行動が伴われなければ、当たり前です
……あら、アイゼン卿どうされましたの? この喜ばしい卒業パーティにそのように怒って。
え? なぜ、俺の迎えを待たなかった、ですか?
私、貴方を待つ理由がございませんけれど。
えっ? なぜ、贈ったドレスや装飾品に身につけていないのか、と?
……ああ、もしかして。
一週間ほど前に差出人不明の贈り物が複数届きましたけれど……それですの?
ですが……差出人不明な贈り物は毒や呪いを警戒して、我が家は処分することになっておりますのよ。
そういえば――ドレスは貴方の髪の色、装飾品の宝石は貴方の目の色でしたわね。
そんな……いきなり、本日のパートナーになれと言われても困ります。
私、すでにパートナーはおりますのよ。
こんなところに一人で座っているのに、強がらなくても良い……?
あの……本当に私、パートナーと来ておりまして……。
大体、ここに座っているのも履き慣れない靴を履いてきてしまったので疲れてしまったからですし、彼は私を気遣って飲み物を取りに行っているだけですわ。
相手は誰か……ですか?
それをなぜアイゼン卿に言わなければならないのです? 貴方には関係無いではありませんか。
は……?
私のことが好きで告白するつもりだった?
だから、関係あるって……何を馬鹿なことをおっしゃってるんです?
そもそも、アイゼン卿は私などお嫌いでしょう?
あれだけ私のことを頭の悪いブスだの、デブだの、根暗だの、センスがないだの言って、お友達の皆様と笑っていらっしゃったではありませんか。
確かに私は、学年首席で眉目秀麗なアイゼン卿と比べれば、頭が悪く不美人ですわ。
普段私が太っているように見えるのは、魔力を溜め込みやすいからですわ! 貴方だってご存知だったはずでしょう? ええ、今回はきちんと魔力を使用して解消させてきましたもの。
室内での趣味が多いですし、友人も少ないので根暗にも見えますよね。
田舎の子爵の娘に王都で流行しているものの話なんてされてもわかるわけ無いでしょう。
いつもいつも、体型や態度を評われてからかわれて。何もしていないのに悪口を言われて。
あげく、貴方に付きまとっているなんて噂まで流れて……貴方のお友達の皆様から、叱責・罵詈雑言を頂きましたのよ? そう、言葉だけならまだしも暴力を振るってきた方もいましたし……それらを止めることもなされませんでしたよね?
照れ隠しだった? 申し訳なかったですって?
ふう……今更ですわね。私、貴方のことは嫌いです。
────あ。おかえりなさいませ。
まあ、黄金蜜酒を持ってきて下さったのね。ありがとう、嬉しいです。
ふふ……こちらに来てしまわれたら黙っている意味はありませんわね。
ええ、私のパートナーはブラウアー様ですわ。
アイゼン卿も良くご存知ですわよね。同じ選択科目の騎士科で首席争いされていらっしゃったそうですし。
え、ブラウアー様を名前呼びを何故しているか……? ああ、それは仕方ありませんわ。
昔から仲が良かった幼馴染ですし……婚約者ですもの。
卒業後、半年ほどしたら結婚の予定ですの。
ですから、本当に今更なんですのよ。
告白されても……謝られても……。
もとから行動が伴われなければ、嫌われるのは当たり前ですのよ。
主人公(あえて名無し)
田舎領地の子爵家の娘。普段はまぁるい体型の陰の者。
魔力が多く、使用しないと脂肪として溜め込んでしまう特異体質持ち。(限界まで使用すると痩せる)
アイゼン
俺様気質のアイゼン公爵令息。主人公が好きだったけど、好きだからイジメてしまうお子様。
跡継ぎではないので騎士として身を立てることが決まっているため、家名に卿とつけて呼ばれている。
名前は出てこなかった。
ブラウアー
主人公の家の領地の隣領地(伯爵家)の令息。主人公の幼馴染。婚約は半年ほど前にした。
アイゼン卿とは良きライバルだと思っていたけど、今回のことで幻滅。
ブラウアーは名前。アイゼンとは逆に家名はあえて出さない。