最初は『暇』なだけだと思ってた。
「あぁ暇だ・・・ 」
と、1人の青年が大きなアクビをしながら、全方位投影型の丸い球体タイプのコックピットから暗い空間に瞬きが流れるのをボ〜っと眺めながら呟いた。
「何を言ってるんですか?わずか81光年の航海ですよ?」と、
「81光年って言ってもなぁ〜 暇なもんは暇なんだよ〜 」
「情けない… 本来の船長で在る貴方のお祖父様は、どんなに遠い星系の惑星へと向かう航海でも、色々と時間を有効活用されていましたよ。
例えば、行った先の古物屋で買って来た大昔に惑星地球で発行されたと言う書物をじっくりと読んでみたり、私とチェスをしてみたり、手慰みだと言って古い機械式時計を少しづつ部品を手作りしながらリペアしてみたり、宇宙海賊達を相手に『またには動かないと体が鈍るからな♪』と言い出して、突然、宇宙海賊の船に乗り込んで暴れ始めたりとされていました。
でも貴方はただボ〜っと宇宙貨物船の中から外宇宙眺めているだけではないですか?」
「だって、例え宇宙海賊が出て来ても、お前が一瞬で秒殺するし、俺することねーんだもん!」
と青年は丸い球体にモノアイのこの宇宙貨物船の端末相手に愚痴をこぼす。
この青年、つい20日ほど前にこの宇宙貨物船の本来の船長である祖父から、この貨物用宇宙船の船長代理を任されたのだ、いや、正確に言えば、配達依頼を受けた祖父が、惑星アタの衛星スペースドックで出航前準備をしている最中、突然、隣りの区画に停泊していた1,000m級宇宙貨物船が謎の大爆発をおこしたのが原因だったりする。
後日になって大爆発を起こした原因は判明したが、その原因は出航準備中の宇宙貨物船のエネルギージェレネーターが突然暴走し始めた上に、エネルギー臨界点を突破した事が原因らしいが・・・
まあ幸運な事にスペースドックに停泊させていた祖父の宇宙貨物船は、対物シールド(宇宙を彷徨うスペースデブリや、小さな隕石や小惑星から宇宙貨物船を守る物を指す。)が反応して無事だったものの、船外作業をしていた祖父は運が悪い事に対物シールドに弾かれてしまった事で、隣りの区画で起こった大爆発で区画を隔てていた隔壁が破壊され、その余波をモロに受け、隣りに停泊していた同型の500m級の宇宙貨物船まで衝撃波で吹っ飛ばされて激突、流石にデザイナーズベイビーで有り、通常の強化処置しか受けていないヒューマノイドよりも、遥かに身体能力が強化されていた祖父でも、生身では宇宙貨物船の強固な外装&対物シールドには勝てなかった様で、デザイナーベイビー特有の強固な強化骨格に無数のヒビが入り、肋骨なんかはボロボロに砕けた状態でスペースドック内のメディカルセンターへと緊急搬送されてしまったらしい。
惑星アタの地表で祖父に言い付けられた航海中に必要となる食料や水、そして航海中に必要だと思われる生活必需品を調達中だった青年の耳元に『ピピ!』と通信が入った時に聞こえる特有の通知音が聞こえた。
この通知音には様々な通知音が設定されており、この『ピピ!』と高い音で聞こえる短い通知音は、スペースドック関係からの通知音に設定していたのだ、通知音に気付き、右耳の後に装着していたデバイスに触れると、スペースドック内のメディカルセンターからの連絡だった。
「惑星アタのスペースドック内メディカルセンターの緊急医療室ですが、500m級ホライゾン型・宇宙貨物船バーラ号スタッフのダート・フォン・バシュルツ様でしょうか?」
「はい」
「先程、お祖父様のケンツJr.・フォン・バシュルツ様が、スペースドック682区画内で発生した爆発事故に巻き込まれて、重傷を負われて当メディカルセンターに緊急搬送されました。」
「はい?」と思い、スペースドックが在る方向を思わず仰ぎ見るが、状況が全く理解出来ない。
イヤ、爺さんが爆発に巻き込まれて重傷を負った事は今の説明で分かった・・・
しかし、あのデザイナーズベイビーである爺さんが・・・?
未開拓の惑星で、現地の初期原生動物である4mぐらいある6本足の生物の前足に踏まれた上に、2番目の足で遠くまで蹴飛ばされたのに、『あ〜驚いた、この惑星の原生動物か何かか?』と、初期原生動物に蹴飛ばされ固ぬい地面に頭から突っ込んでいた上半身を、文字通り『ズボッ!』と音を立てて引き抜いた爺さんがにっこりと笑いながらガシガシと頭に着いた砂を払い落とす姿を見て来た自分からは、あの祖父が『重傷を負う。』なんて事がマズ信じられない。
「そっ、それで祖父は?」
「現在、当メディカルセンターで緊急措置を取らせて頂いてます。
付きましてはダート様には御親族様として緊急措置後の様々な事で同意が頂きたい事と、今回、事故を起こされた1,000m級アルプ型・宇宙貨物船ゼクトのオーナー様の関係者の方が、賠償に付いてダート様とお話しがされたいとお待ちでして・・・」
「・・・・・」
「ダート様?… 」
「分かりました。今から向かいます。」
「ありがとうございます。場所は第600番区画の・・・」と、そんな具合でバーラ号唯一のスタッフとして登録されていた俺が急遽『バーラ号船長代理』として惑星アタの在る星系の3つ隣りの星系まで配送に向かっている訳である。
因みに爺さんは、僕がメディカルセンターに到着した時には・・・
「おお来たかダート、まあ儂はこんな姿になってしまったから今回の配達はお前一人で行って来い。」とバイオ再生槽の中で笑っていた。
なんでも事故の賠償金を使って爺さんのボディを最新型にフルリメイクするらしい・・・
ああこの世の中『デザイナーズベイビー』なんて存在は珍しくは無い、太陽系第3惑星地球から人類が宇宙に飛び出して、1800年余り、地球連邦宇宙軍の大規模な捜索により新たな『人類が居住可能な惑星』がいくつか発見され、人類の生活圏が地球と言うたった一つの惑星から複数の惑星居住可能惑星へと広がりを見せた。
さらに発展を見せたのが約1600年ほど前、そして1500年前ほど前に起こった歴史的出来事が『ソルド帝国』の建国である。
この帝国の基盤は、元は地球連邦宇宙軍あった。
地球連邦宇宙軍から大規模な惑星探索隊が派遣されたのだが、それは地球の人口が増えすぎたからだった。
そこで当時の地球の権力者や金持ち達、まあ一部の特権階級者である彼らが考えたのが、『増えすぎた連中を使って惑星探索にでも行かせたら良くない?しかも彼らが新しく人類が定住出来る惑星でも発見して貴重な資源でも発見出来たら、彼らから税として徴収出来るし一石二鳥だしな!』ってな感じで、当時の地球の全人類のなんと7割弱もの人口が、一部の特権階級者達の独断で宇宙開拓の旅路に追いやられてしまった。
ただまあ状況は一部の特権階級者達が思い描いた様には行かなかったが・・・
様々な困難の末に発見した人類が定住可能な惑星を、血の滲む思いで楽園へと環境を作り変えて来た宇宙開拓団、その過程で過酷な環境にも耐え得る人材の確保の為に、彼らは新たな決断をした。
それが『デザイナーズベイビー』と言う概念である。
まあ簡単な話し、自分達の次世代の人類には少しでも身体に負荷の少ない環境で生活して欲しいとの願いからだった。
新たな惑星で、やっとまともに人々が生活出来る様になって来た頃、惑星で収穫出来る様になった食料や、その惑星の地下から産出される様々な資源を地球の権力者達は『税』として地球に送る様にと要請して来た。
それに猛反発したのが、それぞれの旅団を率いて、命懸けで守って来た提督達だった。
『我々が幾多もの危険や困難を乗り越え、やっとたどり着いた新天地だ!地球でふんぞり返って偉そうにしている地球連邦の議員や一部の金持ち達の『税を納めろ』と言う無茶苦茶な命令を何故聞かねばならんのだ!我々はただ搾取されるだけの地球の奴隷では無い!』と一人の老提督が宣言すると、他の惑星へと向かって旅立って行った別の4人の提督達も次々と同じように『自分達の惑星の事は、自分達で決める!』と地球からの独立を宣言し始めた。
元地球連邦宇宙軍自体の軍事力を保ったまま、いつの間にか宇宙開拓に同行した元地球連邦宇宙軍の各師団長達が団結し、自分達の事を『ソルド帝国』と名乗り始めた。
当時、各方面に向かって旅立って行った地球連邦宇宙軍の師団長を勤めていた5人の提督が結集し、今後の地球との交渉を考え『代表者が必要なのでは?』と言う事になり、一番の年長者で他の各師団長からも信頼が厚かった『旧第二師団長:ソルド・マクシミアン』が一応の代表者となる事になったが、後に、この5人の師団長達の思いに賛同する旧地球連邦宇宙軍の高級指揮官達が集結した。
先ず最初に彼らが始めた事は、開拓団の一員として一緒に宇宙を旅して来た移住者達を様々な脅威から保護する事だった。
時には移住惑星で起きる様々な激しい自然環境から移住者を守り、時には旧地球連邦宇宙軍から離反して各星系間を我が物顔で闊歩し、掠奪を繰り返す様な『宇宙海賊』に成り下がった『元同僚』達から守り、特に酷かったのは『元移住者組み』だった。
移住環境に馴染めなかった彼らは、アウトローと化して掠奪者に成り下がったってしまった。
彼らは山賊や海賊となり、地道に開拓者として野山を開拓し、荒地を農地に変え、やっと麦やトウモロコシ、豆やジャガイモ等の農産物が育ち、収穫が終わった頃、彼ら『元移住者組み』が現れて全てを奪って行くのだ、しかも最悪な事に、やっと移住惑星の環境に適した農地として作ぬり変えた農地を、汚染物質で汚染させてから逃げるのだった。
せっかく開墾した農地を汚染物質で汚染させてから逃げるその理由は、
「自分達も頑張って土地の改良を行ったが中々上手く行かなくて、一緒に入植して来た家族も離散してしまった。
だから土地の改良が上手く行った連中には腹が立って全てを壊してやった。
『お前達も俺と同じ気持ちを味わえば良い!』思って。」と、捕縛された『族』の一味の一人が言っていたが、詳しく調べてみるとこの男は移民開拓団のとある家族の四男で、彼の家族達が汗水流して荒地を開拓している最中も様々な理由を付けは遊び呆けていた人物で、かなり自分勝手で我儘な性格だった様で、その証拠に彼が処刑された後、彼の元家族からも遺体の引き取りを拒否されたばかりか、彼の元家族は『愚か者の碑』として、彼が公開処置された広場に高さ10mも有る巨大な石碑まで建てた程だった。
今もこの石碑は惑星アタの中央公園の片隅にひっそりと立っている。
話しを戻すが、彼らが宇宙海賊団や惑星上の簒奪者達から移住者達を守り結束を固めた結果、その組織的構図が惑星地球の初期文明の頃に存在した『貴族社会』と良く似ていた事から、彼らが治安を治める地域を『帝国』と呼称し、貴族として階級を定め、その貴族階級の様々な役割り分担を割り振りしつつも、その版図を拡大していった。
最初はその帝国と言う貴族階級制構造も上手く機能していたのだが、『帝国制統治』を宣言して世代が2代目・3代目にもなってくると、やはり様々な軋轢が出て来るもので、その世代が5世代以上も続くと『帝国制統治』は完全に崩壊してしまっていた。
帝国と言う組織が崩壊して、新しく共和制へと移行したのであったが、実際にはそう簡単に事は進まなかった。
この星系を含む7つの星系で大規模な惑星間戦争が勃発したのだが、約80年にも及ぶ惑星間戦争が終結したのが約400年前の事である。
その争いも末期近くになると帝国側、共和側も深刻な人員不足を抱えていた。
その対策として再度重要視されたのが『デザイナーズベイビー』達であった。
この『デザイナーズベイビー』と言っても様々なタイプがいる。
恋人同士の生殖細胞を交配させた上で、戦闘に特化した遺伝子上の人為的強化を処置されて誕生した『ソルジャー』系、その中でも過酷な環境でのゲリラ戦を主目的とした『ビースト』系タイプなど、ちなみこのビーストタイプの彼ら彼女らは男女問わず人気者である。
話しは逸れたが、その他にも電子戦術戦に優れた『アナライザーズ』達、惑星上での近接戦闘に特化され強化された祖父達の様なタイプの者達も大勢いる。
まあ家の祖父がその『惑星上での近接戦闘に特化され強化された者』であり、通称『melee fighter』タイプと呼ばれており、祖父の戸籍登録データには、【ケンツJr.・フォン・バシュルツ/mf,p】と記載されており、僕の戸籍登録データには【ダート・フォン・バシュルツ/mf】と記載されており【p】の文字は付いてはいない。
祖父の【p】は、prototypeの【p】との事らしいが、結果的には祖父は戦争には参加する事は無かったらしい。
無論、『デザイナーズベイビー』達にも『人』としての『人権』は確約され守られていたが、それはダート達の世代になっても同様だった。
まあ『デザイナーズベイビー』達に関しても様々な問題が残っているのは事実ではあったが・・・
そして帝国政治体制側と共和政治体制側との争いが終結して約400年、ダートが暗い宇宙空間に流れる明るい光をボーっと眺めていると、宇宙貨物船バーラ号の端末球体が『ピー・ピ〜?』と妙な反応音を発して、突然亜空間航行から通常航行へと航法を変更し、周辺宙域に探査用レーダー波を放射し始めた。
万が一、この周辺宙域に宇宙海賊達が居た場合、宇宙海賊達の格好の餌食となり得る行為ではあったが、そんな事はバーラ号も重々承知な行動である。
「バーラ号、何が有った?!」
「帝国政治体制側で使われていた古い探査用の周波数を使って、船内を探索された形跡を確認、それも微弱なサーチ波であった為、相手方の現在地の割り出しに失敗、位置情報をロストし、該当宙域を古い帝国周波数を使用して探索中です。」
「どう言う事? 簡単に説明して!」
「この宙域にかって一緒に戦った仲間が居る可能性が有ります。」
「昔の帝国政治体制側の戦艦って事?」
「はい、その通りです。ダート、忘れている様ですが、私も今は輸送用貨物船として宇宙を渡り歩いていますが、元は惑星突入型強襲揚陸艦ですよ?」
「?・・・ そうだった! お前の正式な初代所有者は、帝国軍大尉だった曽祖父だったな、すっかり忘れてた。」
「まあダートですから、」
「相変わらず僕には容赦ないな〜」と呟くと、ダートは黙って口を閉じた。
この500m級ホライゾン型・宇宙貨物船バーラ号は、元々は惑星突入型強襲揚陸艦で、当時の曽祖父は貴族階級は『騎士伯』で軍での階級は中佐だったそうで、曽祖父が指揮していた部隊の旗艦がバーラ号だったぐらいしか僕は知らない。
そして帝国政治体制側と共和制政治側の戦いが終わり、共和制側が勝利した後、曽祖父が軍から退役する際に退職金の代わりに受け取ったのが、このバーラ号だったのだ、そして曽祖父は同じ様に退職金代わりに宇宙戦艦を受け取った連中と一緒に、バーラ号を使って星系間での輸送業を始めたのだった。
まあその誘われ方も、終戦間もない頃、軍の宇宙戦艦運用関連の職務についていた仲の良かった高級軍人に飲みに誘われたのが始まりだった。
「なあケンツ、お前、軍を退役したら一体何をして生活するつもりなんだ?」
「いや、まだ退役前の書類関係の雑務処理を片付けるのが精一杯で、何をするかなんて考える余裕も無いな〜、強いて言うならばバーラと一緒に息子を連れて宇宙空間をのんびりと旅でもするかな?」
「だったらお前に良い話しがあるぞ!」と言って同僚は酒に酔った赤い顔をニヤリとさせた。
「なあ物は相談なんだが、お前、俺たちと一緒に軍の旧輸送戦艦を使って『運輸業』を始めてみないか?」
「はぁ輸送業?・・・」
「ああ運搬と輸送に関する仕事さ、とりあえず帝国側と共和側の争いは終わった。」
「お前、『争いは終わった。』って・・・」
「まあケンツ、お前が言いたい事はわかるが取り敢えずは俺の話を聞いてくれ、俺達旧アタ星系群方面輸送師団は、全隊員で除隊後は『アタ星系の運輸』関連の仕事を飯の種にする事にしたんだが・・・
いかんせん俺達は『戦う事』に関してはまあ大丈夫だとは思うが、こと『戦闘』となれば話は別だ、そんな俺逹が宇宙空間で輸送艦丸出しで隊列を組んで航行してみろ・・・」
「まあ宇宙海賊達の『良いお客様』だな・・・」
「そこで帝国側にも宇宙海賊達にも『アタの狂犬ケルベロス』と呼ばれていたお前の部隊が一緒に行動していると知れ渡ったら、そう簡単には誰も好き好んで『戦う事が本職の狂犬ケルベロス』には戦いは挑まないだろう? しかもお前が指揮していた部隊は良くも悪くも悪名が轟いているからな、と言うわけで俺達と一緒に組んで宇宙輸送業をしないか? 第一、お前の部下達の生活はどうなる? それに俺達元輸送部隊の戦力だけじゃあお前が言うように宇宙海賊達に狙われたら一発で格好の餌食さ、しかしケンツ・フォン・バシュルツが率いる部隊が一緒だと宇宙海賊達もそう簡単には襲っては来ないはずさ、そんな訳でオレ達はお前と言う共同経営者が必要なんだ」と、元同僚から誘われたらしい。
曽祖父が率いる部隊の主な任務は、惑星への強襲揚陸が主な任務で、それなりに屈強な兵士達も強力な装備も充実していたらしいが、惑星上への強襲揚陸任務など早々にあるわもなく、以外と超巨大戦闘艦の護衛任務の方が多かったらしい。
まあ超巨大戦闘艦同士の戦いの最中、祖父達の部隊は嬉々として強襲を仕掛けて来た相手側の戦闘艦に逆強襲を掛けて乗り込み、早々に艦内を征圧して黙らせていた事からとの事だった。
またその事が縁となったかは良く分からないが、超巨大戦艦群を指揮する師団長から直々に補給部隊の護衛を依頼される事も多かったらしい。
その辺の事情もあり、元『軍の戦艦運用統括責任者』でもあった元同僚から相談を受けていたのだった。
因みに、曽祖父の退役時の最終的な階級は『准将』で、役職はアタ星系群方面惑星突入型強襲揚陸大隊大隊長で、強襲揚陸50隻、大隊隊員2,000名を率いていたらしい。
しかも、退役前にアタ星系方面の師団長兼元帥閣下から、
「退役事の退職金が中佐のままだと安かろう。お前は明日から准将だ!」と、退役3日前に突然通達されたらしい・・・
で、その退職金が強襲揚陸艦50隻と大隊隊員2,000名だったらしい・・・
おいおい強襲揚陸艦は兎も角、退職金としての隊員2,000名はどうなんだ?と途方に暮れていた時に例の元同僚から宇宙貨物船輸送業へのお誘いがあったらしい・・・
しかもその宇宙貨物船輸送業への出資者の1人が元帥閣下だとの事だった。
なんか曽祖父って元帥閣下に・・・・
「ダート、微弱な探索用レーダー波が発信されている場所が特定出来ました。どうもあのガス惑星上に漂う小惑星帯からの様ですね、更に近づいて探索してみます。」とバーラは船首をゆっくりと小惑星帯へ向けると、小惑星帯の中へと入って行く、
微弱に放出され続ける探索用レーダー波の発信元を辿り着いた先には、艦砲射撃の跡だと思われるレーザーの痕跡の穴が無数に開いた直径10km程の小惑星が漂っている。
バーラ号はゆっくりと小惑星に接近すること、小惑星の表面にレーダー波を照射して何かの痕跡を探し始めた。
程なくして小惑星の表面に接岸すると、
「ダート、船外に出る準備をして下さい。ああ、今回は船外活動用の宇宙服ではなく、ケンツが使っていたコンバットスーツの方が都合が良いでしょか?」
「えっ?!あんな時代遅れのスーツを?」
「はい、ダートは時代遅れだとは言いますが、万が一の事態が発生した場合、あのコンバットスーツの方が生存率は・・・」
「分かった分かった、大人しくコンバットスーツの方を着て来るよ、ただあのスーツ、着る時には真っ裸にならないといけないんだよな〜」とダートは船の外に出て行く為にコンバットスーツが収納してある格納庫へと向かう。
バーラ号の端末球体は、格納庫に向かうダートの後ろ姿を確認しながら改めて小惑星の地表に探査用レーダー波の照射を繰り返すと、小惑星の表層のとある場所に宇宙船を固定する為のアンカーを打ち込むと、小惑星の表面に重ブラスターでの砲撃を開始した。
『なかなか姿を見せてはくれませんね・・・ 貴女は・・・ 』とバーラ号の端末球体は独り言をこぼしながらも、ダートが入って行った格納庫の方をモノアイでチラリと確認する。
「バーラ、何とかコンバットスーツを着れたよ!」
「では行きますよ!」と、宇宙貨物船バーラの端末であるモノアイの球体がダートを船外へと連れ出す。
ダートがバーラ号の物資搬入用ハッチから船外に出て、ふわりと小惑星の表面に降り立つと、小惑星に空いた無数の穴が目立つ、
「ねえバーラ、この小惑星って戦艦の艦砲射撃の的にでもなったのかな?」
「ええ、その様ですね・・・ 」とバーラ号の端末は小惑星の表面に探索用のレーザーを放射しながら先に進み、ダートを艦砲射撃で空いた穴の中へと先導しながら『まあただの的としての艦砲射撃なら・・・ こんなに規則的には撃たないでしょうが・・・ 』と考えながダートを穴の中深くへと先導する。
「そろそろのハズですが・・・ ああココです。 ダート、持って来て頂いた重ブラスターでこの辺り一面を掘り返してみて下さい。」
「えっ⁉︎ この穴の中で重ブラスターをブッ放すの?」
「そうです!」
「穴・・・ 崩れない?」
「イイからサッサと重ブラスターを撃つ!!」
「はい!イエッサーマム!!・・・ 」と、ダートがバーラの指示通りに周辺に重ブラスターを撃ちまくっていると、
「ダート、ちょっと待って下さい。 あの周囲を重点的にお願いします。」と、ある場所を球体端末から照射されるレーザーポインターで指し示す。
「はいはい、全くバーラは人使いが荒いから・・・ 」などと溢しながらも、指示された場所周辺に再び重ブラスターを撃ち込み始めた。
そして、ダートが持って来た重ブラスターのエネルキーパックも残り一個となった頃になってやっとバーラから、
「ダート、そろそろ良いでしょう・・・ もう間も無くのハズです。 」と言ったと同時に、ダートの足の下が突然競り上がり、ポッカリと艦砲射撃で出来た穴の中に別の穴が現れた。
「ねえバーラ、この穴ってもしかして?・・・ 」
「はい、ダートが考えている様に宇宙船の人員用通路の出入り口です。」
「もしかしてバーラは知ってた?」
「探してはいましたが、私も詳しくは知ってはいません出た・・・ ただ彼女に教えられただけです。 ではダート、久しぶりに彼女に逢いに行きましょう。」とバーラに促されながら、ダートは艦砲射撃の砲撃で作られた穴の中に現れた謎の宇宙船の通路の中にビクビクしながらも足を踏み入れた。




