空の彼方、
窓から差し込む日差し。
若干水滴の張り付く両開きの窓を開け放ち、強い光に目を細める。
ずっと。遠い空。
台風一過の真っ青な空。
季節外れの11月の台風は、ちょっとだけ季節に反抗したかっただけなのかもしれない。
何事もなく。少しだけ激しい雨と一緒に。
それだけに静かでおとなしい台風だった。
とりあえず今日も平和な朝だった。
「おはよう」
「あぁ」
ガラステーブルを挟んで新聞を広げた親父と向かい合って座る。
そこには俺のための朝飯とコーヒーと弁当が用意してあって、親父は既にスーツ姿だった。
コーヒーをずず……と飲む俺がボーっとテレビのニュースを見ながら、
「台風大したことなかったな」
「そうだな」
「屋根とか大丈夫だった?」
「さっき家の周りを見てきたが問題なかった」
「ならいいや」
朝の親子の会話、終了。
と同時に親父は新聞を折りたたむと、会社の鞄を持って、
「じゃあ行って来る。今日は遅くなるぞ」
「はいよ。夕飯は?」
「接待だから食ってくる。冷蔵庫にあるもんで適当にやっとけ」
「了解」
俺はテレビから目を逸らさずに答える。
正直、親父と目を合わせるなんて行動はここ2年間ほとんどしていない。
嫌いとかそんな感情じゃなかったし、親父も何も言ってこない。
よって意識することでもなかった。
親父が背をこっちに向けたのを気配で確認して、
「いってらっしゃい」
「いってきます」
だからきっとこれは問題のあることではないんだ。
ドアの閉まる音。
この時点で午前7時30分。
俺が家を出て高校に行くまでは15分。
ホームルームが始まるのは8時00分。
つまり、俺には毎朝10分の余裕があった。
顔を洗って、制服のブレザーに袖を通し、鞄に弁当を放り込む。
この間5分。
それが終わってから俺はリビングの隣の和室に鞄を持ったまま移動する。勿論テレビの電源は切って。
和室の一番奥。半畳ほどのスペースを占領する仏壇。
「今日も……一日が平和でありますように」
その前に膝をついて毎朝、5分間俺は手を合わせ目を閉じる。
もはや習慣になっており。
一種の儀式みたいなものだった。
仏壇の上には写真が飾られてあり、そこにはまだ若き日の母親。
仏壇の上には置物が置かれており、そこには生まれるはずたった弟の名前。
母親と弟が死んでから4年。
俺はこの挨拶を欠かしたことがなかった。
「じゃあ……」
5分が経過する。
鞄を持って立ち上がった。
「行ってきます」
電気を消して。
一歩外へ。
二人で住むには多少贅沢な家でも外から見たら小さく見える。
当たり前だ、本当は4人で住むはずだったのだから。
錆がところどころ付いた自転車を引き出し、水滴を拭き取ってから跨る。
外に向かって大きく足を踏み込んだ。
商店街を抜ける200メートルぐらいの長い下り坂。
民家とか八百屋とか魚屋とか服屋の背の低い家に混じって、青い空が広がっている。
そら。
見上げた先には何が広がっているのか。
鴉が1羽、向こうの方で羽ばたいた。きっともっと遠くに行くのだろう。
遠い遠い空の彼方に。
遠い遠い空の彼方に。
遠い遠い空の彼方に
遠い遠い……
これで連載二つ目です…(汗
他のとは若干違った雰囲気になりますが、そこらへんも含めて精進したいと思います。
でも他の作品でもコメントはないですが結構来てくださる方がいるようなので、それなりに頑張って、やっていきます。では