⑫盲目の聖女と新しい世界
慈愛の聖女の魔物調査が行われた。
慈愛の聖女とは三ノ宮弥生の事であった。
三ノ宮弥生が振る舞う愛嬌や可愛らしい容姿からユニアース城内で慈愛の聖女と呼ばれるようになった。
その慈愛の聖女も盲目の聖女と同様に魔物の調査を行わせるべきだと言う話が上がり魔物調査を行うこととなった。
と言っても以前行った森は魔物の森とは思えないほど清められていたため、違う場所で調査を行う事となった。
その結果は圧巻であった。
騎士が進むも現れるのは魔物の死体だけであった。
全て慈愛の聖女である三ノ宮弥生が魔物を討伐していた。
彼女が言う彼女の能力は『天罰』で、悪意がある者に天罰を与える事が出来ると言う。
そして魔物も悪意があるため天罰にて討伐したらしい。
ユニアース国内での慈愛の聖女の人気は凄まじいものとなっていた。
もう一人の聖女が姿を表さなくなった事にも気付かないほど慈愛の聖女に夢中になった。
そんな中で慈愛の聖女の従者の一人が毒殺された。
誰もが疑った。
犯人はもう一人の聖女ではないのかと。
噂は噂を呼びあっという間に聖女犯人説は世界中に広がる事となった。
そして、国交会議の日を迎える事になった。
国交会議には慈愛の聖女と護衛の騎士の姿があったが盲目の聖女の姿はなかった。
マグワリア国王
「これはどういう事かな。容疑者である聖女の姿が見えないようですが?」
ユニアース国王
「ミユ殿は現在立て込んでおり、来られるのが遅れておるが、信用できる者がミユ殿の側にいるため安心して頂きたい。まずはヤヨイ殿の話を聞いておくのはどうだろうか?」
ユニアース国王の提案に他国の王が承諾したため、弥生の護衛騎士が従者毒殺事件について語り始めた。
「聖女様は普段から一人でお茶を飲むのは寂しいからと私共皆と一緒にお茶を飲んでおりました。あの日も同様に皆でお茶をしようとしていたところ、先に口をつけた彼女が突然苦しみ出したのです。私は急ぎ医師を呼びに行きましたが間に合いませんでした。そして、医師の診察から毒が盛られていた事が解ったのです」
「では、聞くが何故そこでミユ殿の犯行であると思ったのだ。調査をしたところお主が犯行はミユ殿だろうと、ミユ殿を探し回っていた事が解った。噂の現況はお主だ。お主には説明する責任がある」
「私は見たのです。皆が部屋に戻る前にミユ殿がヤヨイ様の部家の近くにいたのを。ヤヨイ様とミユ殿の部屋は離れておりヤヨイ殿の部屋の近くに来る用などありません」
「なるほど、お主の主張は解った。ではミユ殿に話を伺うとしよう」
マグワリア国王
「そのような事をしても無駄だろう。盲目の聖女は有罪無罪関係なく次に発する言葉は否定しかない。ならば、時間の無駄ではないかな?」
ユーグリア国王
「そうでもないぞ」
ユーグリア国の王の言葉と共にユーグリア国王が写し出された映像の隣にもう一人が写し出された。
写し出されたのは盲目の聖女であるミユであった。
各国の王達がざわめく。
盲目の聖女が写し出されている背景はユーグリア国王がいる背景と同じであり、二人が同じ場所にいる事が解ったからだ。
マグワリア国王
「これはどういう事かな?」
ユニアース国王
「これについては私の方から説明しよう。実は慈愛の聖女に心酔し過ぎる者が多くなったため、ミユ殿の安全を考えユーグリア国にて静養して頂いていたのだ」
ユニアース国王とユーグリア国王だけで話し合って決めた事なのでこの事を知るものは殆どいなかった。
美優の姿が最近見えなくなっても世間の目は弥生に移り変わっていたため気付く者はいなかった。
各国の王達が自身が騙されていた事に憤慨をしているなかで一人の男が尋常ではない汗をかき、目を左右に動かし同様を隠せずに立ち尽くしていた。
目撃したと言う弥生の護衛であった。
「お主はミユ殿を見掛けたと言ったが、その頃はミユ殿は既にユーグリア国にいた。これはどういう事か述べよ」
「も、申し訳ございません。私の勘違いで別の者だったかもしれません」
「ほーミユ殿は黒髪であり、似たような色の者などいないはずだが?」
「それは・・・」
「まあ良い、実は同じ成分の毒を闇市場で購入していた者が解った。お主はそこに置いてある小瓶に見覚えはないか?」
「・・・」
「言っとくが虚言は無理だぞ。証拠は全て押さえてある。お主の言葉から期待しているのは謝罪と理由だけだ」
「も、申し訳ございません」
「お主は聖女付きの護衛ではないのか?何故に聖女に毒を盛った?」
「私は聖女様に毒など盛っておりません。聖女様が普段からミユ殿が最初に召喚されたから二番手の私など不要なのだわと泣いておられたので可哀想に思い・・・」
「それで従者に毒を盛ったと言うのか?」
「・・・はい。しかし、私は死なない程度に調整したはずでした。まさか死ぬとは・・・」
「アイスノースト国王よ、こちらの騎士は貴殿が派遣して下さった騎士だが、我が法で裁かせて頂きたい」
アイスノースト国王
「そのような不届き者は如何様に処分してくれ」
「これにて聖女従者毒殺事件は解決した。では、聖女育成について話し合おう」
ユニアース国王が議会の進行を試みようとしたが、一つの国から待ったが入った。
進行を止めたのはマグワリア国王であった。
マグワリア国王曰く、このまま聖女弥生をユニアース国に置いて置くのは危険としょうし、マグワリア国で面倒を見ると言い出した。
ユニアース国王は提案を却下しようとしたが、最終的に弥生の「マグワリア国に行きます~」と言う一言で決まってしまった。
ユニアース国王は謀られたのだ。
彼らの本来の目的は聖女を得る事であった。
美優の疑いは晴れたが、弥生はマガワリア国に行くことになった。
~ 弥生視点 ~
私の能力は『天罰』などではない。
そんな如何にも聖女らしい能力が私に宿る訳がない。
私の能力は『毒生成』。
如何にも私らしい能力であった。
魔物の討伐も簡単であった。
生成した毒霧を魔物に嗅がせただけで簡単に魔物が次々と倒れていった。
能力を『天罰』と偽った事で世間は私の事を慈愛の聖女と讃え始めた。
ああ、その歓喜な顔を歪めたい。
私は邪な気持ちを我慢した。
まだ駄目。
もっと、もっと希望を持たせてからの絶望こそが私が求める快感なのだからと毒を精製するのを我慢しながら皆に笑顔を振り撒いた。
「マグワリア国ですか~」
この国の大臣からマグワリア国に行かないかと誘いを受ける。
マグワリア国の方が豊かで民を多いと伝えられた。
迷うことなどない。
民が多いと言うことは多くの者が絶望する姿が見れると言う事。
ならば行かないてはなかった。
ただ、マグワリア国に行くだけではつまらない。
折角だから少しだけ悪意をばら蒔く事にした。
私の事を酔狂的に陶酔している護衛の騎士。
私がやった事は護衛の騎士に少し弱みを見せるだけであった。
後は簡単であった。
護衛の騎士は暴走し、毒を用意してお茶に毒を混ぜた。
しかし、護衛の騎士は生半可過ぎる。
騎士が入れた毒の量では致死量には足りない。
仕方がないので私が同じ毒を精製し加えて上げた。
問題なく従者の女性が亡くなった。
私は苦しみながら悶える彼女を見ながら恍惚な笑みを浮かべる。
私の笑みに騎士は気付いていない。
気付いていたのは悶えている従者の女であった。
彼女の苦しみを見ながら思い出す。
数日前に彼女から幼馴染みと婚姻を結ぶこととなったと笑みを浮かべていた姿を。
あの笑みから地獄のように苦しむ姿など私が興奮しない訳がない。
結局、護衛の騎士の罪が暴かれ些細な悪意は簡単に葬られてしまったけど、どうでもいい。
これからもっと世界に悪意をばら蒔く事が出来るのだから。
ああ、今でも忘れられない。
従者の苦しむ姿が。
私は彼女の苦しむ姿を思い浮かべ久し振りに自慰で絶頂を迎える事が出来た。
~ 美優視点 ~
世間が弥生さんの事を慈愛の聖女と呼び始めた頃、私は馬車の中にいた。
美優の能力によってユニアース場内で美優への悪意を抱く感情が増えつつあったからだ。
美優がユーグリア国に行く事は両国の王達の承諾を得られていた。
だからだろうか、従者のメイも一緒に着いて来てくれる事になった。
ニーチェ先生もいる。
この二人が側にいてくれるだけで鼓動は平常でいられた。
しかし、ユニアース城が遠ざかるに連れて美優は寂しさが込み上げて来ていた。
「ミユ様、どうかされましたか?」
メイが心配そうに話し掛けてきた。
私は寂しさを見すかれないようにメイに笑みを浮かべた。
「なんでもないわ。ただ、遠ざかるユニアース城を見ていたら少しね。私の目が見えていたらもう少し皆に信用されたのかなって」
私の問いにメイは沈黙するしかない。
しかし、私は言いたい。
「異世界は障害者には厳しいようです」と。
第1部完となります。
障害者を題材にするなど不快に思った方がおりましたらすみません。
ですが、転生される者の全てが健全者などと言う訳はないのではないかと思いこの題材にして見ました。
個人的に好きなところは神による差別に対する嘆き部分でしょうか。




