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【コミカライズ】毒殺された世界無双の毒魔法使い  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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把握


 それぞれの戦闘能力については、大体の把握ができた。

 ロンドが目を見張ったのは、やはりキュッテの成長速度である。


 彼が知っているキュッテの魔法は、落とし穴の作ったり段差を作って相手をこけさせたり、ドームや壁を作って味方を守ったりといった補助的なものばかりだった。

 けれど既に彼女は、攻撃魔法を問題なく使えるレベルにまで仕上げて見せていたのだ――。



「大地よ!」


 そう言って手を振るうキュッテの意に沿う形で、大地が隆起し土の棘が生まれていく。


「ぷぎいいっっ!!」


 棘はキュッテを見て鼻息荒く駆けてきたオークの足の裏を突き刺していった。

 オークは強靱な筋肉と体躯を持つが、その分だけ体重は重い。

 棘は魔法自体の威力にオークの自重が加えられることで、より深くまで食い込んでいく。

 そしてその場所へ、オークを完全に縫い付けてみせる。


「大地よ!」


 キュッテはオークの四方に土の壁を作り出し、相手の身動きを完全に封じる。

 彼女は目を閉じながら、意識を集中させる。

 そしてピッと、自分の両腕をクロスさせた。


 すると土の壁から、土の槍が飛び出していく。

 キュッテが放つ土の槍は、鈍足だが威力が高い。

 再び自重を利用するためだろう、下から上に伸びていくような土槍が、オークの腹部を四方から突き立てていく。

 オークはビクビクと痙攣しながらも失血を続け、すぐに動かなくなった。


「ふふん、どうですか。あれから頑張って、一人でも戦えるようになったんですよ」

「いや……すごいな。めちゃめちゃ改良されてるじゃないか」


 ロンドはコクコクと頷きながら言う他はなかった。


 キュッテはソロでも活動ができるよう、威力が低い土の礫ではなく、高いが当てにくい鈍足の槍で狩りを行えるように魔法の練習を重ねてきたのだろう。


「どうやらユグディアではエルフはかなり珍しいみたいですからね。色々と面倒ごとも多いので、ソロ冒険者としてやっていくために頑張っちゃいました!」


 ロンドは街中で、エルフの人間を見かけたことがない。

 それほど稀少な存在となれば、降りかかる面倒ごとも多いのだろう。

 にこやかに笑ってはいるが、苦労も感じてきたはずだ。

 けれどそんなことを感じさせないくらい、キュッテの表情は溌剌としている。

 ナルの里を出てきたおかげで、毎日が楽しくてたまらないといった感じだ。


「……」

 

 そしてアマンダは、そんな風に楽しそうにしているキュッテを見て眉を顰めていた。

 なんとなく、彼女の言いたいこともわかる。

 ロンド達がマリー救出のためにあくせくと動いている中、変わらず楽しそうに明るく振る舞うキュッテを見て色々と思うところがあるのだろう。


 今日は連携を確認しながら、三人で手を取り合って戦うことができるよう魔物を倒してみようという話になっていたのだが……この調子だと少し厳しそうだ。


「おいキュッテ」

「はい、なんでしょう」

「少し来い。ロンドはここで待っていろ」


 それだけ言うと、アマンダはキュッテと共に木陰へと向かっていった。

 何やらボソボソと聞こえる話し声。


 何を話しているのかは気になるが、女同士の話を聞くのは野暮だろう。

 ロンドはその間に、どうやったら微毒を使って身体強化ができるようになるかを考えてみることにした。


 魔法で大切なのはイメージだ。

 故にロンドはアルブレヒトの雷魔法による高速移動をイメージしていた。


 それでダメだったのだから、少しアプローチを変えてみるべきだろう。

 自分の毒魔法を使って動きを高速化させるためには、どのように考えるのがいいのだろうか。


(毒による加速……ポイズンボールを打ち出すように、毒魔法で自分の身体を発射するようなイメージならどうだ?)


 自分の身体をポイズンボールに見立て、毒魔法を使って射出する。

 実際にやってみると……あまりの気持ち悪さに思わず口を押さえてしまった。


 体内にある毒球が、自分の身体を臓器の中から動かそうとするようで、身体中をまさぐられるような猛烈な違和感が襲ってくる。


 けれど確認してみると、ロンドの立っている場所はさっきいたところより三歩ほど離れたところにいた。

 前回とは違い、移動すること自体はできたようだ。


「けど……うっぷ、練習は宿でやるべきだな」


 ロンドはこみ上げてくるものを押さえながら、二人が話し終えるを待つのだった。


「待たせたな」

「もう大丈夫です」


 戻ってきた二人は、どこか晴れやかな顔をしている。

 少しだけ不安になったロンドだったが、二人は問題なく互いのことを気にしながら連携を取れるようになっており。

 三人での戦闘訓練は、問題なく進んでいくのだった――。

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