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Ⅱ 神隠しにあった ~野原→最寄りの村~

 彼女たち三人は、しばらくの間、その光景に目を奪われていた。

 15分……20分ほど経った頃だろうか。

 こちらに飛んでくる、しかしまだまだ遠くにいて小さく見える飛竜が視界に入ったとき、白美は顔を振った。

 この場所に留まっていても仕方がない。

 そう思いつつも、正面に広がる光景を見ていれば一生目を離せないような気がしたからだ。

 たまたま飛んできたのか、飛竜が目に付いたおかげで、一瞬呪縛から逃れることができた。

 代わりに、嫌な想像を描かされる。

 群像が、焼かれる絵――

「あ…………」

 逃げなければ。

 もし、考えたくないけど、それでも。

 もし。

 群像が、飛竜に焼かれたのなら……

 ――逃げなければ。

 唐突に立ち上がる。

 それが引き金となり、自分たちが景色に囚われていたことを悟り、目を背け、その目線の先に白美を持ってきた。

 白美はしきりに前を見たり横を見たり、そして後ろを見たりしている。

「……どうした?」

 その様子に舞子は口を開く。

「何かあったのか?」

「……逃げなければ…………」

「は? 逃げる? どうして?」

 自らに言い聞かせるような、白美の答えに困惑する舞子。

 が、堪の良いこおりはすぐに悟った。

 悟って、一瞬だけ正面を、景色を見て、悟ったことが正しいことを理解する。

 理解して、即座に思考。

 答えを導き出した。

「……とにかくあの村へ行きましょう……」

 指した先は丘の麓近くに在る小さな村だ。見たところ20件程度しか建物はなく、村の大半を農地に使っている。牛舎や馬屋も見かけられる。

「……ええ」

「へ? は? こおりんまで? ……いや突然言われても……というか後ろはだめなの?」

 という舞子の戸惑いの呟きと、誰もが思いつく疑問に、

「良く見て。背後の、丘の上は……」

 答えようと思った白美は表現の仕方が分からないように口をパクパクと開閉させる。しばらく悩んだあと、白美は腕を少し上げて、人差し指で見て、と指示を出す。

 その先を、人差し指の延長線上を、舞子は見た。

 そこには。

 紫・焦げ茶を基本としたすべての色が混ざり在ったような、そして全体として黒く見える、嫌なオーラのようなものが、横幅が分からないほど広がっていた。上の方にも、伸びている。

 絶句する様子を白美は感じ、言う。

「この先がどうなっているのか分からないし……行きたくても行けないでしょ……」

「う、ん……。あ、でも、さ。帰るってのはどうなの? その、現実に」

「……それも無理……。……  君が捕まったにしても捕まってないにしても……先生は必ず教室に留まっているはず……」

「ああ、そうだ、中二病忘れてた……。でも来てないってことは、ここにいないと言うことは、捕まっちまったんじゃねぇの? でも大丈夫か。戯言しか言わないしな、先生からしたら……」

 自分で言って、自分で結論をだす舞子。すぐに顔を上げて、今度は二人に訊ねる。

「ねぇ……舞たちは何から逃げるのよ」

 白美は俯いた。まだ、現実を受け入れられない。

 こんな短時間で受け入れられる訳がないし、そもそもそんな覚悟が、肝っ玉が、元から彼女に据わっているわけがない。

 だから仕方がないと言えば仕方がないのだが。

 舞子は困惑するばかり。

 対して、何も感じていないこおりも、口を開かない。

 開けない、ではなく。

 敢えて、開かない。

 すべては白美のため。

 等の白美は、呟く。

「……死んで、無いよね、殺されて、無いよね、逃げた、だけだよね……」

 スゥッ――

 白美は息を吸い込んだ。

 そして。


「――群像ゥゥゥゥウウウウゥゥゥウウウゥウウウゥウウウウウッッッ!!」


 突然、叫んだ。

 飛竜の方に、向かって。


 舞子は、理解した。

 二人が、その飛竜から、逃げなければと思っていることを。


 言いしれぬ不安感を三人は抱え、立ち上がりざまに、走り出す。


 ――村に向かって。




 ふと、こおりは見た。

 飛竜に、血が付いていることに気が付いた。

 そして。

 自分たちと同じ制服を着た、少女を。


昨日だいぶ疲れてて九時くらいから寝てたので……更新できず。


とにかく今日はと頑張りました。

頑張ります、これからも、はい。

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