6話
これで俺の真の力もはっきりとしたな。すっきりしたぜ。
「ありえぬ……こんなことがあっていいはずがない……」
爺さんがめちゃくちゃうろたえている。そこまで驚かなくてもいいんじゃないかと思うんだが、最高神様の力を超えちまってるんだから驚くのも無理ないのかな。ざっと100倍以上の力を俺個人で有してしまっているって考えたらとんでもないな。どれくらい神様がいるかわからないけど全員集めても俺のほうが強いんじゃないか? 俺の時代がここに始まったな。
「爺さん自分で測っておいて信じられないみたいな顔するのはやめようぜ。いくら俺の力が凄かろうが爺さんには関係ないだろ?」
「ぬかせ!! わしら神よりも力を持っておる生命体がおる時点で脅威なのじゃ。今までわしらがこの世界のすべてを統べておったのに、おぬしの登場でそれが揺らいでしまうではないか。まさに、おぬしの気分次第でこの世界が変わっていしまうんじゃぞ!?」
そんなことは考えても見なかったな。そっかぁ、もはや世界は俺の思うがままってことか。そこまでの規格外の力なのか。
「爺さんが俺をここに呼び出したりしなかったら俺はこの力に一生気が付くことなく生を終えていたんだ。これって爺さんのせいだよな? もっと反省したほうがいいよ」
しかし、ロドリゲスと間違えて呼び出したことの復讐がまだ終わってないんだよな。あったこともないロドリゲスとやらが呼び出されていればこの爺さんにいいように使われていたんだろう。100万くらいの力て言ってたから爺さんにかなうわけもないしな。俺がロドリゲスを救ったといっても過言ではない。そのおかげで俺は力を自覚することができたんだ。いつかロドリゲスにもしっかりお礼をしたいな。
「すべてわしの失態じゃ。こうなっては仕方あるまい。おぬしに頼みたいことがあるのじゃ」
「へぇ、どんな頼みなの? 面白そうだったら聞いてあげてもいいかも」
俺は力を使う機会に飢えている。
もし、爺さんの頼みとやらが俺の力を使うことができるのなら使われてやることもやぶさかではない。どうせ、元の世界に帰ったところでこの力を使う機会なんて訪れないんだからな。
「本当はロドリゲスに頼む予定じゃったんじゃが、異世界で暴れているモンスターどもを滅ぼしてほしいんじゃ。こいつらは実に厄介での、おぬしのような突然変異で生まれ、我らにも迫る力を持っておるんじゃ」
「爺さんに近い力を持ってるんだったらロドリゲスじゃかなわなかったんじゃないか? ロドリゲスは捨て駒だったのかよ」
「それは違うぞ。ロドリゲスには、神々から少しずつ集めた力を授けて異世界へ送り出す予定じゃったんじゃ。その力があればモンスターどもとも互角以上に渡り合える計算じゃった」
神々から集めた力か。ちょっと興味はあるが俺がそれを貰ったところでほんの少し力が上がるだけで大した変化はないだろうな。ごめんなさい神様、せっかく用意してもらったものを無駄にしてしまって。
でも、なんでめんどくさいことをするんだろうか? 爺さんたちが自分で異世界に行ってきてモンスターを倒したほうが絶対に早いのにな。
「なんで爺さんが行かないんだ? そっちのほうが手間が少ないと思うんだけど」
「そういうわけにも行かんのじゃ。神もいろいろな制約に縛られておっての。世界に干渉するときはその世界に合わせた力まで弱体化してしまうのじゃ。仮にわしがその世界に行ったら、10万位の力になってしまうじゃろうな。それではモンスターに太刀打ちできん。わしは今年で2万3051歳じゃ。こんな爺さんが強くてはおかしかろう? とうに死んでおるはずじゃ」
年齢も関係あるのか? それじゃ。どの神様も世界に干渉するときの弱体化は似たようなもんだろうな。そんな爺さんになっても10万も力を持ってるのは逆に凄いと褒めるべきなんだろうか。
「それで、ロドリゲスを使おうと思ったわけか。強くてもおかしくない存在なら弱体化を受けないってだな」
「いや違うぞ。この制約を受けるのは神々だけじゃ。だから、人間であるロドリゲスであれば何も関係はない。だからわしが選んだんじゃ」
違うのかよ。わかりきってる感じで言っちゃって恥ずかしいんだが。
でも、これでいろいろ謎は解けてきたな。ロドリゲスが呼び出されたのは異世界のモンスターどもを倒すため、俺はそれのシステムの手違いというまあ正常に判断されて呼び出されたわけだな。
「でもそんなやばいモンスターがいる世界なんて秒で滅んでしまうんじゃないのか?」
「そこは世界の修復力でじゃな。まあ、難しい話になるからの、簡単に言うと、世界が危機に瀕したときにそれに対抗する存在を生み出すようになっておるのじゃ。それで本来は均衡が保たれておるのじゃがな。今回はレアケースでの、おそらくこのままでは人類は滅びてしまうじゃろう。それほどまでに強大な存在なのじゃ」
「ふーん、じゃあ、その世界にはかなり強い人間たちが生まれてるってことだよな? 神様たちよりも強い?」
「そんなわけなかろう。せいぜいわしらの半分位じゃろう。それでも本来生まれるはずもない程の力を持っておるのじゃ。ロドリゲスであればわしと同等力を持てるはずじゃったんじゃ」
神様の半分くらいの人間か、冷静に考えたらとんでもないけど俺の何百分の一とかのレベルだよな。実は地球も危機に瀕していてそれを救う救世主として俺が生まれたんじゃなかろうか? 絶対違うか。それだったら俺が神様たちを超える力を持ってる説明が付かない。
「それで、何とか持ちこたえてる感じか。俺にモンスターどもを倒して来いっていう話だよな」
「その通りじゃ。お願いできんじゃろうか?」
「しょうがないな。俺は力を試す絶好の機会だ。今は気分がいいし行ってやるよ」
異世界で大暴れできる、今から楽しみだ。でも、ほどほどに加減をしないと世界ごと滅ぼしてしまうかもしれないな。気をつけよう。