第一章 21 『薔薇農場』
「目標達成だね。捕まえた」
フィリップの作戦は成功した。あとはこの兵士に薔薇の場所を聞き出し、燃やせば終了だ。
「さて、君には薔薇の場所を教えて欲しい」
「ひぇー!殺さないでくれー!」
怯えてぶるぶると震える兵士。これを見るに下っ端だと思った。神殿の中にはかなりの帝国の兵士が、いるかもしれない。
「殺すつもりはないから安心してほしい。俺は薔薇の場所を教えて欲しいだけさ」
「教えたら殺さないのか?」
「ああ、そうだとも」
「なら教えます」
「いい子だ」
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捕まえた兵士を前に歩かせ、道を教えてもらう。兵士は薔薇農場の道までは分かるらしいが、他の道は広すぎて分からないと言う。一部の上司で、完璧に道を把握しているも者がいるみたいだ。
「この扉を開ければ、薔薇農場です」
「ああ、ありがとうね」
「約束通り、この辺で仕事場に戻りますね。上司にバレたら怖いので…」
「うん。それじゃ」
兵士と別れた。求めてきた薔薇農場はすぐ目の前にある。扉の向こう側に。
ドアノブをひねり扉を開けた。
「……凄く広いな」
遠くを見渡しても薔薇の花がある。右や左にも終わりが見えない程に薔薇農場は続いている。
「これは大変ですね。フィリップさん」
「そうだね。ロエル君。しかも兵士が巡回している…かなり厄介だね」
こう言うとフィリップは部下に命令をする。
「アラン。君は制御室に行ってくれ」
アランは「了解」と言うとその場から立ち去った。
この神殿に入った時もロエルは思ったのだが、コダマ平野の地下にこの様なものがあるとは誰が想像出来るのか。鉄柵などが汚いのは想像通りなのだが、それにしても汚すぎる。
柵などに使われている鉄は錆びれて、茶色く変色している。
「俺達も行動をしようか」
「取り敢えず、階段降りて戦いましょ!」
「カイン君。何でもかんでも戦いと言う考えは良くない。落ち着いて」
「戦いたい!!」
「ロエル君。お願い…」
ロエルはいつの間にか、カインのなだめ役になってしまった。やりたくない仕事だが、仕方がない。今のカインにはこれが一番効く。
「あ、カイン。静かにしないとロコが魔法見せないって言ってたぜ?」
「魔法見たいから俺ぇ静かにする!」
単純といえば単純だ。しばらくこの手を使えそうだと覚えておく。
フィリップから礼を言われる。
「取り敢えず、バレないように階段を降りようか」
金属製で出来た階段なのだが、古びているせいかミシミシと言う音が聞こえてくる。足をゆっくり動かしても音が聞こえてくるので、どうしようも出来ない。
運が悪ければ、兵士に見つかってしまう。それは避けたい。
「何で音がなるんだよ!」
「喋っては駄目ですよ!カイン」
「すまん!魔法!」
「ん?!クロノスですよ?!」
「ミスった、悪ぃ!」
クロノスはため息をついた。
「今のところ通る人が少ないからチャンスだ!」
階段を降りてしまえば、隠れられそうな場所は結構ある。
「あの辺に隠れようか」
5人は降りると巨大なパイプの後ろに隠れると人目のつきづらい奥へと行った。
「侵入成功ですね」
「ああ、そうだね。カイン君も途中こそ喋っていたが、よく持ちこたえてくれたね」
「俺ぇが褒められた?!」
カインは今日で一番テンションが上がったらしく、かなりはしゃいでいる。
「ついに!!俺ぇの時代が!!!」
「ああ、またよく分からねぇことを…」
「まあ、いつもの事って言ったらいつもの事ですね」
「あまりはしゃぎすぎるなよ」
フィリップは聴覚に直接、声が聞こえてきたようで、何やら会話をし始めた。相手はアランのようだ。
〈メッセージ〉───『碧属性魔法』
(アランどうかしたか?)
(はい。少佐。監視室の件ですが、乗っ取ることに成功致しました)
(良くやったね。監視員の人数は?)
(全部で7人でした)
(わかった。やはりマジックアイテムとかはあったのか?)
(はい。アイテムを使って薔薇農場を監視していたようです)
(監視の目は、やはり人だけではないか。ならば君は、アイテムに誤った情報を認識させることは可能かな?)
(ええ、アイテムを使えば可能です)
(よろしく頼むね。何かあったら連絡するんだよ)
(はい)
メッセージを切るとこのことをロエルらに説明した。
「やりましたね!これでかなり行動がしやすくなりますね」
階段にも監視系アイテムはあったはずだが、バレなかったのはアランの仕事が早かったからだろう。
「そうだね。もうそろそろ偽造工作が出来ると思うから動くよ」
「カイン!浮かれてないで行くぞ!」
「へい!相棒!」
薔薇は青色の一色しかなく、ここからでも美しさが分かる。凛としていてる。
「それにしても、綺麗な薔薇ですね」
「流石、帝国って感じだな、質がいい」
巨大なパイプとパイプの間をバレずに進み、今の所バレていない。上に続くパイプが太くて助かった。
「もう少し奥まで行こう」
この辺りはまだまだ人が多い。賭け要素もあるが、奥に行けば人が少ないかもしれない。
本気で走ることは出来ないので、ゆっくりと行くしかない。
「なんか鼻がムズムズしませんか?」
「いや、俺はしないよ?ロエル君は?」
「いいえ、俺もしません」
「気のせいですかねー」
気のせいではない。ここの薔薇は一年中咲いているという特殊なものだ。魔法で品種改良なるものをしたらしい。ドナーの魔法では薔薇は咲いていないと効果を発揮できない。
デメリットとして一年中花粉が出てしまうことだ。
「やっぱり気のせいじゃないです!」
「ハッ」
「俺は全く感じないぞ?」
「ハッ」
「何で────」
「ハクチュン!!!」
くしゃみが大きな音を立ててこの空間に響き渡った。くしゃみの犯人は───カインだ。
勿論、巡回していた兵士達はこちらを向いて目をパチパチさせている。
「まずいぞ、この状況!」
「バレましたよね?これ完全に」
一人の兵士が武器を構え始めた。
ここでカインはようやく理解したようだ。
「あ、みんなごめん。大きすぎた」
次の瞬間、一斉に兵士達が追いかけてきた。
「またかよ!!この状況!」
ロエルらはまた走るのであった。




