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第一話 目覚め

お久しぶりです。ずっと構想を練っていました。

この作品について少し……


・去年から考えていたので、世界のスケールがとてつもないです


・世界観重視でいきたいので、あらすじは少しずつ更新します


・主要キャラクターのキャラ紹介・作品内にでてくる文献・その他まとめなどは『アマリッカライブラリー(仮)』に書いていく予定です。さすがに本編には書ききれなさそうなので……


・一週間で二、三話ずつ投稿していく予定です

※あくまでも隙間時間に書くので、多く投稿したり、投稿できなかったりもあると思いますが、本気でやります


・『夢見た自由は遠すぎて』は一旦更新ストップしていますが、必ず再開します



以上です!これからよろしくお願いします!

まずは、第一話『目覚め』です。


 …………


 何かが聞こえる。

 それは、刹那の破裂音の群小。

 規則性のない無数の小爆発が四面を支配する。暴力的なまでの音の奔流が意識の行き先を曖昧にさせながら。

 その波濤にさらわれる感情は透明な徒波。


 …………


 何かが体に触れる。

 それは、刹那の刺突の群小。

 規則性のない無数の刺激が総身を支配する。暴力的なまでの何かの獰猛さが意識の行き先を顔へと明瞭にさせながら。


 …………


 目を開ける。

 広がるのはただひたすらの冥漠で光明ひとつない。

 光なき暗晦からくる何かが無数の爆発音を奏で、無数の透明な攻撃を私にもたらしている。不思議なことに体の芯まで響く振動も、ましてや痛みすら存在しない。


 ――私は、知っている。これは雨だ。

 

 波に揺蕩う意識が少しずつ凪ぎ、雨の存在を知覚する。

 爆発は雫が地上に落ちる音。攻撃は雫が体に落ちたもの。

 しかし、なぜこんなにも顔に感覚が集中しているのだろう。


 ――私は、見ている。あれは天だ。


 瞼に溜まる雨水が視界を揺るがし、淡い色の幻覚を見せる。

 もう一度目を瞑る。


 瞼の水が溢れだし頬を優しくなでる。

 空涙は私の心の表れのよう。

 

 …………


 透き通った雨音が聞こえる。温度のない雨水が体に触れる。

 鮮明な意識の中、雨の柔和な感覚が聴覚と触覚を支配し、自分が生きているということを強引に自覚させてくる。


 …………


 目を開ける。

 広がるのはただひたすらの冥漠で光明ひとつない。

 光なき暗晦から降り注ぐ雨は無数の攻撃を私にもたらしている。不思議なことに体の芯まで響く振動も、ましてや痛みすら存在しない。


 ――私は、夢中ではないのか。


 何かが口内に少し溜まっている。

 舌の裏に薄く触れている何かはまったくの無味で触覚だけがその存在を認識させる。

 口に意識を集中させると、自然と自分が鼻で呼吸をしていることがわかる。鼻腔を通る空気は無臭で、口内に溜まる何かの風味は感じられない。

 己の体内に入り込んだ異物をどうもせず、私は意識を体の表面へと移動させる。


 雨水の感触が総身を支配している。顔は重点的に。首、胸、両腕、両手、背中、腹、両足にいたるまで、まんべんなく。


 ――私は、立っているのか。


 空涙が頬を伝い他の雨水と混ざり合いながら、首、肩を通って両手の指の先までたどり着く。それは中指と薬指から離れ落ちそうになるが、重力に逆らうように力強く私の体にしがみつく。


 臆病な水滴を振り解こうと軽く指を広げる。

 指先の違和感が消え、代わりに両手の平に浮遊感があることに気づかされる。

 小指から順番に浮遊感をつかむように手を握りしめる。しかし手中にそれを示す何かが存在しているような感触はない。あるのは指の隙間から雨水が溢れだすような感覚だけ。


 両手の力を緩め、右肘を軽く曲げる。そして流れるようにゆっくりと右手の平を天へ向かわせる。


 ただひたすらの冥漠に、一抹の肌色がうつる。

 手の形をした無傷のそれは私にとってはひどく眩しく、瞬きの回数が意図せず増える。


 自分の右手の指を広げると、目の前の肌色の手の指も広がる。視界に入った手が自分のものだと自覚し、手の平を自分に向ける。甲には雨が当たる新鮮な感覚がもたらされる。しかし手の平にこびりついた浮遊感が抜けることはなく、視界にうつった右手にそれらしきものはない。


 本当はその先にも体がつながっていたかのような、何かが足りない、落ち着かない感覚。


 右手の甲に落ちた雨が重力に従って手首を伝い肘へと向かう。私はその過程を見続ける。視線だけでは追いきれなくなり首を動かす。

 天から目をそらしつつあるが、肌色の向こうの景色は依然として暗晦。どこまでも光明なき世界に私の心はなおも揺らぐ素振りを見せない。


 肘の先まで降りてきた雫は肌色から離れ落ちそうになるが、重力に逆らうように力強く私の体にしがみつく。

 微かな震えを纏った臆病な水滴を振り解こうとせず、私はただ眺め続ける。

 やがて世界の法則に抗うことができなくなったそれは、私の体を離れ、暗晦に溶けていく。


 水滴が向かった先には透き通るような肌色が二つ。揺らぐ暗晦に浮かぶ足の形をした無傷のそれは、私にとってはひどく眩しく、右足を半歩下げる。

 すると目の前の右側の足の形をしたそれも半歩下がる。視界に入った足が自分のものだと自覚し、右足を元の位置に戻す。


 足が動くたび、そこを起点として大きな波紋が広がっていることに気づく。

 周囲の闇は無数の小さな波紋を描きながら、同士で混ざり合う。

 しかし、不公平にも小さな波紋は私が生み出す荒波に飲み込まれ、その存在がなかったことにされる。

 あまりにも無情な淘汰を見ても私の心が揺らぐことはない。


 ――私は、本当に生きているのか?


 己の純真無垢さに辟易するべきだということを自覚しているが、心は空っぽ。

 自分の表情を確認するため波紋の奥にうつる景色を見ようとしても、そこにあるのはただひたすらの冥漠で光明ひとつない。


 右手の指で自分の頬に軽く触れる。

 指には弾力、頬には点々とした五つの刺激が感じられる。


 手を離し、左手を添えて器をつくり、雨水をためて水鏡をつくろうとする。

 手の側面を隙間なく密着させると、雨のせいか、より己の冷たさが身に沁みる。


 微かに震えている器に視線が吸い寄せられる。

 私には震えの理由が理解できない。思い当たる節があるわけもない。ただ、雨で冷えたであろう手を温めようと体が誤作動を起こしているのだろう。

 しかし、そんなつまらない理由でも、私の視線はなぜか器に吸い寄せられる。


 ぼんやりと器の中を眺めていると、気づけばそこに水たまりができていた。

 自分の表情を確認しようと、その水鏡を真上からのぞき見る。


 うつっていたのは、あやふやな輪郭をした“なにか”。

 ぼやけながら揺らぎを見せる水鏡の奥の存在は、私の疑問に答えることはない。


 ――私は……


 手を離し、役割を終えた器の中の水を足元に落とす。

 重力によって水の塊は勢いよく暗晦にたたきつけられ、壮大な破裂音を奏でる。透明だったはずのそれは、刹那の間に闇に溶け込み、同時に大きな波紋で周囲を飲み込んでいく。


 自分の表情を確認しようと波紋の奥にうつる景色を見ると、そこには感情のない人形の顔が朧げにひとつ。

 揺曳しながらこちらを見つめてくる平静な面差しは、なけなしの明かりによって私の視界に入ってくる。


 …………


 顔を上げる。

 広がるのはただひたすらの冥漠で光明ひとつない。


 ――私は……


 覚えのない場所と、覚えのない顔。


 …………


 自分の名前も、過去も、嗜好も、なにもかも、


 ――私は、知らない。ここはどこだ。


 そしてたどりついた、ひとつの結論……


「私は――だれだ……」




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