第一章 6 『魔法って本当に便利だ1』
「はぁ.....」
7人の男がいる部屋で1人の男がため息をつく。その男の顔は妙に疲れており、ベットに横たわっている。
今日その男は、幼い頃から育った村を離れ、徴兵された場所で危うく死ぬところだった。
そう、この男の名はロエルである。
現在、ロエルはこの部屋の中で自由の身である。
つい先程まで、ロエルはカインと話していたのだが、カインは用を足しに行ってしまった。カインと話す以外することが特に見つからなかったので、今この状況だ。
「あーーー暇だな」
この部屋の作りはとてもシンプルだ。家具などもシンプルで、ベットは2段ベットだ。勿論、ロエルの暇を無くせるとっても便利な道具などない。
そんな中で、ロエルはハンカチを丸めて、上に投げて遊んでいた。このハンカチを投げている時のロエルの心は無だ。無意識でこの遊びなるものを行っている。
投げて、キャッチすると、いうとても単純な遊びだ。これを何回か繰り返した時だった。ハンカチが空中で丸から丸になる前の形に戻り、ヒラヒラとベットの下に落ちていった。
「あ.....やらかした」
下にいる男達は皆、知らない者ばかりだ。拾ってくれるとは思はないので、ロエルは自分で取りに行くことを決めた。
ロエルが降りている梯子は貧祖な作りで、ロエルが足場を変える度にミィシミィシという音が聞こえる。
そこでジャンプでもすれば、すぐに梯子が壊れそうなぐらいだ。それでもこの梯子を使わなければならない。
「この梯子壊れそうだな...」
梯子を降りるのが少し慎重になったロエルは、梯子を降りると真っ先にハンカチの方に向かった。
ハンカチはベットの角を曲がった先にあるはずだ。ハンカチを素早く回収し、自分のベットに早く戻りたいロエルの足は少し早足になる。
ロエルは角を曲がった。そこにはハンカチではなく、知らない男が立っていた。
「お、これお前のか?」
その男の手にはロエルのハンカチが握られていた。男の外見は悪そうな人には見えない。ロエルよりもその男は身長が20cmぐらいでかい。体も筋肉質でザ・大男という感じだ。
「ああ、俺のだ。ありがとな」
礼を言うとロエルはすぐさま自分のベットへと足を動かす。あの大男とはあまり気が合わない気がしたからだ。
「お、おい!待てよ。俺達と話さないか?」
大男は自分が、先程まで話していた所を指さす。そこには1人の男がいた。その男はロエルを眺めている。
「え、別にいいけど、俺とお前って今知り合ったよな?」
あまりにも大男が馴れ馴れしいので、ロエルはつい質問してしまった。大男はしばらく黙り込んだ。
次の瞬間、大男は大きな笑い声をあげ、ロエルの肩を触ってきた。
「アハハハッハッハハー!!何言ってるんだよ!!あるに決まってるだろ?キツイ冗談だぜ!」
ロエルの記憶にこんな大男の記憶など皆無だった。会ったことも喋ったことも今初めてなはずだ。
なのに、この大男は何を言っているのか。
「ごめん.....質問したのに悪いんだが、俺お前のこと全く知らないわ」
ロエルが大男に頭を下げると大男は少し難しい顔をしていた。大男がロエルの肩から手を離すとロエルの目の前で合掌をしていた。
その異様な光景を見るや否や大男の話し相手が声を張り上げた。
「お、おい!シペラス!やめろ!」
大男の話し相手はベットから立ち上がり、魔法を唱える。その魔法陣の色は緑色で、そこまで難しくない魔法だ。
話し相手の魔法陣の周りが青く輝いている。魔法の伝承を終え、いつでも魔法を使えるよと、いう合図だ。
「ガードフェンス!」
ガードフェンスとは防御魔法の1種だ。守る相手を決めることができる便利な魔法で、守る範囲も決めることができる。
勿論、話し相手が守る相手はロエルだ。
「おりゃゃゃゃや!!!」
突如、大男は手を振り上げロエルを襲ってきた。大男の手は銀色に変色しており、鉄みたいな色だ。
大男の手とガードフェンスが当たり、ギィーン!という音が部屋の中に響いた。ロエルの周りを覆っていた黄緑色のガードフェンスは弾け飛びキラキラと光りながら消えていった。
「痛ってぇぇぇぇえええ!」
3人の男が口を揃って「痛ってぇぇぇぇえええ!」という言葉を放った。ガードフェンスにより守られたロエルは床に倒れ込み、大男は手を抑えている。
魔法を使った本人すらも何故か痛がっている。
「っておい.....この魔法は使っちゃ駄目だろ........」
頭を抑えながらロエルが魔法を使った奴に言った。