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⑥盲目の聖女と図書員

~ 美優視点 ~


王太子殿下の訪問から数日後、魔法の先生としてルーチェと言う一人の男性を紹介された。

ルーチェ先生は王太子殿下と同級生だそうで、今回の教師役を引き受けて下さった。


私は彼の事を知っている。

彼は召喚の時に私の手を握ってきた男だ。

確かに召喚の術者と王太子殿下は同級生だったと教えて貰っていた。


「あの、確か魔法学園の図書員のお仕事をされているとお伺いしましたが宜しいのですか?」


「ええ、そちらの方は辞めてきましたので大丈夫です」


辞めて・・・

まさか王太子殿下が辞めさせたのでは?

もしそうならば私のせいだ。


「申し訳ございません。私のせいで辞めることになりまして・・・」


「いやいや、聖女様のせいではありません。前々から魔法学園から辞めて欲しいと言われていたのです」


この日から魔法の訓練を始めるようになった。

晴れの日は王城の庭先で、雨の日は室内で体内の魔力を練る訓練を日々行っていた。

訓練から一週間後、私の前には大木が倒れていた。


「ルーチェ先生、どうしましょ・・・」


「あ、ああ、気にしなくて大丈夫だよ、ユーリには切断の許可を得ているから」


良かった。

先生に言われる通り風の刃を繰り出したら、まさか樹を切り倒すとは思いもしなかった。

王城内の樹なので、何かお咎めがあるのではと焦ってしまった。


「それよりも、一週間其処らでここまで成長するなんて驚いたな」


「先生の教えがいいからです」


ルーチェ先生は夢の中で神様から能力の訓練を施されている事を知っている。

しかし、そこではあくまでも能力の訓練をしているとだけしか言ってなかったが、本当は暇な時に魔法の訓練も行っていた。

なので、人より少し覚えが早いのも少しズルしているようで何だか申し訳ない気持ちで胸が痛む。


「ところで神様との特訓も順調ですか?」


「はい。今覚えている能力の精度や範囲の向上を図ったり新しい能力を学んだりしています」


「新しい能力?」


「はい、『エコー』と言う能力です」


私はルーチェ先生に能力を疲労しようと『エコー』を唱える。

そして私は杖を手放し庭を散策した。

壁際で止まって見せたり、先程の倒木に座って見せたり、庭石を跨いで見せたりして見た。


「まさか見えるのかい?」


「うーん、見えると言いますか、音の反射で物体の目測が出来るようになりました。これで杖なしでも歩く事が出来ます」


「・・・」


「ルーチェ先生?」


「ごめん、ごめん。聖女の能力とは凄いなと驚いたよ。この調子なら一月後に行う東の森の魔物調査に参加出来るんじゃないかな?」


「魔物調査ですか?」


「ああ。王都から東へ少し進んだ所に森があるのだけど、最近その森から魔物がちょこちょこと溢れ出す事が起きているらしいので森へ調査兼魔物の間引きを行う事となったようなんだけど、その調査兼討伐に聖女様にも参加して欲しいそうなんだ」


「魔物調査と討伐ですか・・・」


「早々に怖いかも知れないが、私も同伴して聖女様をお守りするので安心して欲しい」


「解りました。其までにもっと魔法を鍛えたいと思いますので宜しくお願いしますね」


魔物の調査と討伐・・・

上手く出来るか心配になる。

どうせ、あの大臣が捩じ込んできたのに違いない。

ルーチェ先生が『守る』と言ってくれただけで、不安でざわめいていた心が一気に落ち着いた。

心配こどと言えば同伴する騎士団の人達がどこまで信じられるかであった。



~ ルーチェ視点 ~


「召喚成功おめでとう」


召喚成功の褒美を受け取りに王城に訪れ帰ろうとしていたところ、この国の王太子から呼び止められた。


「まさかユーリ殿下に話しかけられるとは、お会い出来て光栄でございます」


「ははは、君からそんな丁寧な言葉が聞けるとは驚きだよ。昔みたいにお前と呼んでくれていいのに」


「私のクビを切り落としたいのですか?」


「まぁ、学生時代はその気持ちもあったかな」


王太子のブラックジョークほど笑えないものはない。

しかもユーリは常に笑顔でいるが心の中は完全にイカれている。

冗談ではなく本当にクビを切り落としかねないから笑えない。


「冗談はさせおき、俺なんかに貴重な時間を割いて話し掛けてきたと言う事は何か用があるのでしょう?」


コイツが利がなく動くなど考えられん。

私が召喚の儀式の術者に選ばれたのもコイツが関係しているに違いない。

でなければ、一図書員にオファーが来るわけがない。


「酷いな、私だって懐かしい友の顔をみたい時だってあるのだけどな。まぁ、用があるのは確かだけど」


「いいから要件を言って下さい」


「ああ、君が召喚した聖女様に魔法を教えて貰いたいんだ」


「何故、私が?」


「あの後、聖女様は神様に会いステータス画面が確認出来たそうだ。そこには『音の聖女』と書いてあったそうだよ。音の聖女としてのスキルは神様が鍛えてくれるらしいが、魔法については人に鍛えて貰うよう言われたそうだ」


神様が?

本当か?

だが、コイツの性格はひねくれており、虚言や甘言には簡単には騙されるようなヤツではない。

ならば、本当に神様に会ったと言うのか・・・


「しかし、何故私が?」


「このままでは、大臣の思惑通り聖女様は偽物として扱われてしまうだろう。誰が大臣の息がかかった者か分からないから大臣の派閥でないと100%解っている者にだけしか頼めない」


「解らんぞ、俺も大臣派だったらどうする」


「それなら、何が何でも彼女を聖女にしたがるだろ?聖女様の行く末によっては君の立場も危うくなる。今の図書員という仕事を維持していくのも難しい程ね」


コイツの言っている事は正しい。

それに恐らくだが、コイツは学園からリストラされ掛けている事も知っているのだろう。

なるほど・・・

選択肢であって選択肢でない。

俺には選択出来る立場でないのだ。


「解った、学園の方にも話をしなければならないから少し待って貰えないか?」


たかが図書員で学園側からうざがわられている俺が辞める言っても大喜びされるだけだろうが、ここは今まで雇用して頂いた恩として挨拶くらいはしないとと思い学園に挨拶に伺ったらまさか引き留められた。

あれほど、いつ辞めるのかと顔を会わせる度に嫌味を言ってきたのに・・・

ああ、社交辞令か。

面倒臭いやり取りだ。

俺は引き留められる手を無視して図書員を辞める事にした。


「引き留められただろ?」


再び王城に訪れるとユーリは何処かで覗いていたかのように聞いてきた。


「何故、解った?」


「簡単だよ。今や君は聖女様を召喚させた大魔道士様だ。そんな男を引き留めたいと思うのも当たり前だよ」


なるほど。

言われて見ればそうだな。


「それと少し状況が変わった。大臣が翌月に行われる東の森の魔物調査に聖女を連れて行くと提案してきた」


「一月後だと?早すぎる!」


「ああ、そこで聖女にマイナスイメージを付けて、今一度召喚の儀式を行うつもりなのだろう」


この国の大臣・・・

この国の魔道士達から話を聞くとかなり評判が悪いようだ。

しかし今回の召喚は世界各国から注目された儀式だ。

そこで召喚された聖女の敵になるなど、どういった神経をしているのだろうか。


「その討伐に私も参加させて欲しい」


「最初からそのつもりだよ」


一月後など早すぎる・・・

と、思っていたのだがどういう事だ?

彼女の呑み込みの早さに驚かされる。

彼女から風魔法の属性だと聞いたので風魔法の訓練を行ったところ一週間後に大木を切り倒した。

一月後の討伐までに覚えられればラッキーと思っていたのだが、こんなに早く覚えるとは驚きだ。

恐らく、彼女が言う『神との訓練』の時も魔法の訓練も行っているのだろうが、それでも早すぎる。

しかし、嬉しい誤算であった。


これなら魔物調査までに更にレベルアップ出来るだろう。

懸念があるとすれば大臣の息が掛かった裏切者の騎士がどれだけいるかだ。

下手をすれば全員が裏切者のかもしれない。

油断は出来ないな・・・

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