第一章 2 『大雑把過ぎる作戦?』
馬車に揺られる若者達。皆、下を向き人生の終わりのような顔をしている。
馬車の中は大人十人ぐらいがギリギリ入れる大きさで、青年達は両端の長い椅子に座っている。
馬車は木製で決して豪華ではない。
これは、現在の王国経済状況わかる。
王が乗る馬車などには、お金をかけれるものの村などに行くために乗る馬車にはあまりお金をかけていられないということだ。
王国では今まさに経済難なのである。
エルン村では比較的に裕福な生活が出来ているものの酷いところではご飯が全く食べれないという状況だ。
この状況を打開するため王国は比較的裕福な村の税収の割合を上げ、貧困の村に税の一部をあげるという制作をとったが、裕福な村からの不満が高まり結局失敗に終わった。
王国は元々周辺の国よりもお金を多く持っていた国だった。しかし、近年の温暖化と雨があまり降らないというタブルパンチを食らい作物が取れなくなり経済状況が悪化した。
だが、徴兵された村人達は比較的に待遇される。中には初めて満腹という体験をする者もいるだろう。
荒野を走る馬車の先頭の馬車がある。
この馬車だけは他の木製の馬車と比べてとても豪華だ。赤色と金色を主に使った豪華な作りだ。
その中に乗ってるのは王国戦士長であるウルベルトとその家来だ。
「村人たーちはとーても良心てーきだった」
ところどころ言葉が伸びている男が喋り出す。
「ええ、そうだったわね」
ショートヘアの女が喋る。
「ああ、そうだったな、しかし大変なのはここからだぞ、マルセインに着いてからもやらなきゃいけない仕事がたくさんあるからな」
ウルズベルトが喋る。
マルセイン────王国で1番帝国に近い都市であり、王国では人口が2番目に多い都市である。
マジックアイテムの生産を得意としている。
「はい、わかっております。ウルズベルト戦士長
私はマルセインに着いたら例の“作戦”を実行すればいいのですね?」
「ああ、そうだ。その“作戦”の方はよろしく頼む」
「戦士長、俺はあの“作戦”をおこなーえばいーいのでーすね?」
ウルズベルト戸惑った表情をする。
「·······俺はお前に命令なんか出していないはずだが?」
「また·····あることないこと言ってるし······」
ショートヘアの女が呆れた顔をした。
「え····俺はまーた間違えたのか今度は絶対にあーてると思ったーのに········なぜだ?」
頭を抱える男。間違えた理由をショートヘアの女に聞いている。
「知らないわよ!あなたが間違えたんでしょ!
もうしっかりしてよ。あなたも一様幹部なんだから」
「俺はもーう駄目だ」
頭を抱える男。それを無視し2人は話を続ける。
「それにしても帝国はどんな手を使ってくるのでしょうか?」
「どうだろうな、ただ厄介なことをやってくるのは間違いないな」
ウルズベルトは頷きながら話す。
「まあ、本当に大変なのはここからだな」
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馬車の中で下を向く青年───ロエル・ヴァンガードである。
彼はこれからどうなるか心配で仕方なかった。
剣の修行はしているものの実践練習までしたことが無い。
それと今最後にあったミラとの記憶を思い出している。
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「ロエル、大丈夫?気分はいい?」
「あ、ああ大丈夫だ。」
「ロエル」
「ん?どうした?」
下を向いたまま動かないミラ。次の瞬間勢い良く顔を上げロエルの両肩をミラが掴む。
「絶対に········死なないで·······」
小さく弱い声だ。ミラが掴んでいるロエルの両肩力が入る。
「ああ、俺は死なねーよ。こんなところで俺の人生は終わらねーし終わらせねぇ、終わってたまるか!俺は絶対に帰ってくるよ。そして、ミラの家の畑でも耕してやるよ!」
「ほんとぉにい?」
ミラの瞳からは涙がながれていた。その瞳から流れる涙はキラリと光りロエルの服の上に落ちた。
その涙はじわじわと服の上を拡がっていった。
「本当だ。絶対に戻ってくる。」
「うん、待ってる」
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ロエルは絶対に死んではいけない。
死んではならないのだ。
ミラを悲しませてはいけない。
そうなことを考えていると
馬車が止まった。
「降りろ」
冷酷な男の声が馬車の中に響いた。
若者達は広場にあつめられていた。
ここがどこかわからない。
不安で沢山だ。
ふと声が響いた。
「俺の名は、アラドという。貴様らぁが集められたぁ理由はわかってぇいるな?·····そうだ。戦争だ。この帝国との一戦は非常に大切なものであるぅ。この都市マルセインも戦争に負ければぁ危機に陥る。なのでぇ貴様らぁには是非とも頑張ってもらいたい。今からぁ携帯食糧と武器を配るぅ。武器を配る時に作戦を行う班表も配るぅ。その班の所に行き作戦を聞き戦争にぃ備えてくれぇ。以上だ。」
ロエルは言われた通り武器と携帯食糧と班表貰った。
ロエルは第43班だった。
班は第50班まであるそうだ。
ロエルは第43班の集合場所まで行き、そこである男性と話した。
「よう、お前名前何て言うんだ?」
急にだった。突如話しかけられたので、びっくりしたが、ロエルも話し返す。
「なんでいきなり名前だよ·······まあいいか、俺はロエル・ヴァンガードだ。あんたはなんて言うんだ?」
ロエルも聞き返す。相手は直ぐに答えてきた。
「俺ぇの名は神の使いとしてその地に舞い降りたホクジョウ・カインだ!カインと読んてくれ!
よろしくな!」
思わず頭を大丈夫?と言いそうになった。
神の使い?そこから意味がわからない。
カインは何を言っているのか。
「ホクジョウ・カインか·······よろしくな。なんか変な名前だな」
この辺りではあまり聞かない名だ。
「変な名前とは失礼な、俺ぇは神の使いだからそういうのは気にしないことだな。」
うん、意味わからん。
こういうやつとはあまり関わりたくないのだか可哀想なので話しかける。
「カインはどこの村出身だ?結構遠い感じ?」
「むらのしゅっしん??ごめん、ちょっと何言ってるかわからない」
意味が分からないのカインの方だから。
言葉が通じないのか?
「自分の生まれた村がわかんないのか?」
「あーーー、ごめん忘れたわ」
結論、単なる馬鹿。以上。
カインとは同じ第43班なので一様仲良くしておく。
「それで、ロエルは魔法とか使えるんだろう?
雰囲気的に使えそう。物を浮かせるやつやってくれよ!あれ1回見たかったんだよな!」
「ん?俺は魔法使えないぞ?確かに物を浮かせる魔法はあるけど使えねーわ」
それを聞くとカインは肩を落としたような素振りをし、口を開ける。
「なーんだ、ロエルも使えないのか·····俺ぇはロエルなら使えるかなって思ったんだけどなー」
「期待に答えれなくて悪かったな!でも俺の母さんなら使えると思うぜ?」
自分の母のことをいう。
そしたらカインが飛び跳ねて
「まじで?!めっちゃ嬉しいわ!
今度会わせてくれないか?」
「ああ、いいぜ。でも、この戦争で生き残ったらな」
2人で肩を動かして笑う。
その時、第43班の隊長である人物が声をあげる。
「私は第43班隊長を務めるレリス・キラリアという。今から作戦内容を大雑把に説明する。
1回しか言わないので聞き漏らさないように」
「お前らの使命は死んで王国に貢献する事だ。」
「は?」
ロエルとカインは口を揃えて言った。