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第11話 初めてのダンジョン(1)

11/20 改稿済


12月28日


 次の日、私はいつものように朝早く起きて、おじいさまの元へ向かいました。しかし、到着すると、道場におじいさまの姿はありませんでした。不安とともに家のほうへ戻ってみると、キッチンにはおばあさまがいました。


「おばあさま、おじいさまはいらっしゃいませんか?」

 と私は尋ねました。


 おばあさまはやさしい笑顔で答えました。

「幸春さんは用事ができて、数日間出かけることになりましたよ。年明けまでには戻るそうです。」


「そうなのですか……」

 こんな時期にいきなり出かけることがあるのでしょうか?私はどことなく不安を感じながら部屋へ戻りました。




 ツェントラルライヒ


「まずは装備をどうにかしないといけないわね。何事もオシャレから始まるものよ!」

 私たちの姿を見てキャロルさんはそう言いました。


「私たち、最初の装備から変えてないもんね。この町のプレイヤーのみんな、いろんな恰好でびっくりしちゃった!」


「アルフェンシュタットに武器とか、他にも色々売ってたかもしれないですが、そんなことも考えずにこっちに来ちゃいました…」

 結局料理道具も買えませんでしたし…


「二人とも、アナタたちの職業には鎧はちょっとオーバーかしら。めるちゃん、この武器が似合うわよ」

 キャロルさんはそう言いながら、ショートソードをめるさんに渡しました。


「えっ、これ、さっきお店で見たやつだよね…?」

 めるさんは少し戸惑いながら、キャロルさんに尋ねました。


「これはまだ完璧じゃないけど、気に入ってくれたら嬉しいわ。あなたがタンク役なら、これも持っておいて損はないわね。腕に巻くタイプのバックラー、とっても便利なのよ」

 キャロルさんは、自作のショートソードを小さめの丸い盾と一緒にめるさんに渡しました。


「キャロルさん、色んなものを作っているんですね。すごいです……」

 私は、同じ日にゲームを始めたとは思えないほど多くの装備を手作りしているキャロルさんを見て、その才能と努力に心からの尊敬を感じました。


「本当にいいの?こんなにもらっても、私には何もできないけど……」

 私は、めるさんがキャロルさんに申し訳なさそうに言うのを聞いていました。


「大丈夫よ。代わりにいつかあたしのために可愛い服を作ってちょうだい。それでバランスは取れるわ!」

 キャロルさんはウインクをしながら、陽気に笑っていました。


「次は防具だけれど……」

 キャロルさんがそう言いながら、私の方を見ました。


 突然、私の画面に

【キャロルから取引申請が来ています】という通知が表示されました。



「これを受け取ってちょうだい」とキャロルさんが言い、私に向かって何かを手渡そうとしています。


「これはなんでしょう?」

 私は、キャロルさんから受け取ったアイテムを見ながら疑問を投げかけました。


「巫女服よ」

 キャロルさんははっきりと言い切りました。


 私は驚きを隠せず

「なんでそんなのがあるんでしょうか……」

 と困惑しながら言いました。もらったはいいけれど、どう扱えばいいのか非常に困ってしまいます。


「試しに行った特別ダンジョンでドロップしたのよ。本当は自分で着ようかと思ったけど、たるひちゃんにプレゼントするわ。意外と性能がいいのよ?」

 キャロルさんは笑いながら言いました。

 笑わないでください。さすがにこの恰好は恥ずかしいと思います。


「たるひちゃん、絶対似合うと思うよ!早く着てみて!」

 めるさんがワクワクしながら尻尾を立てて急かしてきます。


 その時、キャロルさんがニコッと笑いながら言いました。

「あら、めるちゃんにも何かあるわよ?」


「本当!どんなのかな?」

 めるさんの目がキラキラ輝いていました。


「これよ、犬のパジャマ、フード付きの」

 とキャロルさんが笑いながら言いました。彼女がめるさんに手渡したのは、犬の着ぐるみパジャマの防具でした。


「えぇー!!こんなに可愛いのがあるなんて!」

 めるさんは目を輝かせていましたが、その見た目からは防御力は期待できなさそうです。


「これって、お正月関連のイベントアイテムなんですよね?だからこんなに性能がいいんでしょうか?」

 私は不思議に思いながら、手にした巫女服を試しに着てみます。すると、初期防具の3倍近い能力があることに驚きました。



 キャロルさんはクスッと笑って、「特別に巫女服が強いわけじゃないわ、初期防具が弱すぎるのよ」と説明してくれました。


「じゃあ、準備はOKかしら?まずは特別ダンジョンからスタートしましょう。ちょっとだけ注意点があるから、ちゃんと聞いてね」

 キャロルさんが真剣なトーンで話し始めました。


「このダンジョンは5人じゃないと入れないのよ。私たち3人だけだと、残り2人は他のプレイヤーが入ることになるけど… たるひちゃん、大丈夫かしら?」

 キャロルさんが私に心配そうに尋ねました。


 私は少し緊張しながらも、めるさんとキャロルさんを見て勇気を振り絞りました。

「少し緊張しますが、めるさんとキャロルさんがいれば、大丈夫です」と私は微笑みながら答えました。

 キャロルさんは私の答えに安心したように微笑みます。


 キャロルさんは優しく微笑んで

「なら安心ね。あたしもめるちゃんもちゃんと付いているから」

 と言いました。


 めるさんも元気に頷き、

「うんうん!どんな人が来ても追い返してあげるよ!」

 と宣言しました。


「あら、それはさすがにダメよ」とキャロルさんが笑いながら言い、めるさんは「えへへ」と照れくさそうに笑っています。


 私は二人のやり取りを聞いて、心の中で笑っていました。キャロルさんとめるさんの存在は本当に心強いです。



 日替わり特別ダンジョン 28日 1日目


 参加条件 5名


「私たちはPTを組んでいるですが、この場合どうなるのでしょうか?」

 私はキャロルさんに質問しました。この特別ダンジョンのシステムについて、まだよくわかっていませんでした。


 キャロルさんは説明してくれました。

「メンバーが揃った瞬間にダンジョンに飛ばされるのよ。だから、私たち3人で行くと、残りの2人は他のプレイヤーになるわね。」


「つまり、2人のプレイヤーチームと一緒になるってことですか……」

 そんな会話を交わしていると、突然、目の前の景色が変わり始めました。周囲の風景がぼやけていき、次の瞬間、私たちはどこか迷宮を彷彿とさせる空間に飛ばされていました。壁には複雑な彫刻が施され、不気味な光がそこかしこから漏れていました。


「ここがその特別ダンジョン……?」

 私は驚きを感じながら周囲を見渡しました。キャロルさんとめるさんがいるのを確認して一息つくと、残り二人のプレイヤーを探してみます。


「So cute!小さくてカワイイわ!」

 突然、誰かが後ろから私に向かって抱き着いてきました。その感触は、なんとも重かったです。


「重いです…… 誰ですか?」

 振り返ろうともがきました。

 

 その時

「あ、あ、天使だー!!」とめるさんが突然叫びました。私はめるさんの方を見ると、彼女の目は大きく見開かれ、何かをじっと見つめているようでした。


 私はゆっくりと振り返り、私に抱き着いている人物見上げました。その瞬間、私たちがこのダンジョンに飛ばされた後、初めて出会う他のプレイヤーになるのでした。


「Hi! 私はりあっていうのよ。よろしくね、狐ちゃん、ワンちゃん、あなたは…」

 バター色に輝く金髪を持ち、身長はやや高い女性でした。彼女の背中には、白い羽が広がっており、その姿は確かにめるさんがいうように天使のような美しさでした。


 りあさんはキャロルさんを見て、どのように呼んだらいいのか少し困っている様子です。




 その時、キャロルさんが彼女の特徴的な言葉で応じました。

「あたしはキャロルよ、麗しのオトメと言ったところかしら」

 彼女の自己紹介は、いつも通り洗練されていて、りあさんを含め私たち全員を笑顔にします。


 めるさんが元気に挨拶をしました。

「私はめるっていうんだよ!」


 私は、少し苦笑いしながら言いました。

「私はたるひと言います。ところで、そろそろ離してもらえないでしょうか?」りあさんが私に抱きついたままだったので、ちょっと窮屈に感じていました。


「もう少しいいじゃない?」

 りあさんはそう言いながら、私の狐耳を勝手に弄び始めました。彼女の手つきは軽やかで、まるで狐耳が新しいおもちゃのようでした。


 その時、キャロルさんが何かを発見したようで、私たちから少し離れた場所を指差しました。

「あら、これは何かしら?トカゲのしっぽみたいなものがチラリと見えるわね」


 私たちはキャロルさんの指差す方向に目を向けました。確かに、地面から生えている尻尾のようなものがあり、それはまるで生きているかのように動いていました。


「あれは、もしかしてこのダンジョンのモンスター?」

 めるさんが少し不安げに言います。


 私たちは警戒しながら、その謎めいた尻尾に近づいてみることにしました。

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