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第2話ギルマスからの依頼







 ウィヌがサナと10分ほど話していると周りの冒険者達が騒がしくなって来た。ウィヌは周りを見渡すと白髪黒目のダンディなおっさんがこっちに歩いてきていたのだ。年はおそらく40代。腰には大剣をぶらさげて、髪型はいつもオールバックだ。


「何の用ですか? ギルマス」


 ウィヌがそう言う。そう、彼こそがここのギルドマスターのジュークだ。

 ギルドマスターとはギルドを取り仕切っている代表だ。ギルドはこの世界では数多く存在し、ギルドマスターもギルドの数だけ存在している。


「少しお前に話しがあってきたのだ、ウィヌ」

「何ですか?」

「取り敢えず、マスタールームに来い。今すぐだ」


 そう言ってジュークは2階にあるマスタールームに入って行った。何かあったのだろうか?

 冒険者達も何事かとザワザワし出す。ギルドマスター直々の呼び出しはあまりないから皆も混乱しているようだ。


「何かしたの、ウィヌ?」

「いや、何もしてないと思うけど⋯⋯」


 サナも不安そうな顔を浮かべている。外もいつの間にか灰色の雲に覆われどんよりしていてウィヌを不安にさせた。


「取り敢えず、マスタールームに行って見るよ。」


 そう言ってマスタールームに向かうのだった。




「失礼します」

「どうぞ」


 マスタールームではギルドマスターが椅子に座ってくつろいでいた。堂々と肘掛に腕を置く姿は貫禄が出ていた。ウィヌはその姿を見て、何故か身震いした。


「何故呼ばれたか分かっているかね?」

「いえ、全く」


 ジュークの言葉に対してウィヌは即答した。


「そうか⋯⋯実はこの周辺で魔族らしき者が現れたそうなのだよ」

「それは本当ですか?」


 この場に冷たい空気が流れる。ウィヌの魔族に対する復讐心が呼び起こされたようだ。


「わからない。ただ、鋭い牙を持った人型の魔物がいたと他の冒険者達から報告があった」


 ギルドマスターはフッーと一息入れてはっきりと言う。


「それでだ、君には仲間と西の森に魔族の有無を調べに行って欲しい」

「討伐ではないのですか?」

「それが無理なのはお前が一番分かっているはずだろう。ユルビ村の生き残り君」


 ユルビ村。そこは元々ノーム町の隣町でウィヌの故郷であった。しかし、ウィヌが13歳の時、魔族によって滅ぼされた都市であった。今は魔界、もう魔界の一部である。

 ウィヌに忌まわしき過去が蘇る。

 因みにサナも生き残りである。


「何故俺なんですか? 俺より優れた冒険者もいるはずですよね。しかも、俺が魔族を憎んでいる事はあなたも知っているはずですよね。魔族を、見つけたら襲いかかるかもしれませんよ」


 ウィヌはジュークに目を細めて言う。その顔はいつもの穏やかなウィヌの顔とはかけ離れたものだった。

 その様子を見て、ジュークはフッと笑う。


「それはない。お前は魔族の恐ろしさをよく知っている。私も魔族と相対したことはあるが、ハッキリ言って生命体としての格が違う。魔族を見たことのない冒険者ではハッキリ言って不安なのだ。たとえお前より優れていてもな。しかもお前は風属性の魔法を使える。探索に有利だ」


 確かにジュークの言う通りだと同意するウィヌだった。ウィヌも言ってみただけで、本当に襲撃するつもりはないのだ。


「そうですか⋯⋯依頼金は?」


 そう言うと、ジュークは静かに言う。外に情報を漏らさないための配慮だろう。


「金貨1枚だ」

「!?」


 すごい大金じゃないかと驚くウィヌだった。

 因みにお金の価値はこんな感じだ。




石貨=1円

大石貨=10円

鉄貨=100円

大鉄貨=1,000円

銅貨=10,000円

銀貨=100,000円

金貨=1,000,000円

白金貨=10,000,000円




 つまりこの報酬は日本円で1,000,000円ということになる。

 まあ、このくらいは当然かもしれないと感じるウィヌだった。魔族は数は人間にかなり劣っているが、戦闘力は圧倒的だ。鉢合わせた瞬間死ぬ可能性もある。そのくらい危険で重要な依頼なのだ。

 少し考えた後、ウィヌは返答した。


「分かりました。その依頼受けます」

「君の相棒には聞かなくてもいいのかね?」

「サナは⋯⋯置いて行きます。有無の確認だけならサナはいない方がいいですし、こんな危険な依頼を引き受けさせたくない。」


 ジュークは静かに目をつぶって首を縦にふる。了承したのだろう。

 ウィヌの方も少し気になった事があったようだ。迷わず質問する。


「見つけるのはいいとして、討伐するのは誰なんだ? 町に攻めてこられたらひとたまりもないぞ」

「それなら大丈夫だ。すでにトーム国王にこの事は報告している。聖騎士が派遣されるそうだ。」

「そうですか、分かりました。」


 トーム王国。ウィヌが住んでいる国で広大な領地を有する大国である。

 そして聖騎士とは魔族と戦うために鍛えられたトーム王国の精鋭部隊だ。一人一人の戦闘力が高く、結果も残している。ウィヌは安心した。


「では今から言って来ます」

「頼んだ」

「失礼しました」


 そう言ってマスタールームからウィヌは出た。もうウィヌの顔には微塵も余裕などなかった。



















 この作品の初回は3話同時投稿となっております。

 そして始めの頃は1日1回投稿予定です。

 よろしくお願いします!

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