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第3話 月華の誓い

 夢の中で、私は広大な花畑に立っていました。月光が満ち溢れる中、無数の色とりどりの花々が優しく揺れていました。私はその美しさに息を呑み、しばし立ち尽くします。


 そこには、見知らぬ誰かの姿がありました。その人物は遠く、背中を私に向けていました。彼らは静かに、しかし確かに何かを私に伝えようとしているようでした。


 私は彼らに話しかけようと歩み寄りました。しかし、その瞬間、私の意識は現実へと引き戻されました。夢から覚めた私は、自分の部屋のベッドの上にいました。月明かりが部屋の窓から優しく差し込んでいて、私は深く息を吸い込みました。


「あの人たちは誰だったのでしょう……」


 何人かの姿ははっきりとは認識できなかったものの、どこか暖かく心地よい気持ちに包まれました。夢の中での不思議な出来事は、なんとなく今の自分でいいという肯定のように感じられました。それはまるで、私が今していることが正しいというメッセージのようでした。


 そして、私は再び微睡の中に落ちていきました。心地よい夢の余韻を感じながら、静かな夜の中でゆっくりと眠りにつきました。

 



 1月11日



 剣道の朝稽古が終わり、静まり返った剣道場で、私はおじいさまに質問を投げかけました。


「おじいさまはもし強くなることで迷ったらどうしますか?」


「……ゲームの話か?」と、おじいさまは少し眉を寄せながら尋ねてきました。


「そうです。強くはなるんですが、多分性格的に合わないんです」


 私はゲーム内での悩みを打ち明けました。


 おじいさまはしばらく考え込んでから、深い息を吸いながら静かに答えました。


「強さというものは、ただ力を得るだけではない。自分自身との折り合いも大事だ。自分に合わない方法で得た力は、時として自分を苦しめることもある」


「その力をどう使うか、何のために使うか、それが大事だ。自分に合った道を見つけること。それが本当の強さへの第一歩だ」


 私はおじいさまの言葉を胸に刻みながら、自分自身に問いかけました。本当に求めているのは何か、どうすれば自分らしい強さを得られるのか。



 高校


 高校の教室で、私はずっと頭の中で考えを巡らせていました。ゲーム内で妖狐になれないのは、おそらく業が上がってしまっているからなのだと思います。その結果、NPCたちからの印象が良くなり、普通に会話ができるようになったのでしょう。


「垂水」と先生の声が教室に響きます。


「はい」と、私はすぐに反応しました。


「この問題を解いてみろ」と先生は黒板に書かれた数学の問題を指差しました。


「はい」と答えながら、私は黒板に書かれた問題を解くことに集中します。ゲームの世界とは違い、ここでは私はただの一人の高校生。私は先生の言葉に従い、黒板に向かって問題を解き始めました。



「垂水さん、授業中に何を考えてたの?」


 授業が終わったあと、因幡さんが私に声をかけてきました。


「あ、因幡さん……本当の強さについて考えてました」


「現役の女子高生が考えることじゃないと思うよ、それ」

 と因幡さんは笑いながら言いました。


「ゲームのことですよ!どうしたらいいかと思って……」


 私は因幡さんに説明しました。私は業が上がっていることが妨げになっているかもしれないという話と、たとえ業を下げてもその職になりたいとは思わないことを伝えました。


「うーん、じゃあさ。もういくところまで行けばいいんじゃないかな?垂水さんにはきっと合ってないんだよ」


 授業が終わり、私は剣道の朝稽古を思い出しながら帰り道を歩いていました。おじいさまに聞いた「本当の強さ」についての言葉が頭の中を巡っていました。強さとは何か、それがどうゲームと関わっているのか、そして私がどう進むべきかについて深く考え込んでしまいました。


 因幡さんの言葉、業が上がっていることが2次職の妨げになっているかもしれないという考え、これら全てが私の心に響きました。私は、自分に合った道を見つけるために、新しい一歩を踏み出す決意を固めたのです。


 家に帰ると、私はゲームの世界に再びログインしました。新しい道を探すために、もう一度Ethereal Chronicleの世界を歩き始めるのでした。



 ツェントラルライヒ


 キャロルさんの鍛冶屋の前に着くと、キャロルさんとレオンさんがそこにいました。二人を見つけると、私は興奮して駆け寄りました。


「キャロルさん!レオンさん!」


 声をかけると、二人は振り向き、笑顔で返事をしました。


「あら、たるひちゃん」とキャロルさんが温かく迎えてくれます。


「たるひ、久しぶりだな」とレオンさんもニコリと笑いながら私を見ます。


「ふたりとも、お久しぶりです。ちょっと相談があって来たんですが……」


 私はそう言いつつ、2次職の件やレギオンについての話を始めました。


「というわけで、私は業をさらに上げてみようと思います」


 私は二人に伝えました。


 レオンさんはちょっと考え込むように「マイナスをプラスに変えるか……」とつぶやきました。


「案外それはいい考えかもしれないわね」

 

「はい!時間はかかるかもしれませんが、全力を尽くしてみます」


「いや、そうでもないかもしれないぞ。もうNPCたちの態度は変わっていたんだろう?なにか要因があったのかもしれないが、すでにある程度業が上がっているのかもしれない」


 彼の言葉には深い意味があるように感じました。NPCたちとの関係が変化していることは、私の行動がすでに影響を及ぼしている証拠かもしれません。



「レオンさん、実はもう一つ相談があるんです。実は私がレギオンを作ることになったんです。そのレギオンに、レオンさんも入っていただけませんか?」と私は少し緊張しながらレオンさんにお願いしました。


「レオンちゃんも素直じゃないわね!もうあたしが誘っていたのよ。この前のトーナメントで随分とたるひちゃんのことを気に入っちゃったみたいなの」とキャロルさんが言い、レオンさんに向けていたずらっぽい笑顔を浮かべました。


 レオンさんは苦笑いを浮かべてキャロルさんを見ました。「キャロル、余計なことを……まあいいか。たるひ、今後ともよろしく頼むぞ」


 私は二人のやり取りを見て微笑み、深く感謝の気持ちを抱きました。「ありがとうございます!レオンさん、キャロルさん、これからもよろしくお願いします。みんなで力を合わせて、素晴らしいレギオンにしましょう!」


「レギオンが解放されるのは明後日みたいだが名前は決まっているのか?」


「実はまだ……候補はあるのですが」


「あら、もう候補は決めていたのね? どんなものがあるのかしら」


「えっと、月を見てたら思ってたんです。月華の誓いとかちょっといいかなって……」


「ルナ・ヴォ―タムか。いいんじゃないか?」


「るな……なんですか?」


「ルナ・ヴォ―タム、これはラテン語で"月の誓い"という意味なのよ。だからたるひちゃんの言った"月華の誓い"と同じ意味になるわね」とキャロルさんが説明してくれました。


 レオンさんは頷きながら言いました。


「ラテン語は古くから伝わる言葉だから、なんとなく格式があっていい感じだ。ルナ・ヴォ―タム、俺は気に入ったぞ」


 私は少し照れくさくなりながらも、提案されたレギオンの名前に内心で大きな喜びを感じていました。


「月の光で結ばれる誓い……素敵ですよね。でも、めるさんとりあさんがいないと決定は難しいですよね」と私は言いました。まだ全員が揃っていないことを思い、最終決定は全員が集まった時にしようと思いました。


「そうね、みんなで決めた方がいいわ。めるちゃんもりあちゃんもこの名前を聞いたら喜ぶと思うわよ」


「みんなで決めるのが一番だ。それに、ルナ・ヴォータム……月の誓い。これは我々の冒険にふさわしい名前だ」


 彼の目は夢中になるとき特有の輝きを放っていました。もしかしたら、彼はラテン語が好きなのかもしれません。


 これで私たちのメンバーは5人になります。これから始まる冒険が、私にとってどれだけの意味を持つのか、ワクワクしながら考えました。新しい仲間たちとの出会い、共に作り上げる物語に心から期待してしまいます。

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