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コタツ  作者: オセロ
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第1話/四人目の義母さん

「ハイ!まずは健太くんからね!」


陽一からの元気よい指名。


「え!俺!?」


突然、意味のなく指差された健太は慌てた。


「だって俺、お楽しみは最後にとっておく派だし」


当然!と、言わんばかりに威張る。


「それもそうだな」


ヤッパ最後は・・・。隣をチラ見。


「・・・・・・。」


子供の相手に疲れた母親のように、広は目をそらした。




〔清瀬健太の場合〕




僕がまだ中学生の時のことだ。



四度目の再婚。僕は一番最初の妻との子供で、二番目の義母さんとの間にも二人の弟。三番目の義母さんは三人の妹と弟がいる。


僕を含めて、父さんには、七人の子供がいた、でも父さんはいつも僕だけを連れて家を出て行く。正直迷惑だった。


義母さん達の所にいた時は共働きで何とかやってこれたが、収入の少ない父さんとの二人暮しはいつもギリギリの状態。


とても他の子供の養育費まで払える状態じゃない。だから毎回離婚する度に夜逃げのように家を出て失踪するのだ。


でも、父さんは相変わらずで、よおやく最近生活が落ち着いて来たのに又、再婚する気でいるみたいだ。


しかも相手は、まだ二十歳、職場の部下らしい。父さんと二十歳差だ、むしろ僕の方が年が近い。


どう考えても血迷ったとしか考えられなかった。当然僕は猛反対しかし、父さんは僕の反対を完璧に無視して、昨日婚姻届を提出。


四人目の義母さんの家に転がり込むことに。


「いらっしゃい」笑顔で出迎えてくれた。随分綺麗な人だな。さすがに僕と五歳しか変わらないとお母さんと言うよりかは、お姉ちゃんみたいだ。


染めているのだろう、軽く茶色が混ざった肩までかかる髪。前の義母さん達も結構若かったけど、ヤッパリ二十代と三十代は全然違う。


どうして父さんなんかと結婚したのか、ますます分からなくなった。


高級そうなマンションの最上階、そこが僕の新しい家。どおやら四人目の義母さんは、かなりの金持ちみたいだ。


「今日は飯食いに行くぞ」


そう言って父さんは到着したばかりだってゆうのに外に出る。その後、お決まりのお食事会。主に僕と四人目の義母さんの仲を取り持つためのもの。


もう、三度目だし僕は慣れてるけど、向こうは緊張した様子で、父さんが席を立つと無言状態になり、こっちからは話し掛けづらい状況。


向うは大人だし、何かしら言ってくるだろう、と思い黙っていると、父さんが戻ってくる。


今日、四人目の義母さんと交わした言葉は「いらっしゃい」といったのに対し「こんにちは」と僕が言っただけ。会話にもならないものだ。


「おはよう」リビングに入った瞬間、台所から女の声。そういえば再婚したんだっけ・・・・。


母さんが変わるたびに必ずいた弟と妹がいないと変な感じがする。父さんは結婚する度に浮気をしては子供を作ってくる。


少子化の日本にはありがたい事だが、身内としては迷惑以外何ものでもない。一番年の近い弟なんて同じ中三だ。誕生日上、僕が兄だがほとんど関係ない。


しかも、妙にライバル意識してくる兄(弟)、当然のごとく一つ下の弟は母親が同じ兄の味方、兄弟仲は最悪。


三人目の義母さんの家にも、すでに一つ下の双子の妹が二人と五歳になる弟が一人。初めて会ったのは中二の春だ。


一緒に住んでたのは秋くらいまでで、半年ほどのあいだ冷たい視線を背中に浴びてきた。唯一僕に優しかったのはまだ何にも知らない五歳の弟だけだった。


「おはよ」


周りを見れば僕と義母さんの二人っきり、珍しいことに、父さんはいつもより早く家を出たみたいだ。


「ご飯できてるから。お義母さんも行くね」


「うん」


テーブルを見れば、米に、味噌汁、卵焼き、日本の朝!と言った食卓だ。義母さんはまだ仕事を辞めてなかったのか。


まっ、ここのマンション代、父さん一人の稼ぎじゃ絶対に住めないだろな。椅子に腰掛け朝食を食べる・・・普通だ・・・。


美味くも不味くもなく、普通。一番コメントしづらいものである。でもこの義母さんはあまり僕と喋らないから聞いてこないだろう。


「おいしい?」


何かを期待する義母さんの目。まさかここで口を開くとわ、想定外だ。


「うっ、ん、まぁ、おいしい」


少し口ごもったが、それなりのことは言えた。


「うん、行ってきます!」


満足そうに笑い、足早く家を出る。ヤッパリ母親よりもお姉ちゃんの方がマッチすると思ってしまった。




夜の十時過ぎ。


僕は、リビングでゴールデンのバライティー番組を見ていた。義母さんは何だかソワソワしている。


「ねぇ、いつもあの人はこんなに遅いの?」


薄暗い表情で僕に聞く。どうやら父さんの帰りが遅すぎると、心配しているようだ。


ここから父さんの職場まで電車で三駅このマンションから駅までも徒歩五分、残業でもない限りそうそう遅くはならない。


「どこかで、飲んでんじゃないですか?いつも、こんな感じだし気にすることないと思いますよ」


てかっ、さっそく浮気してんじゃねーか?心配することは全くない。事故で死んぬほど普通じゃないからなあの人は。


「そっかー・・・」


「・・・・・・・」


義母さんはまた、少し考えている。案外、勘ぐり深いな。




「はぁー」


まただ、この頃、義母さんは、ため息が多い。多分父さんの朝帰りが多いためだろう。


一昨日の早朝、リビングから父さんたちの喧嘩声が聞こえた。嫌な目覚めだったから、二度寝して再び起きると目の下にクマを作った義母さんが声を殺して泣いていた。


初めて会った時よりも、やせ細り、やつれていることに、その時初めて気が付いた。


それからは僕なりに気を使い家事全般を手伝っているし、時々朝食も作ったりした。こんな風に義母さんと接するのは初めてだ。


今までは、他にもいた兄妹達が僕のことを毛嫌いし、僕が洗った皿でご飯を食べたくない、僕が使っている物に触りたくない、触られたくない。


と言い何も自由なことはできなかった。だから僕が義母さんと仲良くしていると必ず、後で何かしらしてきた。



父さんの朝帰りが続いたまま一ヶ月が過ぎた。


義母さんは体調不良で仕事を休む。




「こんな、寂しい思いをするために結婚したんじゃない・・・。」


学校から早く帰り、何も言わずに家へ入る。別にたいした意味はなかった、たまたま言うのを忘れてただけ。


そしたら思いも寄らぬ言葉が・・・否、前々からそんなことを考えているのは想像できてた。ただ、僕なんかがそれを聞いちゃいけないかったんだ。


聞かなかったことにして、このまま静かに自分の部屋に戻ろう。そう思って歩き出したのに。


ガチャッ


なぜかリビングのドアを開けてしまった。


「健太くん・・・。いつ帰ったの?早いね」


僕に気が付き椅子に座りながら言う。僕はリビングのドアに持たれかかって、心臓の動きを確認した、早い・・・。


自分自身、何をしようとしているのか分からないまま無意識に真剣な顔になる。


「僕だったら、そんな思いさせませんよ」


何を言ってるんだ僕は。自分の足が小刻みに震えてるのが分かる。


「健太くん・・・・・・。」


義母さんの初めて見る女の顔だった。








「「・・・・・・・」」


健太はニコやか、それ以外の三人は硬直状態、石になったようだ。


「え、?それでヤッちゃたの・・・・・?」


沈黙を破ったのは俺。


「まっまぁ〜」


ほんのり顔が赤くなる。


「ごっ、ご自分のマミーと!?」


陽一から、理解しがたい状況の確認


「そーなるね」


はははは。と照れ笑い


「「えー−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−―!!!!!」」


「突然でかい声出すなよ」


健太は耳をふさぐ。


「これが叫ばずにいられるか!?」


「俺、お前を見る目変わったわ」


「それで、その後どうなった?」


俺と陽一が興奮する中一人冷静に健太に聞いた。


「「・・・・・・」」息を飲む。


「別になんも変わんない、その後すぐ離婚して、もう何年もあってないし」


しれっとした感じで言う。


「あっ変わったと言えばこのあいだ、十二人目の妹が生まれました〜」


「「お前の父ちゃん頑張りすぎ!!」」


嬉しそうに発表する健太くんに、いっせいにツッコんだ。


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