突破口
ロンドが解析を終えると同じタイミングで、アルブレヒトの眉間がピクリと動いた。
「ふむ……これは、状態異常? ということはあの毒をもらったのか……見事!」
パチパチパチ。
今なお燻った黒煙が広がっているしんとした部屋の中に、拍手の音だけが響く。
アルブレヒトは笑い、こちらを見つめていた。
戦いの最中だとは思えない気の抜き方だ。
まるで家の中でくつろいでいるようだ。
「マリー嬢を殺せなかったのは、君の活躍が大きかった。興味深いな……」
笑って小さく目が、更に細あった。
猫のように瞳孔が狭まった目が、ロンドへと向けられる。
ロンドは視線で射貫かれただけで、明らかに気圧されていた。
(系統外魔法、雷魔法……? どんな魔法かはわからないが……とりあえず防御性能がかなり高いのは間違いない)
雷魔法、その名からすれば恐らく雷を操る魔法のはずだ。
先ほどアマンダの一撃を食らってもダメージを受けていなかった様子を見れば、恐らく防御魔法としてはかなり有用なのだろう。
だがそれだと、なぜロンドのポイズンウェーブが通ったのかが気になる。
「隙ありっ!」
ロンドの方に視線を固定させていた隙を見逃さず、アマンダがメイスを振る。
アルブレヒトはその一撃を――あろうことか、拳で受けた。
バチバチッと、静電気が走るような音が鳴ると、アルブレヒトの右手に紫電が走る。
拳とメイスが激突し……あり得ないことに、メイスを持つアマンダの方が吹っ飛んだ。
「――うおっ!?」
アマンダはなんとか空中で制動し、メイスを手に持ったまま着地。
彼女の額には、冷や汗が流れているのがわかる。
――強い。
ロンドとアマンダの内心は一致した。
(雷魔法は――肉体の強化まで可能。近接戦闘もお手のものってことかよ)
ロンドは構文を脳内に浮かべる。
龍毒・形状は球・魔力を大量に。
「ポイズンボール!」
紫色の毒球が、アルブレヒト目掛けて飛んでいく。
彼はそれを一瞥すると、
「サンダーボール」
バチバチと稲光を発する雷の球を生み出した。
両者が激突し――一瞬のうちに、雷が毒を食らう。
ポイズンボールが蒸発し、雷球がロンド目掛けて飛んできた。
速度は下がっていたが、それでもまだ十分に速い。
ロンドが横に飛ぶと、彼が来ている服の裾に雷が当たる。
ビリビリとした感覚がロンドを襲う。
静電気を何十倍にもしたような感覚だ。
わずかながら、痺れが残った。
どうやら雷魔法には、食らったものを感電させる効果もあるらしい。
(触れるだけでこれか……一撃食らえば、かなり動きが鈍るだろうな)
だが幸い、動けないほどではない。
即座に次の魔法の準備にかかる。
「ウィンドショット!」
後ろから飛んでくるのは、マリーが放った風魔法の弾丸だ。
アルブレヒトは一つ舌打ちをしてから、攻撃を避ける。
だが攻撃を避けるために移動した先には、先ほどからタイミングを窺っていたアマンダが待ち構えている。
「フレアボム!」
「――ッ!? サンダーシールド!」
既に実力が自分よりも上だと理解したアマンダは、捨て身の一撃に出た。
彼女は自分もダメージを食らうほどの至近距離から、フレアボムを発動させる。
流石に避けきれなかったアルブレヒトは防御魔法を使わざるを得ない。
円形をした雷の盾が、アルブレヒトとアマンダの間に突き立った。
その間にロンドは、己が放てる最大の一撃を使う準備を整えた。
雷魔法の攻撃力は、毒魔法より上。
であれば自分も最大最強の一撃を叩き込むしかない。
「ポイズン――ドラゴンッ!」
「――ッ!? サンダーリィンフォース!」
故にロンドは今の自分に使える最強の魔法である、ポイズンドラゴンを発動させる。
紫龍はあらゆるものを巻き込みながら、アルブレヒトへと襲いかかる――。
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