第二話 適応なし。
最後の闇の魔石に魔力を注いでも何の反応も起きなかった。
「魔力と魔石が共鳴しないだと……?いやそんなことはありえない過去の事例でもそのようなことは確認されていない………。そもそも属性に適応しない魔力がこの世に存在するのか………?」
父のドラグは独り言のようにブツブツと語りだした。父の独り言からこのような事例は確認されてきてないらしい。魔法大家であるパイレッジ家の当主である、ドラグが言うのだから現在確認されている範囲の中では間違いないのであろう。
ではなぜ僕の魔力は魔石と共鳴しないのだろうか?考えられる可能性はいくつかある。
一つ目はまず魔石が壊れている可能性。これはないと思う。まず魔石が壊れるという話は聞いたことないし、そもそも先程ドラグが実演しているからだ。
二つ目は魔力をうまく注ぎ込めてない可能性である。しかしこれもまた考えづらい。父程の魔法使いになると、自然と魔力の流れを感知することができるようになる。そのため、もしうまく魔力を注ぎ込めていないなら、父は絶対に気づくはずである。
となると、僕にはあと一つの可能性しか考えられない。それは僕の魔力自体が特殊であること。これは否定しづらい。それは僕はそもそもこの世界に転生してきたため、何かイレギュラーなことが起こっても不思議ではないからだ。
しかし、そうすると「転生」という一言だけですべてが完結してしまう。果たしてそれは本当に理由を説明したことになるのだろうか?それに僕はこのまま行くと実は結構まずいのではないかと思っている。
国内でも有数の魔力大家であるパイレッジ家の長男がまさかの魔法の才能どころか、《属性魔法》すらまともに使えない落ちこぼれになってしまう。そうなれば、パイレッジ家の失墜は免れることはできないだろうし、最悪家族からも一家の面汚しとして、追い出されるかもしれない。最悪どうにかして《属性魔法》は使えるようになりたい。
「はぁ……全くどういうことだ。このままではお前は一家の面汚しだぞ。理解しているのだろうなマーシュ。」
「…………はい。」
今後の心配をしていたら、そのことを指摘されてしまった。ただ、流石に魔力がなんの属性の適応にも適応していないのに、《属性魔法》を使おうとするのは非効率この上ない。まともに修練を積んでも、そこらへんの落ちこぼれと並べばいい程度で、どっちにしろ一家の面汚しというのは変わらない。
「私が考えるにお前には2つの選択肢があると思う。一つ目はこの家から出てき、軍に所属することだ。二つ目は本気で修練を積み《属性魔法》を使い魔法使いになることだ。」
「しかし、いくら修練を積んでも適応のある《属性魔法》を適応なしで超えるのは無理難題です。」
「……だから本気で修練を積めと言っておるのだ。お前にはもう選択肢が阻められている。だから今から死ぬ気で修練を積めば、並程度には《属性魔法》行使することは可能だろう。それとも軍にでも入るか?」
父ドラグが本気で言っていることは肌で感じることができる。軍に所属するということは実質家を追い出し、勘当されるのと同じと捉えていいと思う。このようなことを7歳程度の餓鬼に言う父ドラグは鬼畜だと思うが、実際に彼の言う通りこの2つの選択肢しかないのだろう。軍に入ることは論外。つまり《属性魔法》を死ぬ気で習得するしかないということである。
「………決めました、父上。僕は《属性魔法》を行使するために死ぬ気で努力します!」