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勇者になるのは程遠き  作者: 蒼薔拓哉
第一章 王国騎士
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第一章 15 『愚鈍と利発』

「少数で動いてもらう。6人で1チームだ」


6人のグループが10チームあるので、総勢60人で薔薇の場所を突き止めることになる。他の作戦のことも考えるとこの人数が限界らしい。


「……行け!」


この様子を見るとアレスは他の作戦に参加しているみたいだ。ロエルはクロノス、カイン、シペラスと王国騎士2人を合わせて計6人で行動する。


「さーて自己紹介からだね。俺はフィリップ・ハワードで、こいつがアラン・ド・パーシーだ。よろしくね」


アランという男も「よろしく」と言い馬に乗る準備を始めた。どうやらロエル達も馬で移動するみたいだ。


「ロエル・ヴァンガードです。よろしくお願いします」


他の3人もロエルと同じように簡単な自己紹介をした。クロノスらは、鐙に自分の足を入れ次々と馬に乗っていく。しかし、ロエルは馬に乗るのは初めてで、少し馬に乗るのに手間取ってしまった。


「馬に乗るのは初めてかい?」


ロエルが頷くとフィリップは乗り方を一通り説明してくれた。クロノスとシペラスは分かっていたようだ。カインも何故か乗れている。


「さあ、行こうか」


フィリップは縄を持ち、馬を出発させようとしたが、急にクロノス小さな声で喋り出した。


「あ、あの宛はあるんですか?闇雲に探すのは……」


フィリップは、少し驚いた表情をした後にアランの方を向いた。そして、やれやれという言葉が合うような顔をした。


「心配しなくてもいいよ。探す場所はもう決めてあるからね」


そういうとクロノスは少し安堵の表情を見せた。そして、しばらくしてすぐに話し始めた。


「どこに行くんですか?」


フィリップはその質問を待っていましたみたいな顔をするとロエル達を見渡した。ロエルは探す場所の目星はだいたい付けている。どうせ地上か空中だろうと考えていた。


「地下さ」


これは予想外な返答だった。地下で花を育てるなどロエルは聞いたことが無かったからだ。地下に行くのは無駄足ではないかとロエルは思っていた。


「すみません。地下に行く根拠はあるんですか?」


ロエルは本当にあるか分からない地下を探すよりも地上か空中を探した方がいいと思っての質問だ。下手に可能性が低い所を探すよりも可能性が高い所を探した方が効率が良いからだ。


「勿論あるよ。俺は探知系魔法を使えない。だから自分なりに考えてみたんだ。帝国はマジックアイテムの製造が得意だろう?だから地下なのさ」


正直に言おう。意味が分からない。それだけの理由で地下を探すことを決めるとはどんな考えをしているのかロエルには分からなかった。


「すみません……意味が分からないです」


ずっと黙り込んでいたシペラスも流石に我慢出来なかったのか喋り出した。ロエルもフィリップの考えをもっと深く聞きたいと思った。


「簡単に言うと彼らは、薔薇を隠すのに必ずマジックアイテムを使ってくると思うんだ。ただ、そのような魔法を使うマジックアイテムは使う時に大きな光が出るものが時々ある。帝国製のものはそのタイプが多いね。それだと地上も空中も相手に居場所がバレてとても使いにくいんだよ。だとすると一番使いやすい場所はどこだと思う?」


ロエルはこの理由に深く納得することができた。さっきまで地上や空中探すべきだ、と考えていた自分が馬鹿みたいだ。ロエルも体験したことがあるのだ。あのマジックアイテムを使った時に出る大きな光を。あれは確かに帝国製だった。


「なるほど!!凄く納得できました!ただ、地上にある大きな家なら光は漏れないのでは?」


クロノスが言っていることも間違いではない。ただ、それは今いる場所を考えるとフィリップが考えている答えが出るはずだ。


「それも良い考えだね。でも、ここはコダマ平野なんだ。夜になるとアンデッドが大量発生するここでは、そのような作るのに時間がかかる物が作れないんだ」


フィリップの考えは完璧だった。自分達がいかに馬鹿な考えを持っていたのかと思うほど強烈だったのだ。そんな彼にロエルは着いて行きたいと思った。


「フィリップさん、行きましょう。あまり時間は無いはずです」


フィリップが「ああ、そうだね」と言うと出発の合図を出した。今からフィリップが一番怪しいと思う場所に向かうらしい。彼が疑う場所なのだ何かあるに違いない。


「少し帝国軍サイドに行く。危険だから覚悟してね」


敵とまた遭遇する可能性があるということだ。ロエルは今日、皆に迷惑をかけている。だからここから先は特に集中しなければならない。


「ロエル。10時の方向にマジックキャスターがいるぞ」


喋りかけてきたのはカインだ。彼はいつもふざけているように見えるが、この様な場面になるとまるで別人みたいだ。


「良く見えるな。俺は全く見えなかった」


フィリップも見えていたようでそのマジックキャスターを避けるようにルートを変更していた。少し遠回りになるが、仕方が無いだろう。


「アラン例の魔法をお願いしてもいいかい?」


アランは「承知」と言うと馬に乗ったまま詠唱を始めた。バランス感覚が無いと出来ない至難の技だろう。


「クエイク」


クエイクは地震系魔法だ。威力は普通で広範囲に技を繰り出すことができる。『紅属性魔法』だ。しばらくすると、地面が急に揺れ始めた。それと当時に地面の表面にある土は激しく動いた。


「あそこだね。馬は近くに置いておくように」


フィリップが指を指した先には、何があるのだろうか。目を細めて見ていても見えない。だが、何かがあるのは確かだ。


「────!!扉だ………」


そこには地下に繋がる扉があった。フィリップの予想は見事に的中していたのだ。


帝国との国交は今年に入ってから禁止された。

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