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26 無事に終わりホッとした

 この作品は実体験を基に書きましたが、時期や名前は変えております。差し障りがある方もいますので、ご了承下さい。

19日目

 好子ちゃんが親の会社の要件でローマに行かなければならない、と朝食の時に俺に話し、皆に別れを告げた。そして中庭のテーブル席で朝食を食べているジャミールの処に行って何か話し、ハグして戻って来た。

 俺は彼女を伴って事務所に行った。ブリジットがいたので、彼女の空港迄の送迎を頼んだ。ブリジットとも好子ちゃんはハグをして、別れを惜しんだ。


 9時、ベルサイユ宮殿見学の為、ピエールが運転するバスに乗り込む。見知らぬイタリア人男女4名が既に乗っていた。早速鵜飼君がフランス語と英語を交えて話し掛けた。

 俺は運転席のピエールの後ろに座り、彼と世間話をしていたので、鵜飼君が何を話しているのか、詳細は分からなかったが、イタリー訛りのフランス語が耳障りだった。

 ピエールに聞いたら、姉妹と姉の娘と娘の彼氏でベルサイユ宮殿の見学に来た、と教えてくれた。娘がフランス語と英語が話せるので、娘との会話が中心になっていた。



 40分程でベルサイユ宮殿に着いた。目の前にはバスが何十台も停まっており、大変な人出である。観光名所なので、アフリカ、中近東からであろう出稼ぎが頻りに絵葉書、風船、飛行機の玩具を観光客相手に売っている。日本の団体ツアーも何組か見える。

 金色に輝く門から敷地に入り、建物の見学を始める。専門ガイドの説明を受けながら見学。建物自体にはさほど感銘を受けなかったが、庭園は称賛に値する。フランス文明の一つの頂点である。フランス式庭園の典型。壮大な敷地の中に見事にマッチしたその美しさは、写真でも表せ切れない、形容し難い壮麗さである。


 午前中で見学を終え、午後は自由時間となった。学生達からパリへ向かってくれと頼まれた。聞くと、未だ土産を買い終えていないからだと。ピエールに頼んで、学生の希望地に送ってくれるようお願いした。学生には19時半迄に帰って来るよう伝え、解散となった。俺は奈緒ちゃんと美智ちゃんに付いて来てくれと言われた。二人はフランス語に自信がないから仕方ないか。



 19時半、RER駅のバス停で、オルガとアレクセイと一緒になった。オルガの親戚がパリ近郊に住んでおり、今帰って来た処だと言う。アレクセイが彼のバックの中からバッジを取り出し、唐突に俺に渡した。聞くと、陸軍空挺部隊大尉の階級バッジだと言った。

 信じられない。だって彼の体格は身長こそ180cmを超えているが、体重は恐らく100kgはあると思う。丁度プロレスラーの棚橋と同じだな。これで空挺部隊? 本当なのかね。確かに軍関係の仕事だとは聞いていたけど。士官だから中隊長クラスだと思う。陸上自衛隊じゃ、エリート部隊だよね。その中隊長クラスか。滅茶苦茶エリートじゃん。



 20時宿舎に戻った。食堂と中庭ではガエル達がビュッフェとソワレ・ダンサント(ダンスパーティー)の準備の為、テーブルを外に運んでいるので学生を呼び、一緒に手伝った。

 外で食事となるのでホールを見ると、ディスプレイがトロピカル風に飾られている。一人二人とフランス人が集まって来た。思い思いにテーブルに着くが、良く見るとクラス毎にグループが出来上がっている。先生方は先生方でテーブルを囲んでいる。洋の東西を模わず、私の大学と同じですね。


 赤ワインが次々と配られる。少し遅れて料理が運ばれて来た。牛肉の香ばしい匂いに誘われたのか、見慣れた顔が次々に到着する。フランセーズが娘さんと夫のジャック・バレ氏と共にやって来たので、俺がクラスの学生を代表して、月曜日のディナーのお礼を言った。

 ヴァシリーにエミルを紹介された。ルーマニア人でティミショアラ在住のジャーナリストだと言う。初め、分からなったが、向こうは覚えていたらしい。盛んに15日のダンスパーティーの事を喋っていて、その内俺も思い出して来た。最後迄踊っていた奴だ。そうだよ、そうだ。確か短パンで踊っていたのが一人いたんで、記憶していたんだ。

 彼も月曜のロシアの徴兵制復活のソースを探っていたのかな?あの時はヴァシリーが一日中飛び回って取材していたし、同じジャーナリストだから、共同歩調で動いていたんだな。その辺の処を聞いてみたんだけど、お茶を濁すだけで、教えてくれなかった。ヴァシリーも同じだったから致し方ないね。


 22時ソワレ・ダンサント開始。先生方も生徒と一緒に踊っている。フランソワーズが旦那は踊れないから、一緒に踊ってくれと言うので、一緒に踊った。年の頃は50代と思うんだけど、中年の色気があると言うか、10代、20代と違って少し崩れた体形がエロくて、妙にそゝるんだよね。俺、熟女好きじゃないから念の為、申し添えます。俺としてはジェイと踊りたかったんだけど、ジェイは参加していなかった。てっきり参加するものだとばかり思っていたから、ビュッフェの段階でいなかったので大層落胆した。電話もSNSも教えてもらわなかったから、脈はないんだろうな。

 最期の夜のお別れ会で、皆踊っている。鵜飼君はガエルと陳君はディアナと踊っている。フローリアンは美智ちゃんと、ジャンは芳子ちゃんと踊っている。そして理恵ちゃんがピエールと踊っている。ピエールと言っても運転手のピエールじゃなく、ジャンの仲間の方だよ。利恵ちゃんはパスカルと踊っていたので、洋子ちゃんがヴァシリーと踊っている。この辺はどうなるのかな? 

そして俺はフランソワーズと踊った後はガエルやセリーヌ、ディアナ達と踊った。セリーヌが俺に身体をくっ付けて来たので、彼女の胸の感触が伝わり、俺は舞い上がってしまった。この後・・・ 邪な考えが頭の中を駆け回って、沸騰寸前だ。しかし、そんな妄想とは裏腹に、これが俺の仕事に影響するのかという、冷静な計算もしていた。


 そうそう、今回のダンスミュージックは幅広い年代層を考慮したのか分からないが、ミレイユ・マチュの“オ・ネ・ビアン”、“アクロポリス・アデュ”、“ラ・パロマ”から始まった。その後は初めて聞く曲ばかりだった。


 2時ソワレ・ダンサント終了。三々五々、参加者が去って行く。俺達も2階のホールに引き上げたが、〇〇ちゃん外何名かいない。フランス最後の晩だ。目くじら立てるのはよそう。大人の男女だから、節度ある行動を望むが・・・


 2階ホールで、俺は一人コーヒーを飲んでいた。3時になり、セリーヌとガエルが後片付けを終えて上がって来たので、俺はコーヒーを二人に提供した。3人で色々な話しをしたけど仕事、恋愛、今回の印象が大半だったな。その中で、ガエルには彼氏がいる事が分かった。少しゝたら、彼氏が迎えに来るんだと。俺はガエルに聞いた。

「ガエル。気付いていると思うんだけど、鵜飼君が君の事を思っているんだよ。彼氏のいる事、鵜飼君に話したの?」

「いゝえ。誰にも言っていないの」


「そりゃ、可哀そうだよ」

「そうなの? どうしたら良い?」


「そうだね・・・」

 俺は考えた。鵜飼君に正直に話すか。それとも何も伝えずにこのまゝ日本に帰るか。いやいや、それは良くないな。後で彼氏のいる事を知ったら、不味いよね。じゃあ、どうするんだ? そもそもが他人事だろ。ほっといても構わないよな。人の恋愛事情に、口を挟む事はないな。


「ほっときなよ」

「良いの?」


「OK」

「それじゃ、私帰るね」

 そう言ってガエルは帰って行った。


「良いの?」

 セリーヌが大丈夫なのか、と言いたげに聞いて来た。

「大人なんだから、そんな事直接本人に聞けば済む事じゃないか。それを聞かないで、モーション掛けてもなあ」


「それもそうだけど・・・」

「何か考えあるの?」


「いゝえ」

「良いじゃないか、C’est la vie」


「それって、安直な考えよ。何でも人生だからって、済ませるものじゃないと思うの。努力して、その結果がどうなるのか。そこで初めて達観すべきじゃないの?」

「そうだね。初めから醒めてたら、駄目だね」

 俺はセリーヌから、俺の投げやりな対応を指摘された。確かに疲れもあったし、それ程深く考えもしなかったし。他人事のように思っていたから、仕方ないのかも知れない。唯、これは性格と言うより、男と女の性別の違いから来ているのじゃないか?


 その後も彼女と話していて5時近くになってしまったので、俺は彼女の部屋に行こうと言い、彼女を1階にエスコートした。彼女の部屋に入り、部屋に鍵は掛かっていなかった。

 そうだよ。昨日は興奮していたのか鍵のない部屋なんて思わなかったし。確認もしなかったんだ。今日は多少の余裕が出来たので、鍵の確認をしたんだ。人って直ぐに順応するもんだね。

 そのまゝベッドに彼女を横たわらせ、そして全身マッサージを10分程した。相変わらず、うっとりした表情になる。それがとても良いんだな。昨日よりは張りがなかったが、それでもほぐれる迄少し痛がったな。

 そして俺達は愛し合った。そして俺の気持ちの大部分が、セリーヌに占められるのに気付いた。俺はどうするべきなのか? どうしたら良いのか? 結論なんて出やしないし、直ぐに出せる類いのもんじゃない。

 5時を過ぎ、俺はうつらうつらし出した。眠い、少しだけ寝よう。これからどうなるんだろうか、俺の人生。さっきセリーヌに応えたフレーズが思い返された、「それが人生さ」



20日目

 8時半になって俺は大急ぎで起きた。面倒臭いから、洗顔も歯磨きも髭剃りも、朝食の後にしよう。

 食堂に行き食事を済ませ、遮二無二2階の洗面室で髭剃り、歯磨きを済ませた。そして部屋に戻り、荷造りを開始した、それが丁度9時だった。


 ガエル、セリーヌ、ブリジット、パスカルがディスプレイ、CDプレイヤー等々の夏期大学用機材を搬出している。

 2時間位で荷造りを終え、ポリバケツ、トイレットペーパー等の消耗品を自由に使ってくれとの言付けを書いて、テーブルに残した。

 フローリアンがこれからマンハイムに帰るからと、別れを告げに来た。事故に気を付けて無事に帰れよ。美智ちゃんが彼の荷物を持って、車迄送って行く。二人はこの後付き合うのかな? 帰ったら彼女に聞いてみよう。

 サロモン氏が大西君に市のバスケットボール協会のバッジを手渡した。一方では、ジャンとピエールが芳子ちゃんと理恵ちゃんの荷造りを手伝っている。


 13時、簡単なフランスパンのサンドイッチで昼食を済ませる。中庭では別れを惜しみながら、各々がツウショットを撮り交わしている。俺も食べ終え、セリーヌとのツウショットを撮ってもらった。その時に俺は、彼女に言ったんだ。「俺は12月に、君に会いに来る。だから俺を待ってゝくれ。君と一緒になりたい。返事を聞かせてくれ」と。彼女は「はい」と言ってくれた。何も考えずに伝えた。意識しないで出て来た言葉。


 14時半、宿舎を出発。セリーヌ、ガエルと彼氏、ディアナ、ジャンとピエールがバスを見送ってくれた。鵜飼君は初めてガエルが彼氏持ちだと知って、落ち込んでいた。

 ポルト・マイヨで大西君を降ろし、空港に向かう。15時半到着。バスの停車場が空いていなかったので、出入り口付近で降ろしてもらう。少しなら大丈夫だろうと、ピエールが停めてくれたんだが、ヤッパリお前は良い奴だなあ。ユーモアもあったし、ブーロウニュの森の○○も教えてくれたし、ありがとうな。

 搭乗手続きを終え、17時20分定刻に日本へ向けパリを立つ。



21日目

 12時間の飛行の後、11時に成田に到着。10名無事帰国。行きと同じ京成線で上野駅へ。上野駅で解散。9名の学生全員無事に帰国した訳だ。成田空港で大学の総務課に帰国の一報を入れていたので、上野駅では、学生の親御さんが迎えに来ていた。

 俺は解散前に、後期授業が始まる初日に、参加した学生との解散会を提案した。反対がなかったので、初日に俺から講義後に場所と時間、参加費について伝えると話した。俺はそのまゝ、自宅に帰る事で了承をもらっていたので、山手線に乗った。トランクとスヴニール(土産物)で手荷物が重い。重くなった重量と思い出が一緒なんだと思うと、気持ちは軽くなったが、手が・・・









追記

 それから俺は、週に一度は必ずセリーヌに架電又はメールして、気持ちが変わっていない事を伝えた。勿論彼女もだ。そして秋になり、フランスに行く時期を伝えようと架電した処、彼氏が出来て、同棲していると言われた。俺の遠距離恋愛と結婚は終わった。そして、俺はチョンガ-でアラフォーを迎えるのか。

 次作は歴史物になります。ルイ14世の国王就任前の時代、又は大戦前の大清国、大日本帝国で活躍する一人のフランス人について、どちらかを考えています。

 最後迄呼んで頂き、感謝致します。

 Je souhaite vous avez bonne chance dans votre pochette.



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