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shout at the devil 〜悪魔に叫べ〜  作者: 春野まつば
第1章
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リリス③


「妾と契約するんじゃ」


 それだけ。

 たったそれだけ言ってリリスはムフーと鼻息を荒げた。


「…悪魔にいきなり契約しろって言われて頷くやつがいると思うか?」


 悪魔と契約するってことにはそれなりのメリットデメリットがあるはずだ。

 普通に考えられるのは生贄、寿命の減少、肉体の一部の譲渡などが考えられるか…。

 突拍子も無い話なのに京は自分でも驚くほど冷静に、そして真剣にリリスの話を受け入れてしまっていた。


「そう怖い顔をするでない。妾とて人間と契約なんてしとうないわ」


 リリスはそう言った。

 したくないのにしなくてはならない状況だと推測できるが、


「サタンが死んだ」


リリスは簡単にその理由を話始めてしまった。


「サタンの名はお前ら人間でも知っておろう。悪魔の長じゃ。それが死んだ」


 どれほどの有名な悪魔が出てきても大して馴染みがなく、驚きはしないがリリスの言葉に疑問が生まれた。


「…悪魔も死ぬのか?」


「そりゃあ死ぬに決まっておろう。悪魔も不死ではない。…が、死体はあれど誰が殺したか、なにが目的か、どれもわかっておらんのが今の魔界の現状。実に混沌としておる」


「混沌か…察するにサタンが死に次期王の椅子がその原因ってとこか…」


 うむ、とリリスは大きく頷いた。


「魔界には力を持った悪魔なぞごろごろといる。その中にはサタンの首を狙っていた輩も数えられないぐらいおるじゃろう…が、誰も殺せなかった」


「サタン自身が強かったからか?」


「いや、それもあるがサタンが中央にいたことが一番バランスの取れた状態だったのだ。サタンを殺るとなれば己自身無傷では済まないだろう。手傷を追えばそこを攻められ自分が殺られるそんな状態が魔界では長いこと続いていたのじゃ」


「サタンが死んだと言うのはわかったよ。そんで…それが俺と契約になぜ結びつく? 悪魔同士の争いなんてお前らだけでやっとけばいいじゃねーか」


 少し挑発した態度で京はリリスに嘲るように笑いながら訪ねる。

 なんとなく見えた。話の筋が。

 次期王の選抜と契約。そしてリリスは契約なんてしたくないが、と言った。

 ならば、リリスはなんとしてでも人間の誰かと契約しなければならないはず、と京は考える。おそらくそれは空席の王座に関係している。

 実際、京のその考えはほぼ正解と言ってもいい。


「…むむむ…ムカつくやつじゃ…黙って話を聞かんか…」


 京はしばらく睨みつけた後にリリスは小さく咳払いをする。


「サタンの死の事実は瞬く間に魔界中に広がった。それを静観しておくわけにはいかず、集まったのが今、もっとも王に近いと言われているルシファー、ベルゼブブ、レヴィアタン、アスモデウスの四人。奴らが勝手に話し合い、出した答えが悪魔間の戦争。人間を使ってのな」


「ちょっと待ってくれ。人間の存在が介入する理由がわからない」


 次はリリスがふっと小馬鹿にするように笑った。


「悪魔の本分は人間を陥れ、神に背かせることじゃ。人間と悪魔は神と人間のように密接な関係にある」


「いや、そういうことじゃない。そもそも人間なんかを介入させないで悪魔同士で決着をつけたほうが話が早いじゃないか。そのルシファーやらアスモデウスやら四人で戦って王様を決めちまったほうがよくないか?」


「ふむ…一理あるが…ベルゼブブあたりが平等を記すように下級悪魔にもチャンスを与えたのじゃろう。やつはいけ好かないが、それなりに下への面倒見がいいやつじゃ」


「下級悪魔にもチャンスがある戦争なのか?」


 こくりとリリスは頷いた。


「今回の戦争は言わば代理戦争…悪魔一人と人間の契約者がペアになって行う戦いじゃ。武力は弱いが人間を使えば能力的に優位に立てる悪魔もいれば、武力は強いが人間と組めばそれが足枷になる悪魔もいる。今回は下級悪魔にとってはチャンスなんじゃ…そう妾のように力の弱い女でも勝てるチャンス…」


 リリスの目が力強く光った気がした。

 こんな見た目でも悪魔らしくそれなりに野望を持っているらしい。


「でもよ、例えばお前が王座を手に入れたとして…サタンの暗殺と同じようなことにはならないと言い切れるのか?」


「一応、この代理戦争で決まったこと、またその王に基本的には従うことになっている。もし、不満が過半数を越えれば再度代理戦争を行うことも決められている…が、完全に言い切ることはできないじゃろうな」


「そうまでしてなりたいものか? 王様…お前の場合は女王か。女王なんてめんどくさいだけだろ」


「そうかもしれんな…。だが、妾とて夢を見ないわけではないぞ?」


 何かを企む顔というよりは遠足を楽しみにしている子供のような顔をする。


「よし、話は終わった! ユダ! 妾と契約じゃ!」


「いや、しない」


「な、なぜじゃ! ここまで話を聞いておいて! 謀ったのか!」


「あぁ、悪魔たちの世界が今どんなことになってるかはよくわかったよ。でも、お前と契約してもメリットってないよな?」


「あ、ある!」


「へーあるんだ。あともう一個。俺となんでそんなに契約したがるんだ? 他当たれよ。そこらへんのロリコンとかよ」

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