第16話 決着
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「やっと、満足のいく一撃が通ったわ」
りあさんはいつもの冷静さを保ちつつも、その一撃の効果には内心満足している様子です。
タランドスの右目の周りは、なんだかピクピクしていて、ドットみたいなものが飛び散っています。
どうやらりあさんの一撃で、タランドスは目が見えにくくなっているみたいです。
攻撃が当たったことで、タランドスはちょっと混乱しているようにも見えます。
「いまが攻め時よ!」
キャロルさんはタランドスに向かって猛ダッシュします。
「シャイニーライブ」のバフによって強化されたその動きはまるで疾風のようです。
「さあ、見せてあげるわ。オトメの真骨頂を!」
キャロルさんが叫びながら、タランドスに向かって猛然と突進します。
彼女のハルバートは光を帯び、彼女の動きは素早く、まるで舞うように見えました。
いまのタランドスは、キャロルさんの攻撃に反応するのがやっとのようです。
キャロルさんはハルバートを機敏に振り回し、一撃、また一撃と繰り出します。
彼女の攻撃は、タランドスの皮膚を切り裂き、傷口からは謎の液体が飛び散りました。
「これがオトメの力よ!」
ただのハルバートでの連続攻撃です。 ですが、その攻撃は、タランドスを圧倒し、大きなダメージを与えています。
タランドスは彼女の速さに対応できず、ただただその攻撃に耐えるだけでした。
「あとHPは少しです……!」
キャロルさんの猛攻により、タランドスの半分残っていたHPは、もう残りわずか1割まで減少していました。私は追い打ちをかけるために狐火を召喚しておきましょう。
しかし、その時、タランドスの左目に予期せぬ光が宿ります。
まるで最後の力を振り絞るかのように、タランドスは自分の斧を捨て、急にキャロルさんのハルバートを掴みます。
「あらやだ、これはちょっとマズい展開ね…!こんなトリック、予想外だわ!」
彼女の声はいつもとは違い、少しの緊張を含んでいました。
その時、タランドスの様子が変わりました。
タランドスはキャロルさんのハルバートを掴んだまま、突如口を大きく開け、何かがチャージされているように見えます。周囲には、まるでエネルギーが集中しているかのような異様な光と音が広がり始めています。
その時私は……
「クダ!神通力を強めてください!」
クダはタランドスの首に巻き付きながら、その力を一層強めていきます。
タランドスの首の動きは、クダの力によりわずかに制限され始めますがまだ足りません!
私はキャロルさんに駆け寄ります。
「肩を借りますね」
キャロルさんの肩に飛び乗り、その肩から一気に跳躍します。
タランドスの顔が目の前にあります。
今にもビームは発射されそうです。
私の中で恐怖が渦巻いている。でも、今躊躇っていたら、キャロルさんが……
だから、私は飛ぶ。ただ前だけを見て
「クレッセントストライク……!」
全身の力を足元に集中させた一撃、今は使えないトランスを使った時に覚えたスキルです。
宙返りしながら三日月のような軌跡を描きます。
「いっ……!」
私は力を込めてタランドスの顔を蹴り上げます。
馬鹿みたいに硬い顎です。
あの時ほどの威力は出せませんでした。
きっと、トランスになにかあるのでしょう。
私の攻撃は、キャロルさんを狙っていたタランドスの顔を上向きにさせます。
宙返りの最中、私は狐火の存在を思い出しました。
「撃つならきっとここですよね」
私は逆さまの状態で、狐火をタランドスのチャージをしている口に向けて四発発射します。狐火はタランドスの口の中に直撃し、そこで大爆発を起こしました。
その爆発の反動で、私自身も吹き飛ばされます。空中で体をなんとかしようともがきますが、その衝撃は予想以上に強く、私は戦場の遠くへと吹き飛ばされてしまいました。
「たるひちゃん!?大丈夫?!」
「たるひちゃん、大丈夫かしら!?無茶しすぎよ!」
「かなり飛んだが、大丈夫か!?しっかりしろ!」
「たるひ、大丈夫?無理はしないで」
目を開けると、戦闘の喧騒がすっかり静まり、私の周りには仲間たちの安堵の表情が広がっていました。
みんなが私の方へ集まってきているのに気づきます。一体、何があったのでしょう?
「私は気を失っていたんですか?」
「あら、そんなことないわ。ただのスタンよ、疑似気絶みたいなものね。ドラマチックな展開だったわ」
周りを見渡すと、倒れているタランドスの姿が目に入ります。戦いはもう終わっていたんですね。体にはまだ痛みがあるような気がします。HPは半分と少し削れているみたいです。
「それにしても、たるひちゃん、さっきは本当に助かったわ。ビームから守ってくれて、まるで映画のクライマックスに現れるヒーローみたいじゃないの」
私は頬をわずかに赤らめ、恥ずかしそうに言います。
「私はずっとあれだけを警戒していたので……」
レオンさんが、私の方を見ながら補足してくれます。
「結局タランドスはたるひの最後の爆発で倒れたんだ」
「私はあのびゅーんって蹴り上げるやつみたことあるんだよ!前はもっと速かった気がするけど!」
彼女は耳と尻尾を振りながら、手を使ってその動きを表現します。全くわからないですが……
「たるひも無事で本当に良かったわ。だけど、もう休む時間はないの。報酬を受け取る時間があとわずかなのよ」
りあさんが残り時間を心配して教えてくれます。
「あらやだ、30分あるはずの時間が、もう5分しか残ってないじゃないの!」
私たちはボスエリアを抜けて急いで最終エリア【フォーチュンズサンクチュアリ】に辿り着きました。
そのエリアに一歩足を踏み入れると、無限に広がる星々の煌めきと、時間の概念が曖昧になるような神秘的な雰囲気に包まれます。
「さっきみたいな雰囲気が嘘のような空間ですね……」
周囲には色とりどりの星雲が漂い、遠くには輝く星々が瞬いているみたいに見えます。
「この中心にあるクリスタルに触れればクリアになるのよ」
そのクリスタルは周囲の空間に幾何学的な光のパターンを映し出しています。
「最終エリアは全部この部屋に繋がっているみたいね」
彼女の言葉に、私たちはそのクリスタルの周りを囲むように立ち、その美しさに見とれながら、一人ずつ触っていくのでした。
私の番になった時
【スキルポイントの書を入手しました。】
【15000CCを入手しました。】
【無銘の大太刀を入手しました。】
無銘の大太刀?
無銘の大太刀
レア度:-
古代から伝わるこの大太刀は、製作者が不明で、持ち主によって名前が変わるとされています。この刀は持ち主の魂を映し出す特性を持ち、魂がなければその真の力を発揮しません。真の戦士の手に渡った時のみ、その全力を解放すると言われています。
「あら、さっきのタランドスの武器がそのままドロップしたわ」
キャロルさんがさっきまで相手にしていた。タランドスの斧を持っています。
曰くタランドス・レガシーらしいです。
「この大太刀引き抜けもしません……」
説明はすごく強そうなんですが、戦士の魂がないせいでしょうか?
「たるひちゃん、それが今回もらったやつ?」
めるさんが大太刀を抜こうとしている私をみて興味深そうに近づいてきます。
「そうなんですが、装備できないんです」
「んー、たるひちゃん、それ多分打ち直さなきゃダメね。でも、たるひちゃんは刀が使えるのかしら?」
キャロルさんがそう言いながら話に加わってきます。彼女の声には、専門家としての知識と関心が感じられます。
「スキルは持っていますが、実際にこの刀を使うのは全く未知への挑戦です。でも、私は使ってみたいです。この刀を自分のものにすることで、私も強くなれるかもしれません」
「たるひちゃん、その刀は特別よ。私が手を加えて、あなたにふさわしい武器に作り変えてあげる。それと、打ち直し中はあたしの試作品の刀を貸してあげるわ。これもなかなか使えるものよ。まずはこれで練習してみるといいわ」
「キャロルさん、ありがとうございます!」
彼女の試作品の刀を手に取ると、その重みに竹刀との違いを感じさせられます。
まずはこれに慣れるところから始めないといけませんね。