347:森もないのに森林群狼
やっぱ今日も更新じゃ!
「……森林群狼?」
まだ見たことのない生き物だ。話では聞いたが、知ってるのは群れで人を襲う狼だということと、群れの長は魔獣化して知能が高く体躯も大きくなって、若い白雪狼くらいのサイズになるってことだけだ。
モフ、海賊砦で元気にやってるかな……。
「ヨシュア、ボーッとしておる場合ではないぞ。かなりの群れじゃ、しかも……」
「助けてくれぇーッ‼︎」
「商人かの、荷物を積んだ橇が襲われておる」
グリフォンの屋根に上がると、こちらに向かってくる馬橇が見えた。距離は四半哩、四百メートルを切るくらいか。少しでも軽くしようと荷物を捨てて逃げ切りに必死だが、二頭立ての馬橇が狼の脚に敵うわけがない。群れの狼はモフほどではないが、かなり大きい。AKMなら当たりどころによるが仕留められそう。問題は流れ弾だな。
「ミルリル」
「すまんが、“うーじ”は、まだ無理じゃ。狼には当たるかも知れんが、馬橇に近過ぎる。転移を頼めるかの?」
「いや、その前に少しだけ、新しい銃を試したい」
俺はウィンチェスターライフルを出して銃弾を込める。30−30ウィンチェスター弾を九発。
レバーを起こして薬室に装填すると、簡素なアイアンサイトで大まかに狙いを付ける。サイトそのものよりも、銃身の延長線を意識した。
まずは、馬橇から遠い個体。引き金を絞ると、思っていたよりはマイルドな反動。AKMよりはキツいが、耐えられなくはない。
「当たりじゃ」
良い銃だ。弾道は素直で、初速も威力も高い。被弾した狼は空中で跳ね飛ばされたように吹っ飛んで動かなくなった。
次は、こちらから見て重なった位置取りをしている端の二頭。息を少しだけ吐いて止め、引き金を絞る。
「当たりじゃ、二頭とも死んだの」
銅の被覆弾頭だけに、柔らかな標的だと抜ける。馬橇の前にいる狼は撃てないな。
後部で橇に飛び乗ろうとしていた三頭を次々に撃ち倒す。一発は外したが、狙い方がわかってきた。俺くらいの腕だと、レバーアクションは相性が良い。狼がこちらを警戒して馬橇から離れる。
「急げ、こっちじゃ!」
御者が向かってくる間に、再装填して群れの出方を見る。
「助かった! この礼は必ず……」
「話は後じゃ、あの乗り物のなかに入っておれ!」
ミルリルは周囲を警戒しながら、UZIのボルトを引く。商人らしきふたりがグリフォンの車内に収容されて、狼たちは苛立った様子でグルグルと周囲を走り回る。銃を向けると散開して距離を取るところからして、どうやら牽制に徹しているようだ。
「あいつらが待ってるのは、群れの長?」
「そうじゃ。気配はあるが、姿が見えん」
俺はAKMに持ち替え、獣が潜んでいそうな起伏を注視した。ミルリルに目を向けると、彼女は静かに頷く。セレクターレバーを一段落として安全装置を解除し、一瞬だけ躊躇する。フルオートでは初弾以降に当てる自信がない。
「任せよ。ここからは、わらわの出番じゃ」
自信に満ちた声。小高い雪山の陰から、灰色の巨体が姿を見せた。
ウソだろ。ミルリルさん、アレを拳銃弾で倒す気⁉︎




