表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/422

2:孤立と目覚め

 ブンと風切り音を残して剣が振り抜かれたとき、俺は何が起きたか理解出来なかった。

 おそらく周りの全員がそうだろう。ポカンとした顔で見つめる王の前に、アホ面下げたままの俺が立っていたからだ。

 さっき殺されかけた――そして現在進行形で殺されようとしている――騎士との距離は10mほど。いまの俺からは、身体を泳がせ周囲をキョロキョロと見渡す甲冑姿の背中が見える。


 ――いつの間にか、飛んだ!?


 それが俺の持っていた“転移”の技能だと気付いたとき、ホッとすると同時に恐怖が襲ってきた。どうやって発動したのかわからなかったからだ。それがハッキリするまで、無事に逃げ切れるとは思えない。

 次なる逃げ場を探して身構えた俺の肩が、いきなり背後からガッシリとつかまれる。振り返るとゴリマッチョが俺を殴ろうとしていた。


「貴様! 大人しく投降しろ!」

「ふッざけんなボケぇ! 黙って殺される訳ねえだろうが! てめえもおんなじ被害者側じゃねえのかよ、ナニ他人の足引っ張ってんだ!?」

「一緒にすんな、能無しが!」


 必死にもがくが、馬鹿力に対抗できる筈もなく。思い切りぶん殴られて俺はまた騎士の前に転がる。クラクラする頭を振る間もなく、銀色の光が視界の隅に瞬いた。


「あぶッ!」


 ……ねえ、と言い終わるより早く転がった俺の髪を掠めて、剣先が床に突き刺さった。

 武器を奪い取る間などある筈もなく、舌打ちしながら騎士は再び剣を振り上げ、仰向けに這って逃れる俺に四方から剣が突き出される。

 ダメだ今度こそ死ぬ、転移……は無理かこのまま飛んでも姿勢が保てないし鑑定したところで見えるのは自分の死だけで後は……


 騎士たちの身体が泳ぐ。

 俺の身体に突き刺さる衝撃も痛みもなく、息を呑んだ騎士たちの顔が俺の頭上で固まる。


「……収納!」


 どうやら技能名を叫ぶ必要はなかったようだ。発動が発声と同時だとしたら、俺の身体は串刺しにされていた。

 なんとか間に合ったらしいが状況は依然として危機的なことに変わりはなく、俺は必死にうつ伏せになって部屋の外に向かい生涯最高速の匍匐前進を敢行する。


「待て!」


 脚をつかまれ、部屋の中央に引き摺り戻される。


「げうッ!?」


 殴られたのか蹴られたのか、腰を強打して息が詰まった。逃れるより早く、今度は爪先が腹に叩き込まれる。胃液を吐いて転げ回る俺を、騎士たちが寄ってたかって蹴りつけてきた。


 ――ん?


 ステイタス画面が視界の端で揺れる。生き延びるための記憶や方策を手当たり次第に探し回っているのだろう。いろんな光景や情報が脳裏にクルクル走馬灯のように光る。


名前:タケフヨシアキ

職種:**商人


 文字化けしたように潰れていた文字が、揺らいで、現れた。そこには、思ってもいなかった文字があったのだ。


職種:死の(・・)商人

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 未だ殺陣の真っ最中。 [一言] チート能力がなけりゃあ、誰だって死んじまってるよ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ