第31話:握手会の余波と絆
新曲『Cosmic Pulse』の発売記念握手会は大盛況だった。聖奈は緊張でどう対応すればいいか分からなかったが、悠斗が彼女の声でファンと直接話し、自然で心温まる対応を見せた。その「神対応」がSNSで話題になり、「聖奈ちゃんの優しさやばい」「握手会で感動した!」とファンの投稿が溢れ、聖奈の人気がさらに急上昇。グループのセンターとしての注目度が一気に高まった。
だが、その反響が他のメンバーに微妙な影を落とした。握手会の翌日、スタジオでの練習中、彩花が何気なく呟いた。
「聖奈ちゃん、SNSでめっちゃバズってるね。私たちの握手会の話、全然出てこないけど…。」
怜奈も少し尖った声で、「まあ、聖奈ちゃんセンターだし、神対応って言われてるしね。私なんて『可愛い』しか言われなかったよ」と付け加えた。真央は黙っていたが、視線がどこか冷たく感じられた。聖奈は「えっと…みんなもすごかったよ!」とフォローしようとしたが、言葉が空回りし、気まずい空気が漂った。
その夜、次のスケジュールの打ち合わせでメンバーが集まった時、感情が爆発した。彩花が「聖奈ちゃん、最近目立ちすぎじゃない? 私たち置いてかれそう」と冗談めかして言ったつもりが、怜奈が「ほんとそう。目立ってるの聖奈ちゃんだけだし」と本音を漏らし、真央が「グループなのに、聖奈ちゃんの話題ばっかりでさ」と追い打ちをかけた。聖奈は戸惑いながら反論した。
「私が目立とうとしたわけじゃないよ! 握手会だって、ファンの人が勝手に…!」
彩花が「でも、聖奈ちゃんの神対応って褒められてるよね? 私たちは何?」と声を荒げ、言い争いに発展。最終的に聖奈が「じゃあ私が悪いって言うの!?」と叫び、部屋を出てしまった。
自宅に戻った聖奈は、ソファに座り込んで落ち込んでいた。メンバーの言葉が頭を巡り、胸が締め付けられる。素直に謝ればいいと分かっていても、嫉妬された自分が悪いのかと混乱し、言葉が出てこない。頭の中で、彼女は呟いた。
「悠斗くん…私、みんなと喧嘩しちゃった。握手会で褒められたのが、こんなことになるなんて…。謝りたいけど、素直になれなくて…どうしたらいいか分からないよ…。」
悠斗が静かに返した。
「聖奈ちゃん、大変だったね…。俺が握手会で喋ったから、聖奈ちゃんが褒められたの俺のせいでもあるのかな。ごめんね。でも、落ち込まないで聞いてよ。」
聖奈は膝を抱え、「ううん、あなたのせいじゃないよ。私がちゃんとみんなのこと考えてあげられなかったから…。でも、謝るの怖いよ」と呟いた。
悠斗が優しく諭すように続けた。
「聖奈ちゃん、喧嘩ってさ、みんなが大事に思ってるから起きるんだよ。彩花ちゃんも怜奈ちゃんも真央ちゃんも、聖奈ちゃんのこと大好きで、グループのこと考えて言ったんだと思う。嫉妬したってことは、聖奈ちゃんが輝いてるの認めてるってことだよ。」
聖奈が小さく返した。
「そうかな…。でも、私が目立って迷惑かけたみたいで…。」
悠斗が穏やかに続けた。
「迷惑じゃないよ。聖奈ちゃんが頑張ったからグループが注目されてるんだ。みんなだって、心の底では分かってるはずだよ。ただ、気持ちがぐちゃぐちゃで言葉がキツくなっちゃっただけ。謝るの怖いかもしれないけど、聖奈ちゃんが素直に『ごめんね、大事だから仲良くしたい』って言えば、きっと分かってくれるよ。俺、聖奈ちゃんの優しさ知ってるから、絶対大丈夫だって信じてる。」
聖奈は悠斗の言葉に目を閉じ、少し考え込んだ。湯船での優しさや握手会の助けを思い出し、彼の言う通りかもしれないと感じた。胸のモヤモヤが少し晴れ、頭の中で呟いた。
「悠斗くん…ありがとう。あなたに言われると、なんか落ち着くよ。私、明日みんなに謝ってみる。素直になれるか分からないけど、頑張るよ。」
悠斗が嬉しそうに返した。
「聖奈ちゃん、頑張って! 俺、聖奈ちゃんがみんなと仲良くしてるの見たいよ。ファンとして、グループの絆が大好きだからさ。応援してる!」
聖奈は小さく笑い、「うん、頼りにしてるよ。」
その夜、聖奈は握手会での神対応で人気が高まった代償としてメンバーとの軋轢に直面したが、悠斗の優しい言葉に励まされ、謝る決意を固めた。落ち込む彼女を支えた悠斗の存在は、二人の絆をさらに深め、聖奈に素直さを取り戻す一歩を踏み出させていた。




