牛乳
今回は日常の風景を自分なりに描いてみました。相変わらずの才能無しですがこれからも宜しくお願い致します。
日本で初めて牛乳を飲んだのは誰であろうか…一説によると水戸光圀という話であるが、そんな話はこれには関係はない。
ある日常の風景である。
この家には、毎日、牛乳が配達される。
朝、玄関を開けるとね。牛乳を入れる箱があり、数本入っている。
やはり、牛乳は瓶が一番であろうな。冷えた瓶による相乗効果でより旨くなるのだろう。
「小林さん。牛乳でーす。」牛乳の配達員の声がする。
「済まん済まん。いつもありがとうな。」
ワシは今年で70になる老人である。毎日の楽しみは、嘗ての小学校の友達と飲み会をしたり、子供相手にスポーツの指導員をしたりすることである。
微々たる年金だが生活には不自由しない。
家から滅多に出ることもなくツイキャスによって会話している。
妻には変な目で見られているが、会話好きには楽しい場所である。
喧嘩凸主?そんな奴には老人世代の経験で論破すれば良い。
出会い厨?こんなジジィに付き合ってくれるなら本望よ。勿論、顔出しはしないがな。
毎日届く牛乳を飲みながら、ツイキャスを配信している。
我が妻は三十代。まだまだ若いから仕事に出ている。
ワシも働かなきゃいかんのぉとも思っている。だが、若者言葉で言うところの社畜生活はもう懲り懲りである。
ふと旧式のウォークマンを起動してみる。
一人の女性の曲が聞こえた。
『帰りに牛乳を買ってきてください。寝る前にホットミルクがどうしても飲みたくて…』
この曲は我が妻が十代の時に聴いていた曲らしい。
最近は、ビジュアル系とか、ワシには理解できないバンドが多くて、音楽の世界はもうワシには合わないのかと思っていたが、この曲だけは性に合っていたようだ。
『牛乳』…この曲は長閑な日常を感じさせる。心を落ち着かせるのだ。またこの曲を聴いていると、宅配牛乳のみならず、市販の牛乳も飲みたくなる。だが、瓶牛乳ほど旨いものはない。
ワシは頑固なジジィやからな。そう簡単に嗜好は変えられんのや。
昔ながらの、礼儀がどうこう言う若者には嫌われる存在かもしれないな。激動する時代についていけない存在である。
この『牛乳』という曲は、歌詞を見る限り妻の目線から歌っているように感じるが、定年を迎えたワシには同じように感じられる。
最早、こんなに若者世代の曲が合うのはこの曲しかないのではないかと思った。そしてワシはこの曲を聴きながら牛乳を今日も飲む。
https://youtu.be/7X7n9kUvP4A
小説中に使用させて頂いた茨城県の水戸市周辺で活動する未咲さんの『牛乳』です。是非お聞き下さいませ。