第15話:朝の追及
波乱に満ちた一日を終え、疲れ果てて眠りに落ちた聖奈は、深い眠りの中で何も気づかず朝を迎えた。目覚まし時計の音が鳴り、彼女はゆっくりと目を覚ます。ベッドの上で体を起こし、ぼんやりと部屋を見回すと、何か違和感に気づいた。
「ん…? 私、昨日そのまま寝たはずなのに…どうしてバスローブ着てるの?」
聖奈は目をこすりながら自分の体を見下ろし、白いバスローブが体を包んでいることに驚いた。昨夜、服を着たままベッドに倒れ込んだ記憶しかない。頭の中で疑問が膨らみ、すぐに悠斗に意識を向けた。
「ねえ、悠斗くん。起きてるよね? 私、昨日寝る時こんな格好じゃなかったよ。…まさか、私が寝てる間に何かしてないよね?」
頭の中で、悠斗の声が一瞬途切れた後、明らかに動揺したトーンで返ってきた。
「え!? 聖奈ちゃん、お、おはよう! うわっ、寝てたんだね! 俺、えっと…何もしてないよ! うん、全然何も!」
聖奈は目を細め、バスローブの紐を握りながら追及を強めた。
「何もって…怪しいよ、あなた。昨日、私が寝てる間に何したの? 正直に言いなさいよ。私、バスローブ着て寝る習慣なんてないから!」
「習慣って…いや、聖奈ちゃん、ほんと何もしてないって! ただ、えっと…寝てる間にちょっと動いただけっていうか…。」
「動いた!? 何!? 私の体を勝手に動かしたの!?」
聖奈はベッドから立ち上がり、バスルームに目をやると、湯船に残った水とラベンダーの香りが漂っていることに気づいた。彼女の声が一気に鋭くなった。
「お風呂!? あなた、私が寝てる間にお風呂入ったの!? 私の体で!? 何!? 正直に言わないと許さないよ!」
悠斗は頭の中で慌てふためき、言葉を濁しながら答えた。
「う、うわっ、ごめんって! 聖奈ちゃんが寝ちゃって、俺、動かせるって気づいて…。で、お風呂入ってみただけだよ! ほんとそれだけ! ファンとして聖奈ちゃんの体感じてみたかっただけで…!」
「感じるって何!? 私の体を勝手に使って楽しんだの!? 最低よ、あなた! 何したか全部言いなさい!」
聖奈が頭の中で怒りを爆発させると、悠斗は観念したように白状し始めた。
「えっと…まず部屋歩いて、アイス食べて、それからお風呂入って…。聖奈ちゃんの裸見て、おっぱい触ってみたりして…。でも、ほんとそれだけだよ! 悪気はなかったんだって! ファンとして幸せ感じたかっただけなんだから!」
「おっぱい触った!? 何!? 私の体でそんなことして…気持ち悪い! 最低よ!」
聖奈は顔を真っ赤にしてバスローブを握り潰し、頭の中で悠斗を追い詰めた。
「あなた、私が寝てる間にそんなことするなんて信じられない! 私の体なんだから、勝手に使うなんて許さないよ! 他に何したの!? 隠さないで全部言いなさい!」
「隠してないって! ほんとにお風呂入って触ったくらいだよ! 聖奈ちゃんの肌とか髪とか…全部最高だったから、つい…。ごめんって! でもさ、俺、聖奈ちゃん大好きだから…。」
「大好きって何!? そんな言い訳通用しないよ! 私が疲れて寝てる間にあなたが楽しむなんて、最低の最低だよ!」
聖奈はベッドに座り込み、頭を抱えた。バスローブの感触とバスルームの香りが、悠斗の行動の証拠として彼女を苛立たせる。
「悠斗くん、あなた、私の体から出てってよ。こんなことされるなら、もう一緒にいたくないよ…。」
悠斗はしゅんとして、小さな声で謝った。
「ごめん…。聖奈ちゃん怒るの分かるけど、俺、ファンとして夢が叶って嬉しかったんだ…。…ほんと最高だった…。」
「最高って…私が最悪なんだけど! 二度と寝てる間に動かさないでよ!」
朝の静寂は、聖奈の怒りと悠斗の動揺によって一気に破られ、彼女の追及は二人の奇妙な共存に新たな緊張感をもたらした。