第6話赤髪の少女
冒険者ギルド。
そこは冒険者達が受ける依頼が揃えられている冒険者の仕事場。そこに1人の少年と少女がいた。
少女が言う。
「ねぇ、久しぶりにいいでしょ?」
それに少年が応える。
「いや、ここは人前だから」
少女は目を潤ませる。
「人前で見られた方が、あんたは興奮するし、ステータスも上がるでしょ。ねぇ、ダメ?」
「⋯⋯⋯⋯」
少年は少女から目をそらす。潤んだ目には弱いようだ。
少女はそれを無言の肯定と察し、早速準備に取り掛かる。
ゴクッ!
そのやりとりを見ている冒険者も受付嬢も生唾を飲む。今さっき登録した新人の冒険者は何が始まるかサッパリ分からず、首を傾げていた。
そして数分後⋯⋯。
「アー! 良い。凄くいい!」
その冒険者ギルドから少年の叫び声が聞こえる。
そう、少年と少女はSMプレイでお楽しみ中なのである。
これがウィヌとサナの日課なのである。
「うーん、なんだかなー」
先程SMプレイを楽しんでいた少年のウィヌが唐突に呟く。
「どうしたの?」
それにウィヌの隣にいる同じくSMプレイを楽しんでいた少女であるサナが反応した。
「ヴァンパイアと戦った後、ドMスキルでのステータスの上がり幅が低くなっているように感じるんだ」
ウィヌが最近感じている事だ。ヴァンパイア戦では究極の緊張状態と命を持っていかれるような重い一撃で嘗てないほどステータスが上昇したのだが⋯⋯。
「今回はどれだけ上がったの?」
「今回は最高の上がり幅が体力で5。他は1か2程の上昇だ」
「下がってるの?」
ウィヌが悲しげな表情を見せる。
「ああ、ヴァンパイアとの戦いの前の時はステータス全体で15前後くらいの伸びだったが最近は12前後だ」
「まあ、そんなに変わらないからいいじゃない」
サナがウィヌを慰める。確かにそうであるが、原因がハッキリと分からなければ、そのうちステータスが全く上がらなくなるかもと危惧するウィヌであった。
因みに今のウィヌのステータスはこれ
名前 ウィヌ
種族 人間
レベル21
ステータス
体力 1672
攻撃 1262
防御 1202
速度 1349
魔力 1207
魔法適性
雷、風、水、土
スキル
ドM
ドMになって攻撃されると快感を得てしまう。精神攻撃にも適用される。攻撃されればされるほどステータスの基本値が上昇し、Mになっていく。新たなスキルや魔法適性も現れる事がある。
ヴァンパイアとの戦いでは全項目のステータスが100前後上昇し、魔法適性にも新たに土が付け加えられている。
レベル21でのステータスは各項目900程度である。1番低い防御も1202と本来異常な値だ。
「あんたは贅沢過ぎるのよ。少しは楽せずに、精進しなさいって事かもしれないわよ」
サナがニヤケながらそう言った。
「むっ⋯⋯それってどうい」
「失礼ですわ!」
ウィヌがサナに反論しようとした所で唐突に少女の声が響いた。ギルド受付の方からだ。
周りが急にざわつき始めた。
ウィヌとサナが様子を見に行くとそこには1人の少女がいた。
その少女はウィヌやサナより少し幼い感じの容姿である。赤色の髪で髪型はツインテールだ。目つきは少し鋭いが、顔は整っている。その立ち振る舞いは堂々としており、まるでどこかのお嬢様のようだ。
残念なのは見事に山がなく水平線のようなある部分くらいだなとウィヌは心の中で思ってしまった。
「そこの貴方。何故か今凄く殴りたくなりました。申し訳ございません」
赤色の髪の少女はウィヌに人差し指を向けた後、頭を下げた。
ウィヌは冷や汗ダラダラだ。なんて鋭い勘なんだろうと彼は内心で思っているのだった。
「ところで何があったの?」
サナが対応していた受付嬢に聞く。
「この方がギルドマスターのジュークさんを出せといきなり言ってきまして⋯⋯お断りしたらこのような事に」
「出せばいいのよ! 私は貴族セリール家の次女ユナ=フォン=セリールです!」
「ですから冒険者カードを見せていただかないと⋯⋯今すぐは無理です」
「無くしたのよぉー」
ウィヌとサナは顔を見合わせる。
なんだかめんどくさい奴が現れたなと思うウィヌとサナだった。
こんにちは、トニーひろしです。
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