグの読みでは、今夜には動きがあるはずだという。俺たちは屋敷に泊めてもらうことにして、その日はゆっくり料理やお菓子作りをして過ごした。
エイノさんお手製のお茶菓子は水飴で固めたミューズリーバーみたいなもので、素朴ながらとても美味しかった。冒険者の携行食が原型らしいが、元になった携行食というのは雑穀を焼き固めた乾パン的なものなのでほぼエイノさんのオリジナルだ。
「もう少し甘くしたいんですけど、甘味料は甘麦だけなので、このくらいが限界ですね」
「ああ、それなら良いものがありますよ」
サルズ名物の虫蜜を砂糖と一緒に渡して、お菓子作りの役に立ててもらう。俺もプリンを作り、好評だった。
肉たっぷり(だけど酒抜き)の晩餐を楽しんで、寝室に分かれた深夜過ぎ。
ティグの読み通り、動きがあった。




