~ 卵形の石 ~
お母さんが …
笑いながら 僕を着替えさせてくれて
お母さん と 二人で 居間に戻ると
お父さんが …
「小便小僧 が ! ハッハッハ ! 翼 明日 皆で 天山温泉に行こう! お父さんも ゆっくり 温泉に入りたいしな !ハッハッハ !」
と そう言った …
お婆ちゃん は 直ぐに
「ごめんよ … 明日は 老人会の パークゴルフの準決勝なんだよ … 三人で 行って来なねっ … 」
と お父さんに そう言った …
「いやぁ お義母さん 俺が急に決めたんで すいません … 次 一緒に行きましょう!」
お父さんは 優しく微笑んだ …
でも …
僕には 見える …
青白い お父さんは …
「ソレデ 良イ … 良カッタ … 」
と 泣いているように お婆ちゃんに 謝っていた …
次の朝が来て …
お婆ちゃんが パークゴルフに出掛けた後
お父さん の 車に乗って 天山温泉へと向かった …
お父さんに ビッタリと引っ付いている 青白い お父さんも一緒に …
お母さん も お父さん も 楽しそうに 話をしていたけれど …
僕 は 青白い お父さんが 居るせいなのか …
ちっとも 楽しくなかった …
途中で オシッコを 我慢できなくなって…
お父さんにお願いして
車を止めて貰って 知らない街の駅で オシッコをして
駅前の自販機で お母さんが ジュースを買った …
「あれっ? 」
お父さんの 車から …
モワモワ と 青白い煙が上がって …
青白い煙は シューッ!と …
掃除機に吸い込まれるみたいに 空中に消えた …
僕が ボゥ~ っとしていると …
お母さんが 僕の手を引いて …
「翼 行くわよ♪」
と 楽しそうに そう言って
僕と お母さんは 車に戻った …
車に乗ると お父さんが
「俺も行ってくる ! 」
と車を降りて 駅のトイレに走って行った
トイレから出て来た お父さんは …
スッキリした顔をして …
駅の前から 知らない この街を嬉しそうに眺めていた …
あの 青白い顔の お父さんは 何処かに消えたのかな …
お父さんと 重なっては居なかった …
お父さん が 車に戻って …
「どうしたの ? 」
と お母さんが お父さんに聞くと …
お父さんは 微笑みながら …
「うん? あぁ … この街 … 良い街だなって そう思ってな … 」
と そう言った …
「変なのぉ~ 田舎は嫌だって あんなに言っていたのにぃ~ 」
と お母さん が 言うと …
「俺 そんな事言ったか? ハハハッ!」
と お父さんは 恥ずかしそうに笑っていた…
その後 車が走り出して 少し経つと …
「あれ? この道か?」
と カーナビを見ながら 車を走らせる お父さんが そう言った …
カーナビが示す通りに 車が進むと …
E R R O R …
の文字が カーナビ に 現れた …
「あれっ? 何だ ?」
お父さん は 車を道路端に止めて カーナビのボタンを押し始めた …
僕が座る後ろの席の ドア側の窓から…
不思議な 卵形の石と その前で 正座をして必至に何か話している
青白い お父さんが 見えた …
僕 は …
「ちょっと降りるね!」
と言って 車を降りて …
ゆっくり ゆっくり …
足音を立てないように …
卵形の石 と その前で正座している
青白い顔の お父さんに近づいた …