⑦盲目の聖女と騎士団
「本日、魔物調査に同行する事になりました美優です。足手まといにならないよう頑張りますので宜しくお願いします」
返事がない屍のようだ・・・
などの冗談を言っている場合じゃないわね。
「失礼、この調査隊を任されたルキウスだ。現れた聖女が予想以上にひ弱そうだったので、皆どうやって護衛したら良いのかで頭が一杯で挨拶が出来なかったようだ。すまんな」
ルキウスはそう言うと手を差し出してきた。
ジャッジの能力で彼に悪意がないことは解ったが、まだ信用できる相手ではないので、握手など何が仕掛けているか解らないため、見えないふりをして頭を下げた。
ルキウスは気まずそうに差し出してた手を静かに下げていった。
「聖女様は私と行動する。君達の邪魔にならないよう配慮するつもりだ」
ルーチェ先生がフォローに入って下さったが未だに壁が消えていない。
一度、ジャッジで調べて見てもいいのだけど、まだ複数人を対象に出来るほどの力は私にはなかった。
「すんませ~ん、俺としては聖女様には森に同行されるよりも討伐後に向かうので娼館で待っていて欲しいのですが?」
沈黙を破ったかと思えば何、この男は(怒)
このふざけた男を対象に調べて見るとどす黒い感情が感じ取れた。
はい、彼はアウトです。
「すみません、ルーチェ先生。場所間違えてませんか?この方は騎士ではなく酒場にいるゴロツキか盗賊の残党ではないのですか?」
私に突っかかってきた男から怒りの感情が膨れ上がってきた。
ならばと私は彼を小馬鹿にした発言を続けた。
最終的に「罪人も連れて行かなければはならないなんて騎士の方々も大変ですね」と言う発言にぶちギレ私に殴りかかってきた。
彼の拳が届く前に風の魔法で彼を弾き飛ばす。
樹にぶつかった時に[ボキっ!]と、音がしたような気がしたけど気のせいと言う事で。
「そこまでで宜しいかな?お前らも解っただろ、聖女様のお力を。聖女様もこのくらいで勘弁して貰えると助かるのだがな?」
「それだけですか?」
「???」
「彼の発言や行動は常識の範囲以内なのでしょうか?この国では許される行動なのでしょうか?」
「私共も聖女様のお守りをしろと言われて苛立っていたもので勘弁して頂けると助かる」
どうやらこのまま何のお咎めもないようね。
これ以上、騒いでもいいことないので、取り敢えずこの場はここまでとしましょう。
「解りました。本日は宜しくお願い致します」
この場は、これで治めた。
でも、私の中では彼らは大臣派なのではと言う疑いが強くなった。
今日の魔物討伐はルーチェ先生以外信じられる人はいなそう。
突っかかってきた男を仲間の騎士達が回復魔法にて治療し終えると、魔物調査へ森に向かうこととなった。
~ ルキウス視点 ~
「本気ですか?聖女と言っても召喚されたばかりの女性が魔物討伐が出来るわけありません。しかも盲目など森すら歩く事が出来ないではないですか」
「だからだ、如何にあの女が使い物にならないか知らしめなくてはならない。これは決定事項だ!貴様らには意見など求めていない。
まぁ、盲目の娘を連れて歩くなど大変そうだから第二騎士団も同行する事となったから安心するが良い」
何が安心するが良いだ、このくそ大臣が!
今回の召喚に大臣が関わっていないと言う話は聞いていた。
どうせ、己と関係ないところで召喚された聖女が気に食わなく難癖を着けるために無理矢理連れていくのだろう。
しかも、今回の調査は大臣とズブズブの関係と言われている第二騎士団との行動だ。
何をしてくるか解らない。
「解りました。ですが、今回は私共が事前に言い渡された魔物調査でございますので、第二部隊は我が下で動いて貰いたいと思います」
「な、何を言っている、!第二部隊は第二部隊で・・・」
「いや、部隊は統一した方が良い。全部隊の隊長を君に任せる。報告も君が行うように、勝手な行動をした者等包み隠さずだ」
王太子が間に入って下さって助かった。
大臣のあの悔しそうな顔からして何かするつもりだったのだろう。
だが、まだ油断できん。
あの大臣が簡単に諦める訳がない。
必ず第二部隊を使って何かしてくるはずだ。
「皆、聞いてくれ」
部下に今回の魔物調査について話をした。
皆からも否定的な意見しか出てこない。
それもそうだ、今回の魔物調査には聖女様のお守りと言う条件付きで、尚且つ味方の半分は裏切る可能性が高い。
そして、成功しても当たり前だが、聖女様を少しでも傷付けてしまえば、どうせ我が部隊だけ責任を取らされる事になるのだろう。
こんなハイリスクローリターンな仕事に文句がでないものなどいない。
後は聖女様の性格しだいだな・・・
魔物調査当日、第二部隊部隊長は隊長を崩したと休むと連絡が入った。
予想通りだ。
あの無駄にプライドが高いアイツが俺の指示に従うなどプライドが許さなかったのだろう。
予想外に裏切られたのは聖女の方だ。
魔道士の方と一緒に現れた聖女様は美しく聖女そのものを形にしたような女性であったが、何処をどう見ても儚げで、そっと触れなければ簡単に折れてしまうのではないかと心配になるような女性であった。
このような女性を魔物調査に連れて行かなければならないとは先行き不安となり言葉が出せないでいた。
第二部隊の馬鹿が聖女に突っかかっていった。
まさかもう問題を起こすとは意表を突かれたが、更に予想外なのは聖女の強さだ。
馬鹿男を魔法で吹き飛ばした。
アレは肋が数本折れただろう。
しかし気になるのは聖女の力だ。
アレほどの威力の魔法を無詠唱で放ってきた。
本当に召喚されて一月しか経っていないのか。
しかも方向を間違える事もなく。
聖女様は目が見えないと聞いていた。
目の前の聖女を見る限り嘘ではなさそうだ。
ならば、聖女特有の能力か何かか。
聖女様が強いと言う事は嬉しい誤算だが、先ずはこの馬鹿をどうにかしないといけない。
今、ここで処罰をすれば、第二部隊がどんな行動を取るか解らない。
ここはなぁなぁに済ませて後で咎めるとしよう。
だが、まさか聖女様から文句を言われるとは思わなかった。
この聖女様は見た目と違って少し勝ち気のようだ。
どうにか聖女様に納得して貰い・・・
いや、聖女様は納得していない。
折れてくれただけだろう。
どうにかこの場は丸く治める事は出来たが、聖女様からは疑われてしまったはずだ。
俺らがくそ大臣の仲間じゃないかと。
まぁ~いい。
聖女様には疑って行動して貰った方がやりやすい。
さて、この後第二部隊がどのように動いて来るのか・・・
そして大臣からどのような罠が仕掛られているのか・・・
俺達は聖女と共に裏切り者達と一緒に魔物調査へと森に入る事となった。




