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第3話:シャワー室の騒動

ライブが終わり、聖奈は汗だくの体をさっぱりさせるため、楽屋の奥にあるシャワー室へと向かった。タオルと着替えを手に持つ彼女の頭の中では、悠斗がまだライブの興奮を引きずっている。

「聖奈ちゃん、今日のライブ最高だったよ! あのターン、俺のアイデアがバッチリ決まってさ、マジで感動した!」

「うん、確かに良かったよ。あなたのおかげで新しい魅力が出せたかもね。でも今はちょっと静かにしてて。疲れたからシャワー浴びるよ。」

「シャワー? おお、マジか! 聖奈ちゃんのシャワーシーンって…!」

聖奈はドアを閉め、服を脱ごうとした瞬間、悠斗の言葉にピタリと手を止めた。

「ちょっと待って。『聖奈ちゃんのシャワーシーン』って何? あなた、まさか変なこと考えてないよね?」

「え、いや、変なことじゃないよ! たださ、俺、聖奈ちゃんの体にいるわけじゃん? ってことは、シャワー浴びるところ見られるってことで…ちょっとワクワクするっていうか…。」

「ワクワク!? 何!? 気持ち悪い! 絶対に見せないから!」

聖奈は慌てて服を握り直し、頭の中で悠斗をキッと睨むような口調で続けた。

「私の体なんだから、私のプライバシーは私が守るよ。あなたは勝手に入ってきた侵入者なんだから、見る権利なんてない!」

「えー、でもさ、せっかくこうやって一緒にいるんだしさ、ちょっとくらい…ねえ? ファンとして聖奈ちゃんの全てを知りたいっていうか…。」

「全てって何!? 裸は絶対ダメ! アイドルの裸はファンに見せるものじゃないよ!」

聖奈はシャワーを諦めるわけにはいかないが、悠斗に自分の体を見られるのも嫌だった。彼女は一計を案じ、目を閉じタオルを体に巻いて隠しながらシャワーを浴びようと決めた。

「よし、これなら見られない。あなたは頭の中で目を閉じてて。分かった?」

「え、タオル巻くの? つまんないなあ…。せっかくのチャンスなのに…。」

「チャンスって何!? 大体、あなたがそんな得しないといけないわけ!」

聖奈はタオルを巻いたままシャワーの蛇口をひねり、慎重に水をかけた。だが、悠斗は我慢できず、頭の中でぶつぶつ言い始めた。

「ねえ、聖奈ちゃん、温かくて気持ちいいねえ…。やっぱ直接見たいなあ…。」

「何!? 見たいって…見せるわけないでしょ! 頭の中で歌でも歌ってなさいよ! 『星屑のラビリンス』の2番!」

「えー、星屑の夜に~迷い込んで~♪って…いや、歌っても集中できないよ! 水の音とかさ、タオルの感触とかさ、めっちゃリアルで…!」

聖奈は顔を真っ赤にしながら、シャワーを急いで済ませようとした。だが、タオルがずれて谷間が少し見えた瞬間、悠斗が大興奮で叫んだ。

「うおっ! 聖奈ちゃんの谷間見えた! 白くてすべすべで…やばい、マジでやばい!」

「きゃっ! 何!? 見ないで! 頭の中で目をつぶって! 今すぐ!」

「無理だって! 感覚で分かっちゃうんだもん! 俺、ファンとして幸せすぎる…!」

「幸せって何!? 私が不幸なんだけど!」

聖奈は慌ててタオルを直し、シャワーを切り上げて服を着始めた。悠斗はまだ頭の中で「谷間! 谷間!」と騒いでいる。

「ねえ、悠斗くん。あなた、本当に最低ね。アイドルのプライバシーをこんな風に楽しむなんて。」

「ごめんって! でもさ、聖奈ちゃんのファンだからこそだよ! 全部大好きなんだから…。」

「そんなこと言っても許されないから! とにかく、私の体から早く出てってよ!」

シャワー室を出た聖奈は、鏡に映る自分を睨みながら呟いた。

「こんな目に遭うなんて、最悪…。」

「俺は最高だったけどね…。」と悠斗が小さく返すと、聖奈は頭の中で「黙れ!」と叫んだ。

二人の攻防はシャワー室でも続き、聖奈のプライドと悠斗のファン心がぶつかり合う。こんな奇妙な共存がいつまで続くのか、聖奈は心底疲れ果てていた。

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