第15話 ミノス=タランドス(2)
11/20 改稿済
レオンさんが前線に立ち、タランドスの猛攻を盾で防ぎます。
「俺がメインで盾をする。種族的に少しタフさには自信があるんだ」
その堅牢な防御姿勢はタランドスの攻撃を次々と跳ね返します。彼の盾は、タランドスの斧の衝撃を巧みに吸収し、軌道を微妙に変えることで大ダメージを回避しているようでした。
「あら、レオンちゃん。かなり上手いじゃないの」
その隙をキャロルさんは見逃しません。
「なぎ払い」というスキルを繰り出し、敵の横腹に強烈な一撃を加えます。彼女の動きは素早く鋭く、ハルバートが敵の脇腹を切り裂きます。
一方、りあさんは遠くから弓を構え、タランドスに牽制の矢を放ちます。
「硬くてダメージが通らない…」
タランドスの一番の強さはキャロルさんの攻撃以外ほとんどダメージが通らないあの皮膚ですね…
「たるひちゃん!さっき新しいスキル取ったの!」
「さっきってもしかして倒れてる最中にそんなことしてたんですか!?」
めるさんの突拍子もない行動には、いつも驚かされます。
シャイニーライブ
効果:このスキルを使用すると、一定の時間、対象の味方一人の攻撃力と速度を20%上昇させます。
効果時間 60秒 CT30秒
「これは、今すぐキャロルさんに使いましょう!あとハーモニックシールドを味方に使えるなら、レオンさんに……」
その時、タランドスの口が恐ろしいほど大きく開きました。
何か悪い予感がします。
「クダ!呪縛と神通力でなんとか顔を固定してください!」
私が竹筒を開けてクダを召喚すると、クダは瞬く間に空を切り、タランドスの首に巻き付きます。
クダが敵の首に巻き付いた瞬間、そこからビームのようなものが発射されました。
クダの行動のおかげで、タランドスの顔は固定され、ビームは僅かに私の横をかすめて外れます。
今のはなんなんですか!さっきまで斧で戦ってたのになんで急に口からビームなんて撃ってくるんですか!
「クダ!絶対に離さないでくださいね」
クダは小さな声で「キュウ」と泣いたような気がしましたが頑張ってもらいましょう。
「二人とも大丈夫かしら?これは長期戦は良くないわね」
キャロルさんは的確にタランドスの足を狙って態勢を崩そうとしていました。
「こうなったら使ってみるしかないか。まだレベルが低いから効果時間も1分だが、ないよりはマシだろう。ドラゴニックドライブ!」
その言葉と共に、彼の姿が3メートルほどの竜へと変貌しました。
タランドスの大きさと比べるとまだ小さく見えますが、これはすごい味方です!
「変身はいいんだけど、武器使えなくなってない?」
りあさんは冷静に状況を分析します。
確かにレオンさんの竜の姿には、彼がいつも携えている盾や剣の姿はありませんでした。
「「くっ、そういえばそんなサイズの武器は持ってなかったな……」」
彼の竜としての姿は圧倒的な力を持つものの、通常の戦闘スタイルとは大きく異なるみたいです。
「竜なら殴り掛かればいいんだよ!」
めるさんが元気よく提案します。
レオンさんは一瞬考えた後、その巨大な爪と威嚇するような牙を駆使し、タランドスに向かって猛然と攻撃を開始しました。
「レオンちゃん考えることをやめたわね」
「キャロルさん、これで勝てるでしょうか?」
「無理ね」
彼女の言葉は、タランドスの圧倒的な強さを改めて認識させますが、同時に私たちに戦略を考える必要があることを暗に示しています。
「レオンちゃんが竜の姿を保っている間に、おそらくタランドスのHPは半分くらいまで削れるでしょうけど、それからは多分レオンちゃん抜きで戦うことになるわ。準備はいいかしら?」
「がんばるよー!キャロルさんに新スキル使うんだから!」
「私もなにか取っていれば良かったんですが…」
いまこの土壇場で取るような器用なことは私にはできそうにもありません。
「大丈夫。たるひ、私に魔法を撃ってみて?」
りあさんが急にそんなことを言い出しました。
「なにを言ってるんですか!?」
「そういうスキルだから気にしない。風のほうでお願いね」
そういうスキルがあるらしいですが…
びっくりするので最初から言ってください。
「で、では。秋葉の舞」
「エーテルドレイン」
紅葉が舞い上がって旋風が形作られます。しかし、その魔法はりあさんの手の中へと消えていきます。
「ふしぎだねー。これでどうなるの?」
「私の弓にエンチャントされるの。風だと、速度と貫通力が上がるのよ。急所を狙って効果的な一撃を加えてあげる」
りあさんは、人形のようににっこりと笑いながら答えます。
戦場の中心では、竜に変身したレオンさんとタランドスが壮絶な戦いを繰り広げています。
レオンさんの竜の姿は速さはないようですが、あのタランドスの斧をはじき返すほど硬いみたいです。
レオンさんは鎧のような重厚な尻尾を武器にし、タランドスの不意を突いて一撃を加えました。
タランドスは、レオンさんの硬いうろこに苦戦しながらも、持ち前の力で激しい斧の一撃を繰り返し振り下ろしています。斧と竜のうろこがぶつかるたびに、金属的な音と共に火花が散っています。
「そろそろレオンちゃんも限界の時間ね。めるちゃんバフをくれるかしら」
ちょうど1分がたとうとしていたときキャロルさんが合図をします。
「はーい!シャイニーライブ!」
めるさんがスキルを発動させると、キャロルさんがスポットライトのような輝きに包まれます。
これがシャイニーライブのバフの効果なのでしょう。
「私もキャロルさんの援護でついていきます」
先ほどのビーム攻撃が再び来れば、たとえキャロルさんでもひとたまりもないはずです。
間に入れれば盾くらいにはなるかもしれません。
その時、レオンさんの姿が徐々に変わり始めます。ドラゴニックドライブの効果時間が終わり、彼は再び元の姿に戻っていきます。竜の姿から解放されたレオンさんは一瞬疲れた様子を見せますが、すぐに立ち直り、盾と剣を手に再び戦闘態勢に入ります。
「まともに防げる状況じゃないわね。さあ、行きましょう!」
強化されたキャロルさんがすごい速度で走っていきます。
「レオンちゃん、助けに来たわよ!」
キャロルさんはレオンさんの首根っこを軽々と掴み、彼の反応が「え?は?」という驚きに変わるのも無視して、「反動があるのなら少し休んでなさい」と言い、彼を後ろに向かって投げ飛ばしました。
「ここからはまたあたしが相手になってあげるわ」
その言葉と共にキャロルさんのハルバートがタランドスに向かって力強く突き刺されます。鋭い刃が敵の肉を切り裂き、その一撃はタランドスを後ろに一歩下がらせるほどの威力を持っていました。
その間に、やっと戦場に追いつきました。
周囲に待機させていた狐火をタランドスへ向けて放ちます。私は、キャロルさんが先に攻撃した部位を狙いました。狐火は青白く輝きながらタランドスの傷口に集中し、炎の渦が傷口を包み込むようにしてダメージを与えます。
戦いが激化する中で、タランドスは巨大な斧を振り上げ、私たちに向かって攻撃を仕掛けようとしました。しかし、その瞬間、何かが瞬きするような速さで通り過ぎます。
ほんの一瞬後、タランドスの巨体が突然激しく震え始め、悲鳴にも似た咆哮を上げます。その原因は、りあさんが放った矢でした。彼女のエンチャントされた弓から放たれた矢は、風を切るような速さで飛び、タランドスの目を見事に打ち抜いたのです。