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勇者になるのは程遠き  作者: 蒼薔拓哉
第一章 王国騎士
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第一章 14 『可憐なる薔薇の正体』

4人の男が歩いている。彼らは王国騎士ではない。ロエル達である。彼らは現在、作戦により待機中である。今回で一番大切であろう任務を行う前の待機なのだ。


「まだかな」


先程から結構待っているが、なかなか作戦開始の合図がこない。何らかの問題がある場合にこの様なことが起こり得るのだが、連絡が来ないのでロエルには分からない。


「なあ、クロノス俺達が今からやることってそんなに重要なのか?」


彼らが託された任務は直径1kmのどこかにある薔薇の花を全て燃やすこと。薔薇の場所もまだ分かっておらず、薔薇の場所を探すところから始めなければならない。


「うーん…………」


分かっていることとすれば、その薔薇は1箇所に固まっているらしい。しかも護衛付きでだ。ロエルは正直薔薇を売り物に出したらどうだと思ったが、口には出さなかった。


「話は聞いたろ?フェス・ドナーの」


勿論ロエルは聞いていた。まずこの作戦を理解するには、フェス・ドナーの性質を理解する必要がある。簡単に言うとドナーは薔薇を使って、薔薇と物や薔薇と人などを自由に転移させることができる。


この魔法の性質上、薔薇以外の花では効果は発揮できない。薔薇と物の転移では薔薇は枯れないが、薔薇と人を転移させた薔薇は枯れてしまう。枯れた薔薇では転移はできない。


「ああ、聞いたさ。転移のやつだろ?薔薇を今から見つけるって言ったって帝国だってあほではない。上手く隠蔽され、見つけれないんじゃないかと思ってな」


王国と帝国が戦ってるすぐ側に薔薇を育てているはずがない。そんなの見つかって燃やされてしまう。正直直径1kmは広すぎるのだ。


「確実にそうだろうな。普通に地上にあるかはたまた空中にあるかもしれない」


浮遊魔法を薔薇にかけることで、薔薇は浮くことができる。そして背景と同じ色になる魔法をかければ完成だ。これだけでも肉眼ではかなり見つけにくいだろう。


「そうだよな……………」


しかも空中で数メートルならまだわかるかもしれない。だが、直径1kmまでなら良いのだ。すぐに見つけ出して燃やすというのは困難だろう。


「探知系魔法を使えば意外と見つけ出せたりして」


喋り出したのはずっと黙っていたシペラスだ。シペラスの言う通りだろう。人に任せるよりも魔法を使った方が作業効率がいいし、人の目が届かない所にも目が届くのだ。


「あーー、なるほど」


ただ1つ問題がある。それは探知系魔法を阻止されることだ。これをされていたら手も足も出なくなる。ただ、宛もなく闇雲に探すことしか出来なくなるのだ。


「私は使えないが、もうそれにかけるしか無さそうだ」


魔法を使う者にもやはりセンスというものは必要だ。魔法のこと全てにセンスがあれば、どんな魔法でも覚えることが出来るだろう。しかし、習得時間を考えると探知系魔法は後に回されることが多い。


「そうだよな」


しかも高位の魔法を覚えようとすると習得時間がとても長くなるのだ。センスがある者なら時間をある程度短く出来るとはいえ実戦で使えるようになるには長い時間を有するだろう。


「なあロエル、俺ぇ達はもうすぐ出発出来るのか?」


話もろくに聞いていなかったのだろう。ロエルはカインに飽きられた顔をしながら言った。


「いや、まだだ」


少し冷たすぎたか。いや、カインにはこれぐらいが丁度いいとちょっと前に思ったのだ。変なことを言うと質問詰めにあったりするのでそれの防止だ。


「ちぇー、つまんねぇのーーーーー」


地面に寝始めたカインだが、出発するぞ!とか言えばすぐに目を光らせて起きるだろう。だからあまり問題ではない。だが、戦場で寝る奴ほど命知らずをロエルは知らない。


「クロノス!そういえば、アレス隊長が探知系魔法を得意じゃなかったか?!」


アレスが探知系魔法に特化しているのは王国では有名な話だ。その理由はアレス以上に探知系魔法を上手く使える人がいないからだ。


「もしかするとアレス隊長なら見つけ出せると思はないか?」


低位の阻止系魔法を凌駕するアレスの魔法ならば可能だろう。薔薇の場所を探すのはアレスが一番適任だ。


「アレス隊長が一番適任だ。それは間違いないのだが、アレス隊長はこの作戦に参加しているのか?」


アレスも何らかの作戦には参加しているとは思うが、問題はこの作戦に入っているかどうかだ。他の任務をやっているのならば勿論アレスが薔薇の場所を探すことは出来ないだろう。


「詳しく聞いていないから分からないな……」


ただ優秀なものが多い第1班には他の作戦に参加している可能性が高い。ロエルはもう少し話をしっかりと聞いておくべきだったと今更後悔している。


「私もあの時は眠くて……いや、考え事をしてたからあまり聞いていなかったな」


クロノスが眠いと言っていたようにロエルも眠かったのだ。少し聞いておけばいいと思っていたが、その考えはこれから直す必要がありそうだ。


「おい、お前ら出発するぞ」


第43班の隊員がロエルらを呼びに来たようだ。予想通りカインは目を光らせてはしゃいでいる。そんなカインは誰にも相手にされない。


「さあ、薔薇探しとするか」




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