vsラースドラゴン 2
ロンドが最終的にたどり着いたのは、以前行った自身の身体の射出にヒントを得た高速移動だった。
結局彼には己の身体を賦活し、高速移動ができるようになるシンプルな方法を使うことはできなかった。
けれどロンドは魔法を射出する方法を応用して、己の身体を本来よりはるかに速く動かすことができるようになった。
彼が会得したのは、己の身体に毒魔法の霧を纏わせ、魔法自体を高速で射出するやり方である。
魔力を籠めればそれだけ毒の威力は上がり、同様に魔法の速度も上がる。
ロンドの毒魔法は、通常の魔法と比べるとコストパフォーマンスの面で優れている。
そのため彼は魔力消費を気にしなければ、どこまででも速度を上げることができるのだ。
「うっぷ……やっぱり気持ち悪いっ!」
移動の際に身体を遅う浮遊感はなくなることはなかったが、人間とは恐ろしいもので何度も繰り返すうちに慣れてきていた。
ロンドはこみ上げてくるものを抑え込みながら、ラースドラゴンに接近。
そして拳を固く握った。
「ポイズンナックル、アクセル!!」
ロンドの拳の周囲に液状の毒が生じ、一瞬のうちに硬化する。
やっていることは以前使った、ポイズンウォールソリッドの応用だ。
己の拳の周囲に毒を出してから硬化させ、攻撃力に転化する。
この際に攻撃の威力が最も高くなるのは、複合毒である死に至る病を使用した時だ。
故にロンドの拳は青紫色に光っていた。
そして、まだ終わらない。ロンドが更に使うのは、再びの魔法の二重発動である。
彼は己の腕周りにポイズンアクセラレーションを発動させ、攻撃を加速させた。
このようにポイズンアクセラレーションでは、使用する箇所に気体状の毒を留めておけば一部を加速させることも可能となる。
加速した毒の拳が、ラースドラゴンの腹部を強かに打ち付けた。
「Gyaaaaaaa!?」
その衝撃は、ラースドラゴンの巨体が浮き上がるほどだった。
ラースドラゴンは憤怒の表情をしたまま、ボールのように跳ねて後ろ側にひっくり返る。
あまりの威力に、攻撃を放ったロンドがびっくりするほどだった。
「全力で放つと……ここまで威力が出るのか――痛っ!?」
毒が剥がれ落ちると、今しがた魔法を使った右腕に痺れるような痛みが走る。
明らかに、ロンドの身体が魔法の威力に追いついていない。
そう何度も連発できるような技ではないのは間違いない。
だがそれでも近接戦闘の術を手に入れることができたのはデカい。
何より、この技を魔法使いにしか見えないロンドが使うことで相手の意表が突ける。
まだ完全にというわけではないが、アルブレヒトを相手にしても戦う自信がついていているという実感もある。
「俺はこんなところで立ち止まるわけにはいかないんだよ――ポイズン、ドラゴンッ!!」
アマンダとキュッテが追い込みをかけていたところに、更に最大の魔法であるポイズンドラゴンを合わせる。
ロンドの攻撃のフルコースを食らったことで、ラースドラゴンは完全に致命傷を負っていた。
アマンダに翼を折られ、キュッテの魔法で何度も転ばされ、ロンドの攻撃を食らい続けながらHPを削られることで、ロンド達は無事討伐に成功するのであった――。




