作戦会議
「ぱーるあいすらてを頼む!!」
「バカ! 注文するのはあっちだ」
市内、京たちの住む街から電車で二駅。
閑散とした住宅街からたったそれだけの距離で都内までとは行かないが、それなりに栄えた街に着く。
先日のリリスの所望通り、パールアイスラテが飲める喫茶店に入った京とリリス、マリアとインキュバスの四人だったが、あまりに期待するばかりかリリスは店内に入るなりに大声を張り上げた。
軽く頭をはたく京となぬ?っと驚いたような顔を見せるリリスに店内の注目は集まり、客ばかりか店員までまるで微笑ましい兄妹を見るかのように優しい笑いが漏れ出る。
「かわいい〜リリスちゃんほし〜よぉ〜」
「さ、触るな!」
目をハートにするマリアにそれを嫌がるリリス。
マリアのお下がり、フリフリの子供服に身を包んだリリスは警戒するまたは怯えた小動物のように身を縮め、マリアの手を振り払った。
そして傍らにはまるで諸外国の皇太子、貴族のような出で立ちをした美青年が柔和に微笑んでおり、そのルックスレベルの高さから店内から様々な目で見られ、少々ざわついた中、なるべく目立ちたくもなくそれなりに自分のルックスに劣等感も感じながら、京は手早く注文を済ませて店の端にある四人がけテーブルに腰を落ち着かせた。
しばらくカフェなんて来ていなかったのもあるが、それでもこの全国チェーンというわけでもなく、地域密着型の、何かしら有名店からパクったようなカフェは店内に暖炉があったり、骨董品が飾ってあったり、終いには中世ヨーロッパの鎧のようなものがあったりとまとまりがなく、あぁ田舎っぽいと感心してしまうような内観に京は苦笑を浮かべてコーヒーに口をつけた。
「おぉ! これが実物のぱーるあいすらてじゃな! 中々、このつぶつぶがカエルの卵っぽくてキモいのぅ〜」
「リリスちゃん、あたしのホワイトモカも美味しいから後で交換しようねー」
「イヤじゃ。このぱーるあいすらては妾のぱーるあいすらてじゃ」
「うぅ…」
邪まな企みの含まれた言葉を即答で切られ、がっくりとうなだれながら寂しそうな声を上げるマリア。
「…あのな。とりあえず、今日こうして四人で集まったわけだが…」
ふぅ、と小さく息を吐いた後、強引に切り込んだ京はカバンから暑い紙の束を机の上に置いた。
「これから戦うに当たっての…まぁ…作戦会議だな」
「作戦会議? 敵の正体もわからない状況でどう対策を練るつもりだ湯田京」
あの覗き事件の共闘、そして裏切りから益々、インキュバスからの評価は落ちたらしく妙に刺々しい問いが返ってくる。
「あー…なんつーかよ…。前、リリスに聞いたんだ。悪魔が寄り付く奴はそれなりに悪の心を持ってる人間だってな」
「な、なによ! あたし悪の心なんて持ってないわよ!?」
「お前は幼女を見る目が悪意そのものだ…」
「な、なによ! かわいいものをかわいいって言ってなにが悪いのよ!!」
「そうだぞウジ虫が! マリア様をバカにするな!! 下等な人間の男の分際で!!」
対面に座る二人が揃って机を叩き、物凄い剣幕で睨みつけてくるが、京は何事もなかったように話を進める。
「とりあえずだな、ここ最近から古いものまでこの伊邪野市またはこの街に関連した犯罪や事件、その加害者や被害者の記事をざっと印刷して来た」
京の広げた紙の束、それぞれに当時の新聞記事やネットニュースなどがプリントされている。
小さな事故から猟奇的な殺人まで幅広く調べられている。
「この束…全部よね? …物騒な街ね伊邪野市も…」
若干引いた様子でマリアは何枚かの紙を手に取りペラペラとめくる。
「犯罪関連なら加害者から被害者の復讐心…悪の心っつーのを何で判断しているのかはわからないが、一番根強いものはこういった事件事故関係じゃねーかなってな」
「こんなの調べてる暇あったら宿題しなさいよ。昨日だって見せてやったんだから」
「バカ。宿題はやってなくてもせいぜい怒られる程度だがこれは自分の命に関わるだろ」
「まぁ、確かに湯田京の言う通り。情報は極めて有効な武器となり盾となる。警戒すべき人物だけでもあたりをつけておけば、不意打ちで間抜けに脱落なんてことはないだろうな」
意外にも机に広げられた記事の数々に目を通しながら、インキュバスは京の考えを否定することはしなかった。
「あとだな、まぁ、四人で集まったのにはもう一つ理由があってよ、お前ら悪魔たちが知ってる限りの悪魔の情報と能力をみんなで共有しときたいと思ってよ」
「悪魔の情報と能力か…ボクは下級悪魔だからな上級悪魔なんてあったことない奴もいるし、ましてや能力など相手も隠しているものを知っているとなれば、ボクらみたいな下級悪魔にとってはそれは死を意味する……まぁ、魔界のトップに立つものたちぐらいならば能力までとはいかないがわかることもある」




