第8話:事務所のスターたち
朝風呂の騒動を切り抜けた聖奈は、急いで支度を済ませ、朝から事務所に顔を出すためタクシーで向かった。頭の中では、悠斗がまだ朝風呂のことを引きずっている。
「聖奈ちゃん、朝風呂やばかったね…。聖奈ちゃんのすべすべなお肌の記憶が頭から離れないよ…。」
「やめてよ! 二度と思い出さないで。今日は仕事なんだから、静かにしてて。」
事務所に到着し、エレベーターで上階へ。ロビーに足を踏み入れると、スタッフが慌ただしく動き回り、ソファエリアには華やかな女性たちが集まっていた。聖奈がマネージャーに挨拶しようとした瞬間、悠斗の声が頭の中で爆発した。
「うわあああ! 聖奈ちゃん、ここって…! え!? あの人、人気女優の石崎すみれじゃん!? マジで!?」
聖奈が視線を向けると、確かにドラマで活躍中の石崎すみれがコーヒーを手にスタッフと談笑している。彼女は冷静に「うん、すみれさんだね」と呟いたが、悠斗の興奮は止まらない。
「すみれさんって呼んでるの!? やばい、俺、大ファンなんだよ! 『恋の断崖』の主演だろ! 聖奈ちゃん、ちょっと近づいてよ! 見たい!」
「近づくって何!? 仕事で来たんだから、勝手に動かないでよ!」
聖奈がマネージャーと打ち合わせを始めようとすると、別の方向から笑い声が。振り向くと、トップモデルの藤井リナが雑誌を手にソファに座っている。
「うおおお! 藤井リナ!? あのスタイル抜群のモデルだ! 聖奈ちゃんの事務所って美女だらけじゃん! 俺、興奮しすぎて頭おかしくなりそう!」
「騒がないでよ。ここは仕事仲間が集まる場所なんだから。私だって普通に挨拶するだけ。」
聖奈がそう返すと、ドアが開き、大物歌手の宇川ヒカルが颯爽と入ってきた。トレードマークの赤いスカーフを巻いた彼女が聖奈に気づき、「おはよう、聖奈ちゃん」と笑顔で声をかける。聖奈が「おはようございます」と返すと、悠斗が頭の中で絶叫した。
「宇川ヒカル!? あの『ハートビート・ナイト』の宇川ヒカルが聖奈ちゃんに挨拶!? うわっ、俺、耐えられない! 聖奈ちゃん、握手してよ! お願い!」
「握手って何!? 失礼でしょ! 興奮しすぎてバカになってるよ!」
聖奈は平静を装いながらマネージャーと話していたが、悠斗の声が止まらない。
「だってさ、石崎すみれ、藤井リナ、宇川ヒカル…こんな美女たちと一緒なんて、俺の人生ピークだよ! 聖奈ちゃん、誰かに話しかけてよ! 俺、間接的に会話したい!」
「間接的って何!? 私の仕事なんだから、黙って見てなさい! 勝手にテンション上げないで!」
その時、石崎すみれが近づいてきて、「聖奈ちゃん、昨日のライブ見たよ。あのターンかっこよかったね」と優しく声をかけてきた。聖奈が「ありがとうございます!」と返すと、悠斗がまた大騒ぎ。
「うわあああ! 石崎すみれが聖奈ちゃんに話しかけてる! 俺のアイデアのターン褒めてる! 聖奈ちゃん、俺のこと言ってよ! 『ファンの悠斗くんのおかげです』って!」
「言うわけないでしょ! うるさいから黙ってて!」
聖奈は笑顔ですみれと軽く会話を交わしたが、頭の中では悠斗とのバトルが続いた。すると、藤井リナが立ち上がり、聖奈に近づいてきた。
「聖奈ちゃん、次回のファッションイベント、一緒に出るよね? 楽しみにしてるよ。」
「うん、リナさん、私も楽しみです!」と聖奈が答えると、悠斗がさらにヒートアップ。
「藤井リナと共演!? 聖奈ちゃん、やばいよ! あの長い脚と完璧な顔…俺、死にそう!」
「死にそうって何!? 落ち着いてよ、死にたいなら勝手にどうぞ!」
さらに宇川ヒカルが加わり、「聖奈ちゃん、新曲聴いたよ。ライブでコラボしない?」と提案してきた。聖奈が「え、ほんとですか? 嬉しいです!」と目を輝かせると、悠斗が絶叫した。
「コラボ!? 宇川ヒカルと聖奈ちゃんが!? 俺の夢が叶う瞬間だよ! 聖奈ちゃん、俺のおかげだよね?」
「おかげって何!? あなたは騒いでるだけじゃない! 頭の中で静かにしてて!」
聖奈は美女たちに囲まれながらプロの笑顔を保ちつつ、頭の中では悠斗の興奮に振り回されていた。
「ねえ、悠斗くん。あなたが騒ぐと私が困るんだから、ほんと黙っててよ。」
「ごめんって! でもさ、聖奈ちゃんの周りって美女ばっかりで…俺、もっと見ていたいよ…。」
「私の体から出てってくれれば、見せてあげてもいいわよ!」
事務所での朝は、女性スターたちとの出会いに悠斗が大興奮し、聖奈の平静を保つ努力が試される時間となった。美女だらけの空間で、二人の奇妙な共存は新たな盛り上がりを見せていた。