答え
クライノートへと帰ってきたロンドは、重責から解放されたからか泥のように眠った。
肩の荷が下りたおかげで、今までの疲れがドッとやってきたのだろう。
妙に寝苦しく、起きてみたら熱を出していたこともわかった。
熱は微毒を使って治したが、精神的な疲れからかまだ妙に身体が重い。
どうやら自分が思っているよりもずっとプレッシャーを感じていたらしいロンドは、アナスタジア公爵の私室へ呼び出されていた。
「入れ」
「あ、ども」
ドアを開いたのは、中にいるアマンダだった。
ロンドは中に入り、公爵の視線を受けて姿勢を正す。
「改めて礼を言わせてもらおうマリーを助けてくれて……本当にありがとう」
「いえ、自分には自分にできることを……しただけですから」
ロンドはなぜ自分が呼び出されたのか、大体の予測ができていた。
恐らくは自分やマリーがいなくなってからのことを説明されるのだろう。
そんなロンドの予想は当たっていた。
「マリーがいなくなってからは、正直色々と大変だった……ある程度ロンドにも情報共有をしておいた方がいいと思ってな」
「……自分が聞いても問題のない範囲でお願いします」
「ああ、それはもちろんだとも」
公爵が語ったのは、ロンドとマリーが消えてからの王国の情勢についてだった。
「あの時はたしか……そうだな、グリニッジ侯爵を追い詰めるところまでいったというところだったか。私とグリニッジ侯爵の関係はあれ以降も悪化し続けている。正直なところ、今までしてきたことはご破算になったよ。最早向こうの首を引っ込めさせたところで、何も解決はしなくなった。正直なところ、このまま行けば紛争が起こりかねないほどだ」
「そこまでですか……」
娘を襲われたのだから、そうなるのも頷ける話だ。
貴族同士にも色々あるのだろう。詳しい事情に詮索しないと決めているロンドは、そういうものだと納得しながら話を聞いた。
「そこで再度持ち上がってきたのが、マリーとランディの婚約だ」
「――っ!?」
「もちろんマリーが向こうでどうなるかを考えれば、そんなことをさせるつもりはない。」
たしか以前、公爵はマリーの婚姻については消極的なはずだった。
だがどうやらまた何か事情の変化があったらしい。
マリーのこととなると、ロンドもさすがに反応せざるを得ない。
「婚約はこれ以上仲が険悪にならぬようにするための時間稼ぎだ。無論婚約はしたとしても、解消させるつもりだよ。今はとにかく、時間がほしい。今回の一件は……どうにもきな臭い。二人が転移したあの襲撃時の刺客にはおかしな点がいくつもある。ちなみにアマンダをして逃すほどの強者も交じっていた」
「……」
「そもそも誘拐目的なのに自爆特攻をしているのもおかしい。動きがちぐはぐというか、どうにも一枚岩ではない感じがするのだ」
アマンダが悔しそうに顔を歪ませる。
彼女ですら倒せないような者が、あの襲撃部隊の中に混ざっていたというのでも驚きだ。
だが公爵の言葉に納得できる点も多かった。
ロンドの護衛をすり抜けてマリーを狙ったあの黒尽くめ。
たしかに目的が誘拐の後の婚姻なら、マリーを殺そうとするのはおかしい。
あまり知りすぎない方がいいことはわかっているが、やはり気になるところではあった。
「そのせいで一つ、悪い報告がある。恐らくはロンド、君が系統外魔法を使える存在であることが、その刺客にバレた。恐らくはグリニッジ侯爵陣営に早晩情報が回っていることだろう」
「そう、ですか……」
マリーを守ることはできたが、どうやら事態は想像以上に急転しているようだった。
再度持ち上がった、マリーの婚約。
ロンドが系統外魔法の使い手である情報の、外部への漏洩。
よくわからない動きをしているきな臭い動きを続けるグリニッジ侯爵の暗部。
それら全ての情報を聞いたロンドは頭を悩ませ……ゆっくりと口を開く。
彼が出した答えは――。
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