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エレメント・メメント  作者: 廣瀨 玄武
第一章【万物は流転する】
16/44

15.一意的ジャスティス

ダイナミックタムを破壊すると決意した大地。

仲間が仲間を殺した事で悩み続けていた央駆。

己の起こした事に気づけないままでいる宇宙。


彼らの判断の終着点は。

何度目だろうか。

また目が覚めた。

目の前には食べかけの寿司。

「ああっ。」

思い出した。アルトに振る舞われた寿司である。

壁には、光太郎が参加するコンクールのポスターが貼ってあった。

「光太郎…」

既に一ヶ月を切っていた。つまり光太郎はもう共に演奏する子供たちと合同で練習している事になる。

「俺は…」

宇宙の携帯に一通のメールが来る。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

央駆は悩んでいた。

蓮の人生がメメント・モリによって途切れてしまった事を宇宙に伝えるべきか。

実際、彼がいなければ世界は救えないのである。

世の当然が反芻する頭では組織から彼を追い出そうにも追い出しきれなかったのだ。

また例え追い出したとして、彼の元に暴力が集うのも時間の問題であるとも思った。

「どうした。」

施設内の机に向かっていた央駆の耳元を声が通る。

央駆は振り返る。

「誰だ。」

男は紐を引いてコマを回転させる。

コマの芯棒は央駆を向く。

「気をつけろ、次はお前かもしれない。」

「何…?」

「占術師テノール。」

「どこから入ってきた。」

「入口だ、ただの。」

「暗証番号が…?」

「まあ、水上宇宙が罪なき人間を殺害したことだろう。」

央駆がはっ、となる間も無くテノールはチューニングキーのようなものを手渡す。

「チューニングキー…?」

「アルトがテルビウムを加工して作った制御装置だ。」

テノールは知っていた。ダイナミックタムには暴走制御のアタッチメントがある事を。

キーを使えばメメント・モリは意識をそのままに力を発揮出来る。


意識をそのままに。

その言葉の表す意味に気づけなかった央駆は喜んで受け取った。

「だが、なぜ今頃なのだ。既にメメント・モリを知っているのならば先に使用していたと思うが。」

テノールは少し黙り、答える。

「いいや、あれだけは俺たちにとって想定外だった。」

「なぜ」

を繰り返す央駆の視界に、男は消えていた。


警報。


鉛の足で施設を出る。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

Nb=ニオブのバケモノが現れた。

駆けつける宇宙。

「バケモノ…!!」

央駆と邂逅する。

「…そうか。」

「あのバケモノは!?」

央駆は一瞬抵抗を浮かべる。

バケモノは腕からリニアモーターカーを発車させる。

「…超電導リニア?」

『ネオン!』

ドラムソロが鳴る。

象徴化(シンボライズ)!』

央駆の目に、あの姿が映る。

「メメント…」

「おそらくあれはニオブのバケモノだ!」

伝えるしか無かった。手元にある元素シューターも、どこか撃つことが出来ずにいた。

「そうか。」

『タンタル!象徴化(シンボライズ)!!』

メメントはタンタルのスティックを選んだ。

タンタルはニオブと同族であるが密度・融点共にタンタルの方が高い事を瞬時に理解し使用している。

いつもの宇宙の戦い方であるが、この時だけは央駆には無機物的な恐ろしさを感じてやまなかった。

ニオブのバケモノが光学ガラス(光の屈折によって画像を伝送するガラス)を張り巡らせる。

顕微鏡のようなガラスは奥の物質を拡大させ、メメントの狙いを翻弄する。

『アルゴン!象徴化(シンボライズ)!』

右肩のタンタルはそのまま、メメント・アルゴンへと姿を変えた。

タンタルを溶接し棒状の武器を作ると、

「この一撃で、お前は死ぬ。」

『アルゴン!メメント・インパクト!!』

武器は光学ガラスを突き破り、バケモノに直撃。

見事ニオブのバケモノを倒した。

その裏で、ヨウは壁を叩いた。

「メメント…」

央駆が呟く。

宇宙は央駆へ近寄ると、無意識的に央駆の右足は少し後ろへ地面を擦った。

「ありがとうございます。」

回収したニオブのスティックを央駆に渡す。

何とでも言えそうな、何とも言えぬ感情が央駆を突き刺す。


轟音。


ダイナミックタムが、宇宙に迫る。

『ダイナミクス オブ ジエンド!象徴化(シンボライズ)!』

「まずい…!」


「はあああっ!!!」


メメント・モリを殴ったのは、下方 大地。

「ダイナミックタム…ぶっ壊す!!」

ティンパニのチューニングペダルのようなパーツを4つ押すと、重厚な音楽が奏でられる。

"Ac"の文字が刻まれたスティックで、なぞる様にティンパニを叩く。

象徴化(シンボライズ)!』

『モメント・アクチノイド!!』

設置されたシリーズインジケーターが【A】を指す。

「早く心臓をよこせよ…!」

『加速』

超スピードでメメント・モリに迫り、蹴る。

確実にダメージは受けている。

が、ほぼ仮死状態の中身に痛みなど無い。

「なんで...!くそ…ッ!」

メメント・モリがモメントの首に触れる。

モメントの心臓が今にもはち切れそうになる。

あっという間にモメントは大地の姿に戻る。

首を持たれた生身の大地が、メメント・モリの腹を殴る。殴る、殴る。

必殺技を放つ為、メメント・モリはダイナミックタムを取り出す。

「今だ…!」

大地はダイナミックタムを殴った。

狼狽えるメメント・モリ。

渾身の一撃は、メメント・モリに払われた。

メメント・モリの蹴りが炸裂する。

転げ落ちた大地は、地面に拳を叩きつける。


「俺は…この恩を返せないのか…?」


高校生時代。

吹奏楽部を引退した下方(ゲホウ) 大地(ダイチ)は不幸に見舞われる。

ダイナミック・レンジが世界を変えたあの日。

心臓の弱かった大地は音波によっていよいよその一生を終えようとしていた。

救急搬送された彼の心臓はすぐ再起不能と判断された。

誰から発される訳でもない重圧に耐える中、奇跡の一報が彼を変える。

「心臓のドナーの方が見つかりました。」

亡くなった臓器提供者の名前はメイプル。

死因は不明だったが心臓に異常は無かった為、移植を決定した。

そうして、大地は蘇生した。

メイプルの体は死因解明の為施設へ残された。


「絶対に、お前の心臓を奪う…」

目の前の敵を睨みつける大地。


「俺はまだ!!」

脚を持つ。

「礼ができていないんだよ…!!」

頭でメメント・モリの腹を突く。

少しだけ飛ばされるメメント・モリを前に、

大地は"La"のスティックを構え、ティンパニを叩く。


象徴化(シンボライズ)!』


『モメント・ランタノイド!!』


設置されたシリーズインジケーターが【L】を指す。

青白かった光を銀白色の金属が塞ぐ。

輝きを纏いし戦士─モメント・ランタノイドが誕生した。

早速、金属の錆びが始まる。


メメント・モリが拳を突き出すと、モメント・ランタノイドがそれを受ける。

途端、モメント・ランタノイドの左肩に火花が散った。

「もう逃がしはしない…!」

トライアングルのプレイヤーを出す。


『展延』


歩くメメント・モリに異変が生じる。

ダイナミックタムの内部装置が変形し、正常に機能しなくなった。

モメントの銀白色だった胴体の錆びがかなり進んでいる。使用可能時間は残り5秒を切った。


「殺す!!!」


ギロ型プレイヤーに"Pm"のスティックを2度擦る。

『プロメチウム・クラッシュ!!』

火の玉が出現。

モメントは火に向かってはしっていく。

「終わりだ…ッ!」

業火をに焼かれたモメントの胴体は砕け散った。

火から現れた素体のモメント・ランタノイドがメメント・モリに全力の右ストレートを食らわせた。


中に舞い上がったメメント・モリは爆散し、ダイナミックタムの内部は破壊された。

意識を失った宇宙がいつものように倒れた。


「水上宇宙…。」

大地は宇宙の方へ歩く。


「やめろ!」

央駆が引き留めようとする。

「君は、メイプルの…。」

「…ああ、そうだ。俺は知っているぞ。メイプルさんがどうして亡くなったかも、遺体がどこにあるのかも。」

央駆は息を飲んだ。

「このスティックをどこから手に入れたのか、教えてやる。」


「195066」


「何故それを…!?」

「アルトに教えてもらったんだ。」

「さあ、これでようやく決着がつく。」

大地が取り出したのは、元素シューターだった。

「まさかそれも…?」

央駆も元素シューターを大地に構える。

「銃を下ろせ!!」


大地は"No"のスティックをシューターに装填した。

『ノーベリウム!エレメント・ショット!!』



引き金は引かれた。

【所持スティック】

〈クラック〉

ダイナミックタム、謎のチューニングキー(テルビウム)、水素、炭素、酸素、フッ素、ネオン、リン、アルゴン、カルシウム、クリプトン、イットリウム、ニオブ、キセノン、タンタル、タングステン、オスミウム、ホルミウム

〈アイソトープ〉

ヨウ素 (ヨウ)

〈大地&アルト〉

セレン、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ジスプロシウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、アクチニウム、トリウム、ウラン、ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、バークリウム、カリホルニウム、アインスタイニウム、フェルミウム、メンデレビウム、ノーベリウム、ローレンシウム


NEXT▶16.再現的フィナーレ

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