第一章 13 『可憐なる薔薇2』
薔薇はなくなっており、そこには男が一人たっていた。髪は白色で身長が185センチ程ある男だ。その男の腰辺りには剣がある。
「き、貴様は………」
ゴータスはてっきり魔法が発動されると思っていたのだ。だが、予想外にも人が現れ、腕も組んで立っていた。
「お初目にかかる。私はフェス・ドナーだ」
王国の騎士ならばフェス・ドナーの顔は知らなくても名前は絶対に知っているはずだ。その理由はフェス・ドナー自身の強さもあるが、昔王国戦士長が殺されたからだ。
王国の王はこの事を許してはならぬと王国騎士に言い、打倒フェス・ドナーとまで言っているほどだ。
「顔を見るのは初めてだ………単刀直入に聞こう。貴様何しに来た」
思いつく限りではゴータスらを殺しに来たが有力であろう。しかし彼は帝国最強の騎士にして冷酷な男として近郊でも有名だ。この男がそれだけが理由とは到底思えない。
「面白い質問をするね。えーと君の名前は?」
ゴータスは質問に質問に返されるのが一番嫌いだ。大体失礼極まりないのだ。だが、敵同士なのであまり関係ないのだが。
「………ゴータスだ」
「ほほう。ゴータス君か。さっきの答えだけど素直に言おう。詮索だよ詮索。君たちの力をさ」
ゴータスの頭にはクエッションマークが浮かんでいた。なぜならここは戦場だ。詮索ならば戦争の前に行うのが適作であろう。だが、フェス・ドナーは詮索と言ってきた。ただの詮索では無いのは明らかだ。
「ただの詮索では無いな?お前は口が固そうだな。これ以上真実は語ってくれそうにないな」
ゴータスはそう言うと剣を抜きゴータス向けてその剣を振り下ろした。とても早い攻撃でそこらの兵ならこの一撃で敗れたであろう。しかし相手は帝国最強の騎士だ。
「急に危ないよ。ゴータス君。私は貴方達を殺すとは言っていないはずだよ?」
そう言うとフェス・ドナーも剣を抜きその剣を構えた。フェス・ドナーは確かに殺すと言っていないが、ここは戦場で相手は敵だ。殺すに決まっている。
「そこそこやるみたいだね。ならこちらも少し本気を出すとしよう」
「ローズ・ソードII」「ポテンシャルアップ」「イド・マグナムブレイク」
なぜゴータスらは詠唱中のドナーを攻撃しなかったのか。正確に言うとそれは攻撃しなかったでは無く攻撃出来なかったのだ。ドナーが出すオーラが恐怖で動けなかったのだ。
「絶好の攻撃チャンスだっただろ?チャンスを無駄にするとは愚か者にも程があるな」
ドナーが先程発動させた魔法はそこそこ強い魔法だ。ローズ・ソードII、ポテンシャルアップが『紅属性魔法』で、イド・マグナムブレイクが『橙属性魔法』だ。
「フェータス注意しろ。先程奴が唱えた最後の魔法………あれはファイアーボールの進化版だ。ファイアーボールが多数飛んでくると思え」
イド・マグナムブレイクという魔法はゴータスが言っていた通りファイアーボールが多数飛んでくるという魔法だ。ただ────恐ろしいのはファイアーボールよりも威力が強力という点だ。それが多数飛んでくるということは脅威であろう。
「さあ、喰らうが良い」
ドナーがそう言うと突如として火の塊が現れ、ゴータスらの方へ物凄い早さで飛んできた。
「きたか!!ブリザード・スラッシュ!!」
イド・マグナムブレイクによって飛んできたファイアーボールはゴータスの魔法を宿した武器により次々に消されていく。ゴータスのこの武器の魔法は回数無制限という優れものだ。
「くそ。相性が悪かったな」
ゴータスは見た目によらず動きが早い。先程まで少し離れたところにいたのに既にドナーの目の前まで来ていた。
「舐めすぎだ。帝国最強の男よ」
ゴータスの剣が見事ドナーを捉えダメージを与えた。ドナーは瀕死の怪我を負ったようで立ち上がれないようだ。
「こんなに弱いはずがない」
ゴータスの嫌な予感は的中し、ダメージを与えたはずだったドナーはいなくなっていた。ただ、そこには一輪の薔薇が咲いていただけだった。
「後ろだよ?」
ドナーはゴータスの後から急に現れ、ゴータスの背後から剣をぶち刺した。ゴータスは急激な痛みに耐えきれず思わず大声をあげてしまう。
「うわぁぁぁあああ!!!き、ききさまああ!」
剣はゴータスの体を貫通している。ドナーの剣はただの剣ではない。先程の魔法がかかったいるのだ。そう────ローズ・ソードIIだ。この魔法は剣を薔薇のいばらにすると例えた方がいいだろうか。
ここまで聞いてあまり強くない魔法と思ってもおかしくは無いだろう。この魔法は創造力の高さにより強くもなり弱くもなるのだ。というのも自分が創造した通りに剣の形を変えれることが出来るからだ。IからVまであり、数字が上がっていく事に形を大きく変えることが出来る。
「とどめだ」
ドナーがそういうと剣は変形をし始めた。よく見ると剣に無数の針みたいなのが出来ており、刺さったらとてもいたそうだ。ドナーはその剣をゴータスから勢い良く引き抜いた。
「さて、次は誰の番かな?」
自分達よりも強いゴータスが一瞬で負けたためか、自ら動く勇気のある騎士はいなかった。