Ⅰ その世界は ~空き教室→異世界~
無駄に部数が多い小説になりそうですが……一つ一つは大したことはありません
感想よろしくお願いします
次の日。
「……為る程。電子機器連結型念動で質問したがアクセラレータ状態で解消成されなかった疑問が、今、了解した」
五人は休日――土曜日であるにも関わらず、学校に来ていた。
もちろん原因は、要因は白美のメールである。
どうせ明日土曜だし、嘘か誠か見極めてやろうぜ、と冗談半分で群像が白美以外に一斉送信したところ、三人全員から返信されてきた次第だ。
待ち合わせは校門(使っている部室がある棟にはクラスルームがいくつかあったりして、休みの日は閉まる)で、今現在は例の空き教室の前にいる。
「それじゃ、今から開けるね」
言った白美の手には……鍵が無い。
「……え、え? 鍵無いのにどうするの?」
「ん? ピッキングだけど……何か問題でも?」
「当たり前の様に言うなー!!」
群像は思わず叫んでしまう。
「え、ちょ、待ってよ……ちゃんと鍵借りてきてさ……」
「借りたいけど、ここ、鍵無いよ?」
「? どういう意味?」
「いや、どういう意味も何も、そういう意味なんだけど…………知らない? この学校の七不思議の一つ」
昔……というほど昔ではない、二十年ほど前の話。
当時、高校一年の女子生徒がいた。
いつも元気で活発な女子で、クラスの中心的存在であった。
容姿端麗・八方美人と、絵に描いたような存在であったが、絵に描いた存在であった故に、誰にも敵視されずに、男女ともに人気があった。
そんな彼女はある休日、友人五人と学校で隠れん坊をしたらしい。
その教室は普段、予備の机などを置く場所として使用されていて、鍵は閉じられていた。
だがその日だけ開いていた。
教師が閉め忘れたのだ。
ここなら隠れ通せる。
そう思ったのだろう、机がきっちりと整頓されているその教室に入った。
そして……
「『そして――彼女はどこかに消えた……』」
「ん……そんなところ。知ってるでしょ?」
「うん……そのくらいなら――ってその教室がここってこと!?」
白美はコクリと頷く。
「え、ちょ……まっ……いやだって、あ、あ、危ないでしょ! 帰ってこれるの!?」
「帰ってこれるよ」
案外あっさりと、白美は言う。
「だってほら、実際に帰ってきてるよ、私は」
ガチャリ。
大した苦労も無く、扉の鍵が開く。
「慣れてるな……」
「いや~、家の事情があって……。あ、とりあえず入って入って。先生来たらめんどくさいから」
あまり話題にしたくない様子で、流す。
「ロッカーの前で待ってて」
そういって、中から扉に鍵をかけた。
☆
「さてと……これ、異世界への行き方、帰り方をまとめたから。初めに行きたい人、手、上げて!」
二つの☆があるメモ帳を一枚もらって、群像はさっと目を通すことのついでに、右手を挙げた。
「早っ。……さては群君ー、一番楽しみにしてたでしょ」
「いや、そうじゃないって。僕は白美以外の人間が行ったところで、帰ってこれないだろ。せめてまともな僕だけで良いから」
「……ふむ……ツンデレ、といったところか」
「は?」
白美は謎の呟きを隠して、ロッカーへと群像を誘う。
空き教室にしては管理の行き届いた掃除用具入れの中は、快適だった。
わざと大きな声で会話してもらってから、
扉を閉めて真っ暗にする。
その後……目を閉じる。
突如、話し声がなくなった。
ん?
目に、光を感じた。
目を、開ける。
すると……
そこには、異世界が広がっていた――
どこまでも緑で。
どこまでも青で。
どこまでも……。
「す、ごい……ってかマジかよ……」
群像は呆然とした、否、呆然とするしかなかった。
だから、それに気づかなかった。
不自然な音に、気づかなかった。
突然、突風が吹く。
何の予兆もなく、いきなり現れた轟風。
抵抗する間も、踏ん張るまもなく、偶像は横に吹き飛ばされる。
「ぐ……」
耳に、荒い息づかいが聞こえる。
なにがなにか分からなかった。
どうすればいいか判断できない。
くそっ、動け!
ただ痛みで脈打つ体をむち打って、四つん這いで、全身で、前進する。
とりあえず帰ろう。
帰らないと。
帰る方法は?
メモ帳をいつの間にか落としていたが、だけど幸い覚えていた。
大きな岩……そう、大きな岩だ。
どこにあるッ!?
血眼になって探すほどでもなかった。目の前に、あった。
なぜが不自然に黒い陰で覆われていたが、それに気づかないほど、冷静でなかった。
立ち上がって、駆け寄る。
あの岩だよな……あの岩で合っててくれよッ!!
心の中で叫んで、その岩にたどり着いた。
「確か岩の周りに何かが……」
と、メモ帳の内容を思い出すために呟けたのは、そこまでだった。
周りを全く見れていない。つまり状況判断が全くできていなかった。
突如感じた熱。
灼熱。
マグマのような固まりが。
空から振ってきた――否。
――飛竜が、吐き出した。
「――ッ」
驚きの声を上げる暇も無かった。
とっさに手が――動かなかった。
とっさに足が――動かなかった。
全体が高熱で溶けている球体の岩石の進行方向のちょうどど真ん中に、自分がいると知らず。
擬音できない程の爆発音と、
――ギャオォォォオオオオォォォオオオォオオオォオォォオオッ!!
飛竜の叫び声が、辺りに響いた。
ああ、暫定的な主人公がぁ……
筆者絶望。
人死ぬの早すぎでしょ