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【コミカライズ】毒殺された世界無双の毒魔法使い  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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鍛錬の日々


 グリニッジ侯爵は相変わらず、不気味なまでの沈黙を保っていた。

 そのためロンドはもっぱら、護衛か鍛錬、戦い方に工夫をするために頭を巡らせることに時間を充てていた。

 ただ、いざという時に守れるよう、あまりマリーから離れるつもりもない。

 故にロンドは空いている時間を見つけては、自分と同じく隙間時間の空いている公爵家騎士団員達に頼み、訓練を行っていた。


 クライノートでもどちらかと言えば郊外にあたる場所に、公爵家の騎士団の練兵場はある。

 魔法の練習をしても周囲に迷惑をかけぬよう防音対策がなされているため、秘密の特訓をするにはもってこいの場所だ。


 休日をもらったロンドは、今日は非番であるアマンダと向かい合っていた。

 そして観戦しにきたマリーと、彼女を護衛している騎士団員の視線を感じながら戦いの準備を整えている。

 今日はロンドが新たに編み出した戦法のお披露目会でもある。


「それでは試合……始めっ!」


 どこか間の抜けた、マリーの甲高い声が試合開始の合図となる。


「はああっっ!」


 アマンダが雄叫びを上げながら、突進してきた。


(当然ながら、距離を詰めに来るよなっ!)


 猛毒、波型、魔力は中量。


「ポイズンウェーブ!」


 毒の波が、ロンドの手元から放射状に飛び出していく。

 魔法を放ったら間髪入れずに後退し、距離を保ったまま次なる魔法を練り始める。


 ロンドが戦う際に気を付けなければいけないのは、とにかく相手に近付かれないようにすることだ。

 白兵戦の心得のないロンドは、接近されても魔法で交戦するしか術がない。


 そして鍛えているとはいえ、ロンドの身体能力は近接戦闘に慣れている騎士や暗殺者達と比べると、まだまだ低い。

 気を抜けば、相手の牙はあっという間にこちらに届いてしまう。


 毒魔法で放たれる毒は、基本的に強力な毒性を持つ。

 故に魔法自体の威力が低くとも、当てるだけで一定量のダメージを与えることができる。


「フレアボム!」


 アマンダが近付きながら放つのは、炎の爆弾だ。

 ロンドの毒の鞭の中間のあたりに放たれたそれは、着弾と同時に爆発する。

 彼女は爆風や飛んでくる砂礫、周囲に拡散した毒すら無視して突っ込んでくる。


(ちっ、こんな時でもまったく動じていないなっ!)


 相手が放ってきた刺客に自分が戦う姿を見られた以上、ロンドはある程度自分の対策を練られると考えていた。


 故に戦闘の際に使っていたポイズンボールなどの毒魔法が通用しないものと想定し、戦うよう気を付けている。


 龍毒、形状は沼、魔力を大量に。


「ポイズンスワンプ」


 新たに編み出した魔法であるポイズンスワンプ。

 ロンドの周囲が、自身が踏んでいる足場まで含め毒の沼に包まれる。

 彼が放つ毒魔法は、当然ながら自身にダメージを与えない。


「――っ!?」


 アマンダはその場でたたらを踏んだ。

 毒の沼の視覚的な効果は大きい。

 そしてこの沼に入るだけで、相手を毒に冒すこともできる。


 ロンドは今度はポイズンスワンプを後ろに発動させ、距離を離そうとする。

 だが彼が下がるよりも、アマンダがその場で決断をする方が早かった。


「うおおおおおおおっっ!!」

「おいおい……嘘だろっ!?」


 なんとアマンダは助走をつけてから――思い切りロンドに跳び膝蹴りを放ちにきた。

 自分が毒にかかることも承知の上で、最低限のダメージで済むように思い切ってこちらに跳んできたのだ。


 ジュッと、アマンダが踏みしめた毒の沼で鎧の溶ける音がする。

 けれど彼女はそれすら気にせず、強く地面を踏みしめてメイスを振るった。


「おおおおおおおお!!」

「――ポイズンシールド!」


 アマンダのゼロ距離での一撃を防ぐためロンドが発動させたのは、毒の壁だ。

 だが咄嗟に生み出したために作りが甘かったのか、攻撃の勢いを完全に殺すことはできず、ロンドは横に吹っ飛んでいく。


 彼が着地したのは、既に毒の沼の範囲外だった。

 そこから先は一方的な展開になる。


 とにかく魔法発動のための集中の時間を削ぎながら細かい一撃を重ねてくるアマンダの前に、ロンドは防戦一方だった。

 足の裏にダメージが入ったからか最初と比べれば踏み込みは浅くなってはいたが、それでもアマンダの動きはほとんど鈍っていない。


 勝負を決めきるための大技を放つだけの隙を作ろうとしたところで横っ腹に強烈な一撃をもらう。

 意識が一瞬飛んだロンドは、鼻先にメイスの先端を突き出されたところで、自身の負けを宣言するのだった。


 毒魔法は確かに強いが、近接職と一対一で戦うとどうしても苦戦を強いられる。

 どちらも相手の札を知っているが故に、相変わらず自分の黒星の方が多いことが悔しかった。


「ニュートラライズポイズンに微毒……よし、これで大丈夫です」

「助かる。しかしお前と戦うと毎度のことながら装備がボロボロになるな……」

「申し訳ないです……。それはそれとして、もう一戦やりませんか?」

「ああ、構わん……おい、替えのブーツを持ってこい!」


 回復を終えてから、再び二人は戦い始める。

 マリーにおやつを誘いを受けるまで、二人は完全に自分達だけの世界に入り、戦いを続けたのだった――。



今作『毒魔法使い』のコミカライズの連載がマンガBANGさんにて4/28からスタート致します!


挿絵(By みてみん)


アプリをダウンロードして、ぜひ一度見てみてください!

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