~ 青白い顔の お父さん ~
「じゃぁね … 翼 君 … 」
こずえ 姉ちゃんは 今日 引っ越しをする…
先月 結婚したばかりの 旦那さんと 一緒に …
「国境なき医師団 」と言う 団体に入り…
「医者として 戦地で怪我や病気で苦しむ 人々のために 尽くしたいの … 」
僕に そう 聞かせてくれた …
僕 は …
こずえ 姉ちゃんが 居なくなるのは 嫌だったけれど …
その事が 「上手く進む」と 言う事は …
「ソノ人間ノ人生ニトッテ 善キ事ナノダ… 」
と 鎮守様が 教えてくれたから …
「そうなんだな」 って思う事にした …
こずえ 姉ちゃん は …
「では 皆さん お元気で … お世話になりました!」
と 目に いっぱい涙を溜めて …
僕 と お母さん と 三上のオバサンに 頭を下げて …
旦那さんの運転する車に乗って 行ってしまった …
三上 の オバサン は …
「行っちゃったわねぇ … 裏野ハイツ 卒業ね ! お医者様だったなんてね … やっぱり女も手職よねっ!加藤さんも せっかく働くなら 何か手職を身につけて働かないと ! まだ 三十代でしょ? 若い若い !私なんて七十代 よ~ しかも 年金くらし っ!遅い遅い ! アハハハハッ!それなら言うなって話よねぇ~ アハハハハ!あっ ! そう言えば 知ってる? … 」
相変わらずの お喋りで …
僕の お母さんに 炸裂トークをしていたけれど …
お母さんは 苦笑いしているだけだった …
僕は こずえ 姉ちゃんが 引っ越して来る少し前 …
1年にはならないけれど …
それくらいに 裏野ハイツの103号室に引っ越して来た …
その前は …
日の出町よりは ずっと遠い所で 一軒家で暮らしていた …
お父さん は 大学時代から親友の 「大橋 友紀 」と言う人とコンピューターグラフィックの 会社を共同経営していた …
友紀オジサンは 僕の家に 毎週末のように遊びに来ては …
「翼 ~ 今日は 此だっ! 」ってオモチャを プレゼントしてくれた …
優しくて 悪い人じゃなかったし …
僕 と 一緒に遊んでくれたし …
僕は 友紀 オジサンが大好きだった …
だけど 突然 …
友紀 オジサン が 家に遊びに来なくなって …
お父さんの 顔 が …
日に日に 怖くなっていった …
お母さんが 手を滑らせて オタマを落としただけで 大声で怒りだしたりして …
お母さん と 僕 は …
「暫く 実家に戻っていろ … 」
と お父さんに そう言われて …
お母さんの お婆ちゃんの家に行った …
10日くらいして お父さんが お婆ちゃんの家に来た …
お父さん は …
お婆ちゃん や お母さんと話ながら
ニコニコ ニコニコ って ずっと 微笑んでいたけれど …
僕 の 目 に は …
お父さん の 後ろに もう一人の お父さんが 重なって見えた …
もう一人の お父さんは …
青白く 頬は痩けていて …
目だけが ギロッと大きくて …
泣きそうになる程 怖かったんだ …
「何故ダ! 何故ダ 大橋 ! 何故 騙シタ !何故 俺ヲ 裏切ッタ ー !!」
僕が 見ている事を知っているのか …
青白い顔の お父さんは グワッ! と口を大きく 広げて 僕に そう言った …
風 … ?
ウワッ! と 青白い顔の お父さんの言葉が聴こえた 途端 …
僕は コテンッ !と ひっくり返った …
お母さん も お婆ちゃん も お父さん も
ひっくり返った 僕を見て
「嫌だ~ 翼 どうしたの?」
と 言って 笑ったけれど …
僕は それどころじゃ無くて …
怖くて 怖くて オシッコ を 漏らした …