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第4話  探索

11/20 改稿済

キャロルさんと別れた後、私はカフェを出て、アイテムが買える場所を探しながら町を歩いていました。


 雑貨屋:アンフェンガー


 雑貨屋と書かれていますが、ここでアイテムを手に入れることができるのでしょうか?


 カランコロン___


「すみません、回復薬とかはここで売っていますか?」

 店内は比較的小さなスペースで、さまざまな商品が所狭しと並んでいます。奥には一人のおばあさんが座っていました。


「…売ってているよ」とおばあさんは答え、黙ってしまいました。


「二つ買いたいのですが、いくらになりますか?」


「…600C(クロニクル)C(コイン)だよ」とおばあさんは言い、奥から緑色の液体が入ったガラス瓶を二つ取り出してきました。

 アイテムを受け取ると、-600CCという表示が表示されました。おそらく、勝手に支払ったことになるのでしょう。

 しかし、なぜかおばあさんの様子が変わっているように感じました。どこか緊張しているようで、不自然に話を控えめにしているように思えました。


 回復薬(低級)

 レア度:E

 プレイヤーのHPを20%回復することができます。


 キャロルさんから教えてもらったインベントリに回復薬をしまい、

「おばあさん、ありがとうございました」

 と挨拶して、店を出ました。


 そういえば、トピックというものがあると聞いたことがあります。私は本のようなマークをタッチして、トピックを開いてみました。


 Ethereal Chronicle: 種族紹介 - 妖怪


 基本情報


 種族名: 妖怪


 転生条件:

 1.AIの質問に基づく初期適正。プレイヤーの答えや選択によって、妖怪としての適性が判定される。

 2.カルマをマイナス状態にして、特定の職業の条件を満たすこと。


 特徴

 ステータス配分: 一般的な種族とは異なり、特殊なステータス配分を持つ。これにより、独自の戦略やプレイスタイルが可能となる。

 特殊スキル: トリッキーなスキルや独自の能力を覚えることができる。これらのスキルは、戦闘や冒険において独自の戦い方ができる。

 社会的立場: 業がマイナスのため、多くのNPCから畏怖の対象となる。一部の土地のNPCを除いて、多くの場所での取引や会話が難しくなる。


 なるほど。

 業というものがマイナスの状態にあるから、あんな反応だったのですね。業をどのように上げるかは分かりませんが、ずっとあんな反応されるのも嫌ですし、上げたいです。しかし、業がプラスになると、妖怪ではなくなるのでしょうか?今後の課題ですね。


「そういえば、生産職を取れるってキャロルさんが言っていましたね」


 攻撃スキルとは別のスキル画面を開いてみました。鍛冶、料理、裁縫、装飾、錬金術、釣り、付与術。思ったよりたくさんありますね。現実でも料理は私の趣味ですし、私は料理にしましょうか。料理のアイコンをタッチしました。


「料理するにしても道具がないと何もできませんし、まずはお金を稼ぐ必要がありますね。400CCしかありませんし」


 このゲームにはクエストなどがあるのでしょうか?お金を稼ぐ方法について聞いておけばよかったです。普通のゲームならギルドでクエストを受けてお金を得ることができますよね。


 そう考えて探してみましたが、ギルドらしきものは見当たりませんでした。では、外に出てモンスターを倒すことでお金を得るのでしょうか?そんな疑問を抱えつつ、プレイヤーらしき人たちが集まっている建物が目に入りました。


 酒場:トランク・パーティー


 酒場もクエストを受ける場所の一つというイメージがあります。そこで意を決して、酒場の中に足を踏み入れました。


 店内に入ると、一瞬こちらに視線が集まりました。思わず固まってしまいましたが、深呼吸をしてからカウンターに向かって歩き出しました。


「すみません、ここではどんなことができますか?」


 カウンターの向こうにいる、白髪の混ざったおじさんは皿を拭きながら答えました。

「よお、嬢ちゃん。ここら辺じゃ見ない珍しい種族だな。未成年には酒は出せねえから、飯かこっちの出す依頼を受けてもらうくらいになる」


「それです!そういうのを探していたんです」


 苦笑しながら話すおじさんを見て、ついついおじさんがNPCだということを忘れそうになりました。その言葉に、自分がゲームの中であることを思い出し、私もまた苦笑いしました。そういえば…


「おじさん、妖怪でも平気なんですか?」

 雑貨屋のおばあさんと比べて、酒場のおじさんは全然恐れがないように感じました。


「こんな酒場のマスターをしているんだ。いろんな客を見てきたさ。別にお嬢ちゃんが何かしたわけじゃないんだろう?」


「はい… まだ冒険にも出たことない新米です」


 おじさんは笑いながら言いました。

「ならここらへんの依頼にしときな。3つくらいなら同時にできるだろう」


 依頼を受けますか? Yes or No


 ブタシシ 3頭の討伐 300CC

 レッサーウルフ2頭の討伐 500CC

 牛の乳しぼり 300CC


 ブタシシがいる… チュートリアルで戦った相手であるブタシシの依頼がある。あのなんとも言えない見た目を思い出してしまいました。


「全部受けます!」



 アルフェンシュタット 郊外の森



 私はブタシシもレッサーウルフも町の近くにいるという話を聞いて森に出てきましたが、どうやららしきモンスターは全く現れません。代わりに鶏サイズの足が驚くほど強靭なヒヨコがたくさん群れをなしている。近くのヒヨコの情報を調べてみることにしました。


【ストロングチック】

 HP:80


 説明:

 ストロングチックは、鶏サイズに成長したヒヨコです。このモンスターは、鶏になる進化の過程を断念した結果、代わりに強靭な脚力を発達させ、その小さな体から想像もつかない強力な蹴りを繰り出し、敵に対して意外なほどのダメージを与えます。


 名前の癖がかなり強いです…

 あの足なら納得ですが。


 ストロングチックは、いきなり襲い掛かってこないようですので、スキルの確認をしておくことにしました。チュートリアルで使った狐火は大丈夫だとして、管狐は竹筒に潜むと書いてありました。


「竹筒はインベントリにあるのでしょうか?」と探してみましたが、どうも見当たりませんでした。HINAはVRでは意識やイメージがとても大切だと言っていましたね。そこで、私は竹筒を意識してみました。


「いつの間にか手に握られています…」


 本当に音もなく、それは右手にあったのです。


(管狐に名前を付けてください。)

 HINAとは違う声が頭の中に聞こえてきました。


「名前はクダにしましょう」


 とても安直なネーミングですが、もし呼び出すときに長いと大変かもしれないと思い、そうしました。スキルの発動方法は自由なので、管狐のスキルは竹筒を開けるだけにしておきました。


 そして、私は竹筒の蓋を開けました。するといきなり中から前足だけが現れ、後ろ足のない胴の長い狐の幽霊のようなものが現れて、命令もしていないのにストロングチックに巻き付いたのです。



 その瞬間、周りにいたストロングチック3体が一斉にこちらに向かってきました。


「あ、ちょっと待ってください!」

 まだ何も考えていなかった私は慌ててクダにそう呼びかけました。


 しかし、クダは巻き付いていたストロングチックを解放してしまい、その行動を見て、私は何か大きなミスをしたのではないかと気づきました。


 クダ:使役獣 (レベルはプレイヤー依存)

 種族:管狐

 HP 80

 MP 60

 ATK 0

 DEF 40

 INT 40

 MEN 80

 DEX 80

 AGL 80


 スキル

 呪縛、神通力、帰還


 私は、自分より使えるスキルが多いのではないかと思うこの子と一緒に、合わせて4体のムキムキヒヨコがこちらに来るので、何とかしなければならないです。


「クダ、さっきのは呪縛でしたか? それを使って、敵の動きを止めてください!」

 そう指示すると、クダは少し驚いた顔で私を見た後、小さく「キュン」と鳴きました。そして、再びさっきまで巻き付いていたヒヨコに向かって動き出します。


 もともと、この騒動はクダが勝手に巻き付いたことから始まったのですが。


 私が知っている攻撃スキルはこれ一つだけです。だから、試しに使ってみるしかありません。

 集中、集中…

 直線に飛ぶ火のイメージを頭に描き、「狐火!」と叫びました。


「あ、避けられ…」


 先頭のヒヨコには攻撃を避けられてしまいましたが、後ろのヒヨコは気付いていなかったようで、攻撃が命中しました。一撃でHPバーがゼロになる。これで一体を倒せたことが確認できました。


 と、その時、先頭のヒヨコが目の前まで迫ってきます。

「ビヨー!!」と、全く可愛らしさのない声で、脚を振り上げて飛び蹴りを繰り出してきました。


「これなら避けられます」


 おじいさまの突き技と比べれば、このヒヨコの動きは読みやすいと感じました。しかし、避けようとした瞬間、体が予想以上の勢いで動き、バランスを失ってしまいました。


「なんでこんなに軽い動きになるんですか、この体!」


 倒れる寸前、上空から急速に何かが落ちてくるのを感じました。そして、その次の瞬間、私のお腹を狙って猛烈な蹴りが繰り出されます。


 ストロングチックの流星蹴り

 ―critical―

 -50


「うっ…これは痛い。こんな強烈な蹴りをお腹に受けるなんて...初期モンスターって、こんなに強いものでしょうか?」


 思いもしなかった動きに驚きました。50のダメージって、私のHPのほぼ半分です。


「邪魔なのでどいてください!狐火!」


 一仕事終えたかのような満足げなヒヨコが私のお腹の上にいるのを見て、間髪入れずにゼロ距離から「狐火」を放ちました。手でその炎を持って直接当てたため、自分にもダメージを受けるのではと思いましたが、意外と大丈夫でした。


 立ち上がると、最初のヒヨコがじっと私を見つめて動かないでいました。一方、クダは無事にヒヨコに巻き付いていて、まだまだ大丈夫な様子でした。


「びぃ」という小さな声を上げながら、ヒヨコが右足を前に出し、何か力を溜めるような動きをしているのが見えました。


「やらせません!き...」

 と言おうとした瞬間、ヒヨコがドロップキックで突進してきました。私の現状では動いているターゲットに「狐火」を正確に当てるのは難しいでしょう。


「さっきのは力加減を間違えたのですが、これなら!」

 私は慎重にヒヨコの攻撃を避けることに成功しました。そして、攻撃を外したヒヨコが私の横を過ぎていく隙に、蹴りを繰り出してヒヨコを高く空へと打ち上げました。


「空から落ちてくるのなら、狙いやすいですよね。狐火」とつぶやきながら、私は炎を放ちました。


 空から落ちてくるヒヨコは、地上から放たれた「狐火」によって消滅することになりました。


 3匹のヒヨコを倒した私は、クダの元へと歩み寄りました。


「そういえば、クダ。このヒヨコをどうやって倒せばいいのですか?」



 クダは私の方を向いて、何かを伝えようとする様子でした。それを見た私はなんとなく「狐火を使えばいいのですか?」と訊ねると、クダの反応からそれで正解のようです。そこで私は「狐火」を発動させました。すると、狐火が自ら動き、ヒヨコに向かって飛んで行き、直撃を与え、ヒヨコは消滅していきました。


「これが、神通力というスキルなんですね」


 初めての戦闘でしたが、初期モンスターにこれほど苦戦するとは思いませんでした。狐火の威力は頼りになるものの、管狐の能力はどちらかというとサポート向きなようでした。


「戦闘のおかげでレベル3になっているみたいですね」


 ステータスを確認すると、確かに後衛職としての特性が強調されていました。しかし、狐火以外に攻撃スキルがないのは少し心配でした。


「攻撃スキルを増やす方法はないのでしょうか…」


 そんなことを考えながら、スキルツリーを眺めていると、選択肢として提示された分岐型のスキルが目に入りました。


 1.化け化粧ばけげしょう

 効果:一定時間、他のプレイヤー、ゲーム内のモンスターやNPC、物体に変身可能。変身対象は、これまで遭遇したものから選択。変身中はその対象の持つスキルの1つを使用可能。

 持続時間:5分間 CT:30分




 2.狐雨きつねあめ

 効果:お天気雨を降らせ、味方陣営全員の一部を除いた状態異常を回復。同時に最大HPの10%を回復する。


「化け化粧」は強力なスキルのようですが、やはり後衛職としての役割を忘れずにいたいと思います。それに、何となく「化ける」のは気が進みません。支援に期待ができる「狐雨」を選ぼうかなと思います。


 思いにふけっていたら、ゲーム内の時間がすでに深夜の2時を指していることに気づきました。


「もうこんな時間ですか!?」


 明日は休みですが、おじいさまとの朝稽古があります。ちょっと触れてみるつもりが、つい夢中になって時間を忘れてしまったようです。


「気をつけないと、時間がわからなくなってしまいますね…」


 そう思いながら、私はゲーム内の町へ急いで戻り、ログアウトしました。

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