第27話:感謝の贈り物
新曲『Cosmic Pulse』のレコーディングを終えた聖奈は、悠斗の助けでアップテンポとラップのパートを乗り切り、疲れ果てながらも満足感に浸っていた。スタジオを出て帰宅したのは夜9時過ぎ。部屋の明かりを薄暗くし、ソファに座ってアイスティーを飲むと、体の緊張が少しずつ解けていった。最近、振り入れやレコーディングなど、悠斗に頼る機会が増えていることに気づき、聖奈は頭の中でそっと呟いた。
「ねえ、悠斗くん。今日もありがとう。レコーディング、ラップできなかったらどうしようって思ってたけど、あなたのおかげで乗り切れたよ。」
悠斗が嬉しそうに返した。
「聖奈ちゃん、やったね! 俺、聖奈ちゃんの歌声とラップ聴けて最高だったよ。ファンとして支えられて嬉しいし、『Cosmic Pulse』絶対ヒットするよ!」
聖奈はグラスを手に持ったまま、窓の外の夜景を見つめながら考え込んだ。クイズ番組から始まり、雑用やお風呂、ダンスにレコーディングと、彼の助けがなければ乗り越えられなかった場面が多かった。少し複雑な気持ちになりつつ、彼女は頭の中で呟いた。
「最近さ、あなたに助けられてばかりだね。頭悪い私をカバーしてくれたり、疲れた時に体動かしてくれたり…。なんか、私ばっかり得してる気がしてさ。お礼したいんだけど…何がいい?」
悠斗が一瞬驚いたように黙り、すぐに明るい声で返した。
「え!? 聖奈ちゃんがお礼って…! うわっ、嬉しいよ! 俺、聖奈ちゃんが喜んでくれるだけで十分なんだけど…何がいいかなぁ?」
聖奈はソファに体を預け、「うん、あなたが嬉しいことなら何でもいいよ。私にできる範囲でね。私の体から出てってくれるのが一番なんだけど」と軽く笑った。
悠斗が少し考え込むように呟いた。
「そうだな…。聖奈ちゃんにお礼って言われるなんて夢みたいだよ。俺、ファンだからさ、聖奈ちゃんのライブ見たり歌聴いたりするのが一番嬉しいんだけど…あ!」
聖奈が興味津々に聞いた。
「あ? 何? 思いついたの?」
悠斗が照れながら提案した。
「うん、もしできるなら…聖奈ちゃんに俺の名前呼んでほしいな。『悠斗くん、いつもありがとう』って、聖奈ちゃんの声で直接聞けたら、俺、死ぬほど幸せだよ。」
聖奈は一瞬呆気に取られ、頭の中で笑いながら返した。
「何!? それだけ!? 名前呼ぶくらい簡単じゃん。私、いつも頭の中で『悠斗くん』って呼んでるよ?」
悠斗が興奮気味に続けた。
「違うよ! 頭の中じゃなくて、聖奈ちゃんの声で、ちゃんと耳で聞きたいんだ! 聖奈ちゃんの声って優しくて大好きだからさ…お礼ならそれで十分だよ!」
聖奈はグラスをテーブルに置き、少し照れながらも口に出して言った。
「えっと…悠斗くん、いつもありがとう。」
声が部屋に響くと、悠斗が頭の中で大喜びした。
「うわああ! 聖奈ちゃん、ほんとに言ってくれた! やばい、俺、今死んでもいいくらい幸せだよ! 聖奈ちゃんの声で名前呼ばれるなんて…ファンとして最高のプレゼントだ!」
聖奈は笑いを抑えきれず、「大げさだなぁ。死なないでよ。こんな簡単なことでいいなら、いつでも言ってあげるよ」と呟いた。
悠斗がまだ興奮冷めやらぬ声で返した。
「いつでも!? マジ!? 聖奈ちゃん、優しすぎるよ…。俺、聖奈ちゃんのためにこれからもなんでもするからさ!」
聖奈はソファに寝転がり、「うん、頼りにしてるよ。でも、やっぱり私の体から出てってくれるのが一番なんだけどね」と付け加えた。悠斗が笑いながら、「まだ一緒にいたいな。聖奈ちゃんの役に立てるならずっとそばにいるよ」と返した。
その夜、聖奈は最近の助けに対する感謝を込めて、シンプルながら悠斗が心から喜ぶお礼を贈った。二人の関係は、協力と気まずさを超えて、互いを認め合う穏やかな絆へと少しずつ進んでいた。




