第19話 お祭り
まず、おなじみのクダが姿を現し、私のそばにゆっくり舞い降ります。その後、新しく加わったヨミが現れ、クダの隣に静かに降り立ちます。
「ヨミちゃん真っ黒な子で可愛い!女の子かな?」
その姿は真っ白なクダとは正反対で対になっているかの如く真っ黒です。
クダ:使役獣 (レベルはプレイヤー依存)
種族:管狐
HP 400
MP 400
ATK 0
DEF 160
INT 250
MEN 420
DEX 400
AGL 360
スキル
呪縛(2)、神通力(2)、帰還
ヨミ:使役獣 (レベルはプレイヤー依存)
種族:管狐
HP 400
MP 300
ATK 0
DEF 420
INT 160
MEN 400
DEX 360
AGL 250
スキル
魔封壁、呪詛、帰還
ヨミはどちらかというと防御よりでしょうか……?
「魔封壁」は魔法に対する結界のような感じで「呪詛」は相手のスキルを1つ一定時間使用できなくすることができるみたいです。
「そういえば、昨日ダンジョンでスキルポイントの書というのを手に入れていましたね」
インベントリから取り出してみます。
スキルポイントの書
レア度:A
アイテムを使用することで、即座にプレイヤーのスキルポイントが5増加します。
これらのポイントは、スキルツリー上で自由に割り当てることが可能です。
※「スキルポイントの書」は一度の使用で消費され、再度利用はできません。
「あら、たるひちゃん、スキルポイントの書はなかなかドロップしないからとっても大事なのよ。宝物みたいなものだわ。β版の時は2次職までなれたけれど、1次職は30レベルが上限で、その間に合計でスキルポイント30もらえるのよ」
キャロルさんは続けて2次職について教えてくれます。
「そしてね、2次職になるとまた1レベルからスタートするの。でもその分、1レベルあたりもらえるスキルポイントが2になるのよ。つまり、2次職はさらにスキルを強化しやすくなるわ」
「2次職になるとまた1からスタートなんですか…… どんどん上げるのが大変になるんですね」
私は少し驚きながら言います。
「その分強くなるから簡単よ。新しいスキルや戦術を使えるようになると、戦闘がもっと面白く、もっと戦略的になるのだから、ちょっとした努力は惜しまないのよ」
キャロルさんは自信満々に応えます。
「いろいろできるようになると楽しいもんね!」
「確かにそうですね。どんどん必要なスキルポイントも増えるみたいですし他にポイントが手に入れる方法はないんです?」
私は少し考え込んだ後で、キャロルさんに質問します。
「そうね…… 一部のボスが確定でスキルポイントの書をドロップすると聞いたことがあるわ。あと、クエストで特別な報酬としてもらえることもあるわね」
「それなら、ボス戦やクエストにもっと積極的に取り組む必要があるみたいですね!」
それを確認すると私たちはレベルを上げるために特別ダンジョンに向かうことになりました。
その日のダンジョン攻略が終わると、私たちは良い疲労感に包まれていました。
「思ったより、普通のボスは簡単に倒せるんだねー!」
と、めるさんが得意げに言いながら、耳をぴょこぴょこさせている。彼女のその可愛らしい姿に、私たちは思わず笑顔がこぼれます。
ダンジョンの中で、ユニークボスモンスターに出会うことはありませんでした。代わりに、一般的なミノタウロスや、巨大でちょっぴり愛嬌のある雛鳥ギガントチック、そして神秘的な霊樹トレントバウムが私たちの前に現れましたが、どれもタランドスのような脅威ではなかったのです。
「まさか、こんなところでもヒヨコに出会うなんて……」
このゲームには鶏関連のモンスターがどこにでもいるのでしょうか?
「でもかなりスムーズにレベル上げができたわぁ。あと二日、頑張っていきましょう。あたしは鍛冶のために今日は篭るから、あなたたちはイベントのお祭りを見て回るのもいいかもしれないわね」
彼女の言葉に、私は頷きながらも、彼女の鍛冶への情熱と専念ぶりに感心します。キャロルさんはいつも最高の装備を作るために、鍛冶屋での作業に没頭しているみたいです。
「では、めるさん、お祭りを見て回ってみましょうか?」
「いいね!どんな屋台があるのかすっごい楽しみ!!」
キャロルさんは、私たちの会話を聞きながら、お店の奥へと静かに入っていきます。彼女の背中は、何か大きな決意を背負っているように見えました。
私たちはキャロルさんが去るのを見送りながら、今日の計画を話し合います。
ツェントラルライヒ
私たちは町を歩きながら、目を引く一つの屋台に立ち止まりました。その屋台は『夢幻の料理屋』と名付けられていて、その特徴はなんと、顧客が想像したものを料理として実現してしまうというものでした。
周囲で食べている人たちは、様々な想像力を駆使しているようで、一風変わった料理が次々と現れていました。中には漫画でよく見る巨大な骨付き肉を頬張る者や、形も名前もわからない黒い物体を興味深げに眺めている者、宙に浮いているカラフルなゼリーを楽しんでいる者など、バラエティに富んだ食べ物が目白押しでした。
「これすごい!」
とめるさんが感嘆の声を上げます。彼女の目はキラキラと輝いていて、何を想像して注文しようかとワクワクしている様子です。
私は少し考えた後、興味をそそられて「ドラゴンの卵を使ったオムライスをお願いします」と注文しました。
屋台の主は、「面白い注文だね」と言い、作業に取り掛かります。
しばらくして、彼は真っ赤なドラゴンの卵を持ってきて、それを巧みに割り、フライパンで華麗に調理し始めました。卵は通常のものとは異なり、焼かれるときに軽く炎を放つような特別感がありました。
彼が完成させたオムライスは、見た目も鮮やかで、まるでドラゴンの息吹を感じさせるような豪華さがありました。フワフワの卵の中からは、色鮮やかな具材と香ばしいご飯が現れ、それを一口食べると、濃厚でありながら繊細な味わいが口の中に広がります。
「すごい!ドラゴンの卵ってこんなに美味しいんですか……」
私は驚きながらも、興奮を隠せませんでした。
「私は炎の味がするアイスクリームがいいな!」とめるさんは冒険心溢れる注文をしました。
めるさんの注文に応えて、屋台の主は得意げにうなずき、アイスクリームを作り始めます。
屋台の主は、カラフルなアイスクリームの器にスプーンを差し込み、その上に何か特別な粉末を振りかけます。彼がその粉末に軽く触れると、アイスクリームから炎のような輝きが現れ始めました。
「これは何?」
「これは『フレイムパウダー』と呼ばれる特別な粉だよ。これをかけて食べると、冷たさの中に炎のような刺激を感じられるんだ」
めるさんはアイスクリームを一口食べると、まずはその冷たさに驚き、次に口の中で広がる熱い刺激に目を大きく見開きます。「うわぁ、本当に炎みたい!でも冷たい!すごい!!」と彼女は興奮して言いました。
その後、私たちは町を歩きながら、一つのアクセサリショップに足を止めました。このショップは、このイベント期間限定のようです。
「いらっしゃいませ、冒険者の皆さん。こちらのアクセサリーたちは、今回のイベント限定品ですよ。それぞれに特別な意味が込められています。効果は大きくはありませんが、このイベントの素敵な記念として持っていただけたらと思います」
「わぁー!!このブレスレットカラフルでかわいいね!」
めるさんは目を輝かせて、カラフルなブレスレットを手首にはめながら大興奮で言いました。そのブレスレットは光の当たり方によって色が変わる不思議な魅力を持っており、めるさんの楽しげな表情は、その魅力をさらに引き立てていました。
その一方で、私は店内を見回しながら、ひときわ目を引く鈴のついたリボンを手に取りました。そのリボンは、小さな鈴がついていて優しい音色を奏でます。店主によれば、このリボンの効果は「パーティーメンバーの数×5%スキルの攻撃力が上がる」というものでした。
「買うべきでしょうか…… でもどのくらい強いのかわかりませんし」
私はリボンを手に取りながら少し迷っていました。確かに可愛らしいですが、効果は全然わかりません。
その時、めるさんが私の元に駆け寄ってきて、
「たるひちゃん、決まったのー?」と尋ねました。
「いえ、どうしようかと思いまして」
「それ!!そのリボン可愛いから絶対似合うよ!」
私は少し照れながら、「でも、ちょっと……」と言葉を濁しましたが、めるさんは聞く耳を持たず、店主に向かって「これ、私が買うから!」と言い放ちました。
「え、でもめるさん……」
めるさんは笑顔で、
「たるひちゃんにはいつも助けてもらってるから、これくらいのお礼はしなきゃ!」と言って、リボンを買ってしまいました。
めるさんが私のためにリボンを購入した後、私は彼女の手にあるブレスレットに目を留めました。
「では、めるさんの持っているそれ私に貸してください」
「えっ、いいよ!でもなんで?」
めるさんは不思議そうにブレスレットを私に手渡します。
私はそのブレスレットを手に取り、思い切って「これ、私が買います」と言いました。
「本当に?それ、すごく嬉しい!」
店主に向かってブレスレットを購入する意志を伝えた後、私たちはお互いに買ったアイテムを交換しました。
「これ、めるさんに似合うと思います」
そのブレスレットは彼女の元気な雰囲気にぴったり合うように思えました。
「ありがとう、たるひちゃん。これ、大切にするね!」
彼女の喜びに満ちた表情がとても印象的で、私は彼女の幸せそうな様子を見て、内心で満足感を感じていました。
その後、めるさんは「たるひちゃんにはこのリボン結んであげる」と言いながら、私が選んだ鈴のついたリボンを私の首に優しく結んでくれました。「あ、ありがとうございます」と私は照れくさそうに答えながらも、彼女の優しい気遣いに心を温かく感じました。
ちりん、とリボンの鈴が優しい音を立てるたびに、私はこのリボンがめるさんからの贈り物であり、特別な意味を持っていると感じていました。