④盲目の聖女と大臣
~ 美優視点 ~
一夜明け、能力を試して見る。
『ノイズ』の能力により徐々に遠くの声が聞こえてきた。
最初は様々な声や音が混ざって雑音にしか聞こえなかったが、意識して絞ると声や音を選べた。
かなり便利な能力らしい。
そして、神様との出会いは夢でなかった。
ここが異世界である事は本当らしい。
「ミユ様、朝食をお持ち致しました」
この声はメイ。
確か昨日、メイから専属の従者だと告げられていた。
朝食の準備を終えたメイに昨晩の神様とのやり取りを話した。
信じて貰えるか疑心暗鬼であったが能力については国王に説明しておいた方が良いと思った。
メイは「解りました」と部屋を出ていく。
試しにと食事を取りながらメイの足取りを追跡してみた。
すると、メイは一人の男性に私の話を伝えるとメイは来た道を引き返してきた。
今度は男性の方を追跡すると男性は別の男性に伝えた。
大丈夫かな?
伝言ゲームみたいに話が少しずつ逸れて違う意味になってしまったらどうしよう・・・
最終的に国王に「聖女は神様だ」なんてなっていたらどうしよう。
『真か?』
『はい。そのように聞いております』
『大臣を呼んできてくれ』
『畏まりました』
どうやら、国王に話がぶれる事なく伝えて貰ったみたい。
このまま大臣との会話も盗み聞きしてみた。
『大臣よ、やはり彼女は聖女のようだ?』
『陛下、目の見えない聖女などあり得ません。大方、庇護して欲しくて無能ではと思い虚言を吐いているに違いません。私が見てきましょう』
『そうか?私にはそのような者には見えないが、お主の好きにするが良い』
大臣がそのまま部屋を出ると足音はこちらに向かっているようであった。
しかし大臣の話っぷりだと彼は私の事を良く思っていないように思える。
ここは『ジャッジ』の能力を試すチャンスに思えた。
大臣は部屋に訪れると「ほー、盲目と聞いていたが、なかなか上玉ではないか」と呟いた。
はい、この男は敵確定。
ジャッジの能力関係ない。
こんな発言をする人と仲良くなんかなりたくない。
「聞いたのだが、昨夜、神と出会い能力を教えて貰ったとか?そのようにしなくてもワシが面倒見てやろうではないか」
何故だろう、目が見えないが何かジロジロ見られているような気がして気色悪い。
『ジャッジ』を使用して見ると明らかに大臣は私に悪意を抱いていた。
召喚されたのが盲目である私であった事が気に入らないのでしょうね。
彼は私に夢の話が真なら能力を見せてみよと侮蔑的な口調で述べてきた。
命令形な所が少しイラっと来たが私は彼に信じて貰えるよう『サイレント』を発動させた。
大臣は突然に周辺の音が消えた事で慌てだす。
しまいには『何をした!』と騒ぎしてきた。
私は数分、大臣を音のない世界に閉じ込め、『これが音のない世界です』と能力について説明した。
これで信じる以外の選択肢はないはずなのだけど、大臣は『どんなトリックを使った!』と怒鳴り叫び、頑なに私の能力を否定してくる。
う~ん。
この人では話にならないわね。
だって、この大臣という男は最初から聞く耳を持とうとしないのだから。
「突然に攻撃してくるとは何て野蛮な女だ。それに、そのような力でどう魔物と戦うと言うのだ!」
証拠を見せろと言うから能力を披露したのに、この人にとっては突然と変換されてしまったらしい。
「私が示したのは『神様と出会った』事です。魔物や魔王と戦う力ではありません。それに、それらの力はこれから鍛えていくのですから、今示す事は難しいです」
「ふん!いちいち言い訳ばかりするものだな。そこまで自身の身の安全が心配とはな。まぁ、私共も召喚した負い目があるため無下にはしまい。なんならワシが面倒を見ても良いぞ?」
また、薄気味悪い視線を感じる。
これも『ジャッジ』の能力のせいだろうか、大臣から寒気がするような眼差しを感じる。
私はお断りすると、「まぁ、助けて欲しくなったら何時でも来るが良い」と寒気がする視線のまま大臣は立ち去った。
「メイさん、あの方では陛下に間違った報告をする恐れがあります。出来れば信頼の出来る方に説明をしたいのですが?」
「畏まりました」
良かった。
メイさんから悪意は感じられないし、彼女の返事から虚偽は感じ取れなかった。
彼女は味方である事で少し安堵する事が出来た。
~ 大臣目線 ~
無能な男が召喚したから無能な者が現れたのだ。
私が責任者となっていればこんな事が起きなかったのだ。
召喚の儀式は我が国に伝わる秘術。
ゆえに今までも魔王討伐に向け召喚の儀式を行って来た。
なのにこのような事になるとは・・・
ワシは召喚の儀式の責任者として選ばれた。
最初の術者は魔法省の部長を勤める男でワシの部下であった。
成功した暁には副大臣の地位を保証してやったのに無惨にも失敗しおった。
あやつ等、使用するのではなかった。
次は失敗が許されぬと多額の金を払い最高の魔道士に頼んだが、これもまさかの失敗に終わってしまった。
二度の失敗により召喚の儀式は封印され私は責任者から外されてしまった。
しかし、各国からの要請により今一度召喚を行う事となったが、私は三度目の召喚に関わる事は出来なかった。
そんな中で現れた者が聖女の訳がない。
絶対に彼女は失敗作でなくてはならないのだ。
国王陛下より件の女が神と出会い、能力を教えて貰ったと言う。
やはり私の考えは正しい。
件の女は捨てられたくない一心で虚偽を述べてきおった。
盲目の女の部屋を訪れると、件の女は目が見えないというだけで見た目はなかなか上玉だ。
スタイルもなかなか私好みだ。
なんなら私が面倒を見てやっても良い。
私は女に証拠を示すよう伝えると、突然に攻撃をしてきた。
何て女だ!
この女は最初から自分の能力を知っていて、私共が求める能力でないから神と出会ったなどと嘘を述べたに違いない。
陛下にはこの女は危険だと述べておこう。
そして、その後の面倒は私が見てやろうではないか。
グフフ、強気な女はほど面倒の見概があるというものよ。
ワシは最後に女の身体を目に焼き付け部屋を後にした。
~ メイ視点 ~
「お前には聖女様の専属従者として聖女様の護衛をして貰いたい」
「御意!」
国王陛下からの命は盲目の聖女の護衛であった。
それと共に盲目の聖女の真意を確めて欲しいと頼まれた。
盲目の聖女は本当に見えないのかと疑いたくなるくらいスムーズに歩いている。
杖で確かめながら歩いているが杖の意味はないと思う。
恐ろしく盲目の聖女は本人が気付いていないだけで、何らかの能力が与えられているはず。
翌日、朝食をお届けすると盲目の聖女から自信の力について神様から告げられたと言う。
神が本当にいるかは解らないが、盲目の聖女のステータスに『音の聖女』と書かれていたと言う。
私は盲目の聖女に言われた通り上司に国王陛下に告げて欲しいと頼んだ。
恐らく、このやり取りは盲目の聖女に聞かれているのだろう。
もし、盲目の聖女が聖女として認証されないようであれば、是非に暗部に勧誘したい。
大臣が盲目の聖女について国王陛下に報告後、私は陛下に呼び出された。
「お主の見解を聞こう」
「盲目の聖女の能力については偽りがないと思われます。そして、盲目の聖女が『音の聖女』だとすると、ののやり取りも聞かれている可能性があります」
「あるほど、ならば私共は聖女様に誠実でいなければならんな」
「はい。それと盲目の聖女は大臣の事をよく思っておりません。国王陛下に虚偽の報告をする恐れがあるから他の者にも説明したいと申しておりました」
「他の者か・・・」
「私としてはユーリ殿下が適任かと」
「息子か・・・わかった、息子には後日向かわせるとしよう。お主は引き続き聖女の護衛をせよ」
「御意!」




