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【完結&書籍化】スキル『市場』で異世界から繋がったのは地球のブラックマーケットでした  作者: 石和¥
7:からまる紐帯

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283/422

283:魔女からの便り

風邪でダウンしてた……

「とはいうものの……」

「そうね、ちょっと待ってて」

 ミルリルにケースマイアンの様子を聞いてもらおうと思ったが、よく考えたら通信機はホバークラフト(グリフォン)ごと収納してしまっていた。もう一度グリフォンを雪原に出すと、ミルリルはヒョイと操縦席に乗り込み、コンソールに置きっ放しだった通信機を取る。

「ミルリルじゃ、誰ぞ()るかの?」

“はい、ルヴィアです。妃陛下、ご無事ですか”

「無論じゃ。樹木質(ウッド)ゴーレムは仕留めたがの、魔導師どもは会敵前にどこぞへと散らばったようじゃ。ルヴィアはいま、どこに()るのじゃ?」

“ケースマイアン上空で警戒待機中です”

「……ん?」

 ケースマイアンから共和国西領(ここ)となると最低でも五百(ミレ)、八百キロとかあるはずだけど。こんなハンディ通信機の電波が届く距離じゃないだろ。ドローンでテレビ中継みたいなことしてたから、リンコがドローンの機能で転送してるのか。技術的な話はわからんが……まあ、いまはどうでもいいか。

「ルヴィアさん、そちらの状況は?」

“住民や街への被害はありません。鉱石質(メタル)粘土質(クレイ)とも全ゴーレムの排除を完了しました、が……”

 が? おい、何があったんだ。ルヴィアさんの口ごもる声を聞いて俺は不安になる。

「どうしたんですか?」

“リンコさんたちが開発した新兵器の威力が大き過ぎて、鉱石質(メタル)ゴーレムの部品が回収できないと困っています”

「……ああ、うん。わかった。いや、わからんけど。みんなが無事なら良いんだ」

「なんじゃ、新兵器というのは」

「知らん。きっと、またなんか訳のわからんもんを作ったんだろ。でもまあ、排除できたんなら……」

 いや、待てよ? ゴーレムを破壊したのはわかったけど。

「そちらに向かった魔導師たちは?」

“皇国領との国境近くで姿を消しました。有翼族とドローンの監視下で反応消失、その後も発見できません”

「俺たちも、そっちに向かった方が良いかな?」

“いえ、警戒監視も対応兵力も配置しておりますので、それには及びません。それより、リンコさんから――”

“はいはーい”

 ポンコツ聖女の能天気な声が割り込んできた。

“ヨシュアに魔女さんから伝言で、首都まで来て欲しいそうなんだけど”

「魔女? エクラさん? まさか、そっちにいるのか?」

“ううん、共和国の首都。ぼくが浮かべてた自律稼働の七号ちゃんが捕まっちゃって”

 意味がわからん。七号ちゃんて、あれか。

「もしかして、俺に伝言があるからって飛んでるドローンをひっ捕まえたんか?」

“そうだよ。上空千二百メートルだよ? いきなりカメラに顔がアップで映ってさ、信じられないよね⁉︎”

「あ、ああ、うん」

 何がどう信じられないのか、もう俺にもよくわからんのだが。

「まあ、やろうと思えばヨシュアにもできるからのう?」

“あー、あー、聞こえるかい!”

 デカい、声がデカい! 音声割れてるし、何これエクラさんの声か?

「聞こえます。けど、もう少し声を落としてください。ハウリングしてる……」

“アタシゃ魔道具は苦手なんだよ!”

「わかりましたから、声を落として」

 エルフの魔女とかいって“知の賢者”っぽい感じなのに……プライベートでは意外とビデオの予約録画ができないお年寄りみたいね。

“魔王、陛下? いま、なんぞおかしなことを考えなかったかい?”

「か、考えてないでしゅ。それで、ご、ご用件は」

“ヒエルマー・マーキスとは会ったかい。チンチクリンのチビっこい跳ねっ返りのエルフだよ”

 やっぱ知り合いかよ。弟子とかじゃないだろうな。

「……ええ、まあ。樹木質(ウッド)ゴーレムを倒すのに手を貸してもらいましたよ」

“やっぱり、アンタたちだったのかい。七騎が共和国に入ったとこまでは斥候が確認してるんだがね。見失った上に行方が分からなくなっちまって往生してたんだよ”

「それは失礼、襲ってきたもので止むを得ず」

“いいや、倒してくれたことは大変ありがたいんだよ。しかし今度はヒエルマーの小坊主が消えちまったのさ”

 俺はミルリルと顔を見合わせる。子供を見捨てたようで、微妙に気拙い。

「俺たちはいま西領の山岳部ですが、ここで別れて彼は西領府に向かったはずです」

“ケイオール? キルゲライから報告は入ってないねえ”

 魔導窟から派遣されたグループのリーダーかなんかか。子エルフによれば政治と築城のエキスパートみたいな話だったけど。

「敵の魔導師部隊が行方不明になっているのはご存知ですか。共和国に向かった六十名とケースマイアンに向かった六十名、いまのところ全員を見失っています」

“いいや。……ふん、なるほどね。ゴーレムは囮ってわけだ。でも、あの子坊主じゃ相手できるのはせいぜいが十てとこだね”

 おう、それでも魔導師を十人くらいなら相手できると思われてるのか、あの子エルフ。

 グリフォンの銃座に着いていたミルリルが屋根をノックし、不満そうな声で唸る。

「ヨシュア、前進じゃ」

 俺は通信を続けたままでホバークラフトを始動させる。フラットな路面を選んで西領府ケイオール方向に移動して小高い丘の稜線まで出ると、見下ろす平野の奥にいくつか煙が上がっているのが見えた。地平線の彼方に煙っていて地ベタの状況までは見えん。

「ミルリル、あれはケイオールか?」

「いや、さすがに西領府にしては近過ぎるのう。数はハッキリせんが、左手奥の森で魔力光が見えたのじゃ。あのちっこいのが襲撃を受けているのではないかの」

 俺はグリフォンを加速させる。森までの距離は五キロやそこらだ。襲われているのがヒエルマーだとしたら、俺たちと別れてすぐに会敵したことになる。

 あいつ、運が良いんだか悪いんだか。

「エクラさん、西領府と……そのキルゲライってひとと連絡は維持していますか」

“いや、定時連絡だけだね。どうしたんだい”

「念のため警戒を呼び掛けてください。ケイオールの西側で、ヒエルマーが敵の攻撃を受けているようです」

「まったく、世話の焼けるチビじゃ!」

 体格では子エルフとあんまり変わらないミルリルさんは、なんでか嬉しそうにそういってMAG汎用機関銃の薬室に弾薬を送り込んだ。

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