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勇者になるのは程遠き  作者: 蒼薔拓哉
第一章 王国騎士
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第一章 18 『白い犬』

眩しい光がロエルとカインを包み込む。近づくとその光は次第に強くなり、ロエルは目を手で隠しながら進んだ。



「なんだ…これは」



ロエル達が光の源に近づいても、敵らしき光の源は攻撃をしてこない。それでも警戒は怠らない。



「………眩し過ぎる」



ただの光では無いことは明らかだ。モンスターは確定だろう。



「ふぅ…………」



カインも何かわからない物を前にして緊張しているのだろう。だが、ここを通らなければ前には進めない。



「何がいるのやら」



光の源を目の前にしたロエルは驚きの表情になる。そこにいたのはモンスターでは無かった。正体は────犬だ。



「い、犬……?」



ミニチュアダックスフンドよりも大分小さいだろうか。目をつぶり腕を組んで浮遊している。色は白色だ。



「ん?人間か。ぼくに何かようかな?」



用は何も無いのだが、それよりロエルは白い犬が喋ったことに驚愕している。喋る犬など聞いたことがない。



「犬が………しゃ、喋った?!」



動物が人間の言葉を喋ることを聞いたことがないロエルは当然の様に驚きを見せる。だが、白い犬は喋ることが当たり前と思っているみたいだ。



「面白い反応をするね。人間」



面白い反応と言っているが、他の人が見たらロエルと同じ様な反応をするだろう。しかし、カインは例外だ。目をキラキラさせて興味しんしんだ。



「喋る犬なんて聞いたことがねーよ!」



目をキラキラさせているカインはほっといて、白い犬に文句を言ったロエル。



「はは、ごめんね。人間には珍しいことなのか」



白い犬は上から目線だ。人間と呼ばれるよりは名前で呼ばれたいので、ロエルは自己紹介をすることにする。



「その、人間って呼ぶのやめてくれるか?その代わりロエルって呼んでくれよ。で、犬の名前は?」



人間と呼ばれるのは、ロエルはあまり好きではない。犬の彼も名前で呼んでくれれば幸いだ。



「わかったよ。そう言うロエルもぼくのことを犬って呼んでるよね。ぼくの名前はロコだ。ロコって呼んでね」



ロエルもロコのことを犬って呼んでることを忘れていた。すっかり忘れていた。ロコもその気持ちは同じだろう。



「んで、こいつがカインだ」



「よろしくね、カイン」とロコが言うとカインは飛び跳ね嬉しがっている。喋る犬に自分の名前を言われたことが嬉しかったのだろう。



「何でロコはこんな所に急に現れたんだ?」



気になっていたことを質問する。ロコは湧いた訳では無いだろう。どっからか転移してきたか他のことでここに来たのかのどっちかだ。



「んー、ちょっと野暮用でね」



詳しく話してくれないようだ。この地下通路に何か用事があったのだろうか。



「そっか。大変なんだな」



あまり深く聞かないように簡潔に終わらせた。表情をあまり変えないロコだが、何も思っているのか。



「突然ですまないが、ロエル。ぼくを

飼ってくれないか?」



迷子の白い犬ロコとでも名付けようか。ロコは飼ってくれとお願いしてきたが、いきなり過ぎて意味がわからない。



「は…?いや、んん……飼うだと…?」



飼うってつまり餌とかあげたり散歩をしたりすることか。ロエルは動物を飼ったことがないので他に何をすればいいか分からない。



「うん!ぼくを飼ってよ!」



ペットショップなどでペットを見たことはあるだろうか。見ている人が「可愛い!」「飼いたい!」って言っている時にペットが「ぼくを飼ってよ!」なんて言ってきたら気が引けてしまいそうだ。



「そんなキラキラした目で見られたら断れねーじゃねーか。………わかったよ、俺がしっかりと面倒見てあげるよ」



そうロエルが言うと「やったー!」とロコは喜び、浮遊しながらロエルの周りを回った。



「そういうば、ロコ。何で光っていたんだ?」



ロコは先程までは光が帯びていたが、今は普通の状態である。



「ああ、少し魔力を高めていたんだよ」



ロコが行っていたのは、瞑想と似ている部分があるだろう。瞑想の場合、集中力を高め体力を回復するが、ロコの場合は魔力だ。



「ん?そんなに回復しなきゃいけないほど魔力を消耗したのか?」



カインがロコに質問するとロコは答えた。カインは疑問に思ったことをすぐに質問してしまう。



「うん!ちょっと魔法の威力を確かめてたらだいぶ消耗しちゃってね。さっきので結構回復したよ」



短時間だったが、かなり回復したみたいだ。ロコは実戦形式の訓練みたいなのをやっていたのだろうか。



「へーそうなのかーどんな魔法使えるんだ?」



カインの質問詰めが始まった。こうなるとカインの疑問が無くなるまで付き合わされるのだ。



「んーー、色々使えるよ!」



「見してくれよ!」とカインが言うがロコは「嫌だー」と言い魔法を見せなかった。カインの扱いを分かっている。こうすることによって質問詰めから免れることが出来るのだ。



「ケチな犬め!!ちょっとぐらい見せてくれたっていいだろ!ケチ!」



カインが拗ねてしまった。ロエルは今のロコみたいな扱いをしているが、今まで1度も拗ねたことは無かった。だが、魔法のことだからだろう。



「ここでやったら危ないよ!ぼく達潰れちゃうよ!」



正論であることを言われ、流石にカインも静かになった。だが、カインの顔が何か言いたそうである。



「ロエルー何とかしてくれよー」



ロエルでもこうなったカインを元のカインに戻すのは難しいのだ。自然に待つしか方法はないだろう。



「無理だ、ロコ。自然に待つしかない」



カインと一緒にいる時間はあまり長くはないが、過ごしてきて思ったのだ。「こいつめんどくせぇ」と。役に立つ時のカインは良いのだが。



「今は無理だけど魔法は後で見せてあげるからね?」



ロコがそう言うとカインの機嫌は一気に治った。さっきまで拗ねてたのが嘘のように治ったのだ。



「約束だぞ!」



ロコは非常に困った顔をしているが、ロエルの目は輝いている。これでもしロコが魔法を見せなければ────カインはまた拗ねるだろう。



「うん、わかったよ」



ロコならば、カインに魔法を見せてくれると思うが、カインが拗ねたら面倒なことになるで後でロコに言っておく必要があるだろう。



「そういえば、ロコって何を食うんだ?」



餌は知っておくべきだ。何でも食べると思うが、喋る犬なので、もしかしたらと思ったのだ。ただ、問題なのが採取しにくい食べ物だった場合だ。そうでなければいいのだが───



「ぼくは基本的になんでも食べれるよ」



ロエルは安堵した。しかし、人間と同じご飯でいいのだろうか?昔人間のご飯を犬にはあげちゃいけない、と聞いたことがあるのだ。それならばロコも同じだろうか。



「味が濃かったりしてもいいのか?」



味が濃いと駄目だという場合があるかもしれない。そのようなことは未然に防いだ方がいいだろう。味が濃くても大丈夫ならば、助かるのだが。



「大丈夫だよ!何でも!」



どうやら大丈夫らしいが、ロコは残飯でも大丈夫なのか。残飯も食べれるのならば、残飯処理班として大いに活躍して欲しいのだ。



「そうか。それは良かった!」



残飯のことは言わないが、何でも食べれるということなので食べ物に関しては大丈夫だろう。ふと疑問に思ったロエルだが、ロコは寝るのだろうか。



「ロエル達の残飯処理は嫌だよ」



なぜロコは分かったのか。ロエルが考えていたことなので、カインは関係ないがロエルの顔に出ていたのか。



「な、なぜ、それを!」



まるで悪党が追い詰められた時みたいだ。ロコは魔法を使ってロエルの思考をよんだとでも言うのか。



「簡単だよ。だってロエルの顔が妙に変だったもん」



そんなに変だったのか。しかし、顔だけで自分の思考がバレるのは初めての体験だ。ロコには物凄い観察力があるみたいだ。



「…ちゃんとしたご飯を用意します…」



ロエルはロコに約束をした。

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