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第5話剣聖クレア=フォン=リーズベルト<2>






「何故私が剣聖だと分かったのですか?」


 クレアがニヤリと笑う。


「いやいや、貴方は結構有名ですよ。漆黒の剣を持った銀髪の幼女。容姿で分かります」

「幼女⋯⋯?」


 クレアの目つきが一瞬鋭くなった。


「いやー、たまたまノーム町を観光してたんです」

「ほう――観光ねえ?」


 いやらしい笑みを浮かべたヴァンパイアが食いつく。


「戦いの町にはロクな観光名所なんて記憶にないが」

「何言ってるんですか! あるじゃないですか。西の森っていうとっておきの観光名所が」


 そう言って天真爛漫な笑顔を見せる。しかし、目の奥には殺意の光が見えていた。

 こいつはヤバイとヴァンパイアは直感した。


「なるほど、観光と言っても⋯⋯戦闘旅行ですか」

「うんうん、その通りです。もう我慢できません。思いっきり踊りましょう」

「魔族を前にしてその言葉、狂ってますね」

「あははー、よく言われます」


 それはヴァンパイアが聞いた最期の言葉だった。

 ドサッ!

 漆黒の剣が煌いた後、ヴァンパイアの首は宙を舞い、地面に落ちたのだ。

 殺気のこもった冷たい声音でクレアは一言。


「私、幼女と言われるのが1番嫌いなんです」




 ウィヌは狭い部屋で目を覚ました。古臭い部屋の匂いと独特な形をした照明は見慣れた病室のそれだった。


「生きているのか?」


 ウィヌは手を開いたり閉じたりを繰り返し、呆然と自身が映った鏡を見ていた。

 ガラッ!

 扉が開き、ウィヌはドアの方を見る。そこにはサナが立っていて、彼女の目は少し赤くなっていた。

 起きてるウィヌを見て、サナは涙を零した。


「なんで?」

「?」

「なんで私に依頼の事言ってくれなかったのよ! そんなに私は足手まとい?」


 いきなりの大声でウィヌは驚いた。サナは途端に嗚咽し出す。


「なんの相談もなく魔族がらみの依頼を受けて⋯⋯もし、もし死んだらどうするつもりだったの! 家族も故郷も失って、アンタまで失ったら私は⋯⋯私は⋯⋯!」


 それ以上は言葉が続かなかった。サナはウィヌの胸に飛びこんで、恥もプライドも捨てて大声で泣く。


「⋯⋯ごめん」

「ごめんじゃないわよ!」


 ウィヌはサナの頭を自分の胸の方へ持って行き、頭を撫でながら優しい口調で謝り続けた。


 結局サナはそのまま寝てしまった。




 剣聖クレアはすぐにウィヌに応急処置を施し、ノーム町の病院に置いてきた。

 そして冒険者ギルドには事情を説明し、少しばかり礼金を受け取って、西の森の奥深くへ入って行った。

 西の森の奥深くには森の主と言われる魔物が、住んでいると言われているからだ。森の主は魔族より戦闘力が高く、魔族でも手が出せないと戦闘力は申し分ない。

 クレアは自分と同レベルの相手と戦いたかったのだ。そう、ノーム町を訪れた戦闘旅行の戦闘相手は、ヴァンパイアではなく、森の主だったのだ。

 西の森は魔界との境界線近くであるため深く行き過ぎると危険だが、魔族を倒せるクレアには大して危険ではない。魔族は群れる事を好まず、圧倒的な戦闘力のせいで集団行動をする必要がないからだ。


「しかし、あのウィヌという少年⋯⋯もしかしたら大物になるかもしれませんね」


 クレアは独りごちる。ウィヌのステータスやスキルを見たのではない。ただ、クレアの第6感がそう告げていたのだ。


「ふっ、まあ、大物になったらいずれ会えますか。その時まで楽しみに待ちましょう」


 剣聖クレア=フォン=リーズベルトは幼女と呼ばれるのが1番嫌いで⋯⋯こよなく戦闘を愛する戦闘狂あった。





















こんにちは、トニーひろしです。

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